魂を殺された女

早坂 悠

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最大の絶望

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実家に着いてから1週間が経った。

集団レイプされてから久しぶりの長距離の外出だったハルカにとって、肉体的な疲労よりも精神的な疲労が強かった。この1週間はほとんど何もせず、ぐったりとベッドで横になる日々が続いていた。

手荷物を持って母に付き添ってもらっての帰省となったが、ハルカは人混みが苦手になっていた。

特に男性の集団を見るだけで体がすくみ、全身の毛が逆立ったような気さえした。男性への恐怖と恨めしさを克服することなど、ハルカには出来ないと思った。

新幹線車内や電車、駅のホーム、そこら辺の道から男性グループの笑い声が聞こえる度、手足がガクガク震え、動悸がおかしくなった。

母が不意に「大丈夫?」と手をハルカの肩に乗せた時、かなり大きい声で「いやぁぁぁ!触んないで!」と声を荒げてしまった。

人から体を触られるのも怖くて怖くて仕方なかった。人から人へ伝わる肌の温もりというものに嫌悪感を抱くようになった。

男たちが変わる変わるハルカをレイプした時の体と体が触れ合うベタつきや感触、温かさなどをハルカは恐怖とともに鮮明に覚えている。

とりわけ手首と足首、太ももは抵抗させないように男たちから強く握られ、駐車場のような場所に固定されたのでそれらの部位を触られるのはハルカはもう耐えられなかった。

大きな声を出してしまい母の顔には驚きと悲しみが広がってきた。ハルカは「ごご、ごめん。でも…急に体に…触れないで」とガクガクと震えながら伝える。

母は大丈夫よ、急に触ってごめんねというような顔をしてそっとハルカの体の震えが止まるのを待ってくれた。

そんな感じで人混み(特に男性と男性のグループ)が多いとハルカは体調を崩し、その都度、フリーズしてしまうのでなかなか帰省は大変だった。

本当は車で帰省するという方法もあったが、ハルカはもう車には怖くて乗れなかった。

車の中に押し込められた記憶がフラッシュバックして何度も吐いた。あの時はまだレイプされてない最後の自分だった。あの時…あの時に…誰かに助けてもらえてたら…と思わずにはいられない。そう考えても虚しいだけだった。過去は変えられない。これが何より辛かった。いっそのことこの恐怖の記憶が…記憶だけが消滅してくれればっ!と何度も思った。

過去が変えられないのが1番辛いのではなく、この辛い記憶とともにこれからもずっと生きてかなくてはいけないのが、最大の絶望だとハルカは思う。

まだ帰省してから1週間。ハルカはこれから先の未来に絶望しかないのではないかと思うと再び死にたい気持ちになっていくーーーー
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作者の早坂悠です。よろしくお願いします。すでにこの作品は完結まで書き終わってます。
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