魂を殺された女

早坂 悠

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レイプされたのは私のせい?

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その日の父親からの発言を受けてハルカはどういう風にご飯を食べてどういう風に自室に戻ったのか分からなかった。

気づいたら朝になっていた。いや、寝た記憶はある。足を床につけて自分で歩いた記憶もある。だけどご飯を食べた記憶はあっても味を思い出せない。何を食べたか?美味しかったか?満腹になって満足した気もしない。

 記憶がなくなった訳ではない。意識は明確にそこにあるが何をしてても、何をしてなくても暗い底なし沼に放り込まれたように世界が真っ暗に思えて仕方がなかった。生きていくために必要である睡眠も食欲も、なんだかハルカにとってとても無意味なものに思えてきた。

 父は母から聞いたんだろう。母はきっと病院かどこかで情報を知ったのかもしれない。とにかく2人はハルカが複数の男に拉致され輪姦されたことを知ってた。自分たちの子どもが汚されたことを知っていた。古い言い方をすれば”キズモノ”になってしまったことを知っていた。

 いや、知っている可能性は高いとハルカ自身も思っていた。でもまさか…そのことで…ハルカ自身が責められるとは夢にも思ってなかった。

 ハルカも自分を責めた。どうしてあの時、あの場所に私はいたのだと男たちの目に止まるような淫らな格好をしていたのか?花火大会に行くべきじゃなかったのか?とハルカは、自分自身をこれまでたくさん責めた。

 私が悪いことをしたから罰が当たったのだと思いたかった。何もしてないのにこんなに辛い目に遭うはずがないと思いたかった。しかしーーーーそうではないのだ。

 ハルカは何も悪いことは何一つしていない。そのことが返ってハルカのはらわたをえぐるような痛さをもたらす。世界はとても残酷なのだ。なんの罪のない女性がある日、突然、人生を狂わさせるような残酷な目にあうことがある。

 ハルカは自分自身を責めてしまいそうな時は体中の意識を心に集中させて”私は悪くない”と思うように強く強く思うようにした。

 そうしないと立って歩けないほどメンタルがやられてしまうからだ。何も悪いことしてないのに体の尊厳を奪われるようなことをされ、世界を恨んでしまいそうになる気持ちをなんとか抑え込み、それでもあの人たちが絶対的な悪だということをハルカは意識していないとやってられなかった。

それなのに……一番にハルカの辛さを分かって欲しかった親におまえが悪いと言われるのは本当に辛かった。また世界を恨んで死にたいと思ってしまう。

そんな死への魅力に取り憑かれるようにハルカの日常はあっという間に堕落したものへと変わってしまった。

無気力が全身を凌駕する毎日。夜は怖いから起きられず、朝には必ず起きるようにしてるがそれでもルーティンになっていた散歩も部屋の掃除も母親との夕食作りも出来なくなった部屋にこもるようになってしまった。

父親とはあれからほとんど口を聞いていない。父親からの話を聞くのが怖かった。また私のせいだと言われるのではないか?親の反対を押し切ったから私は男たちの性器を無理矢理、挿入させられる罰をうけることになってしまったんだろうか……

精神科への通院もとても億劫に感じていたが、夜に眠れなくなるのは本当に辛いので、睡眠薬だけでも処方して欲しくて、母親付き添いのもと、かかりつけのメンタルクリニックへと足を運んだ。

主治医との面談でハルカは父親との生活が辛いことを話すと、主治医は母親も診察室にくるようにと看護師に声をかけは母も診察室へ入ることとなった。

「あなたのご主人が娘さんにしてることはセカンドレイプです。家に帰ったらそう説明してください。心配しているようで娘さんの精神をえぐっています。悪いのは犯人であって、娘さんではありません。そこを間違えないように。」

と先生は母親に向かって説明するのだった。
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作者の早坂悠です。よろしくお願いします。すでにこの作品は完結まで書き終わってます。
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