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 今日も平内のもとでご飯を食べる。今日のメニューはミートスパゲッティだ。ミートソースが濃厚で美味しい。
 食事をしながら、この前上田とした会話を思い出す。自分は目の前に座るこの人が好き……なのだろうか。
 
 「僕の顔に何かついてる?」
 
 不意に平内が顔を上げた。悠は慌てて視線を逸らす。
 
 「いや、なにも」
 「そういえば中原くん、すっかり仕事に慣れてきたよね。手際が良いって上田が褒めてたよ」
 「別に、まだまだだし」
 「また謙遜して。きみはちゃんとやってると思うよ。さすが、僕が見込んだだけあるね」
 
 そんな風に言われると嬉しい半面、なんと返したらいいのか分からず戸惑ってしまう。
 
 「ありがとう、ございます」
 「なにその嬉しくなさそうなお礼は」
 「だって、褒められるのなんて久しぶりだし」
 
 大人になって褒められることなんて、ほとんどないだろう。
 
 「よく頑張ってるね。えらいよ」
 「……少し面白がってるでしょう」
 
 平内は少し大げさにねぎらいの言葉を並べた。それでも悠は嬉しく感じた。

 
 自分の部屋に戻った悠はシャワーを浴び、ベッドにダイブした。
 平内と一緒の空間にいるとドキドキする。最近ずっとこんな調子だ。やっぱり自分は平内のことを、そういう意味で好きなのかもしれない。
 
 そういう意味でということは、恋人同士でするようなこともしたいのだろうか。
 
 悠はふと自分の下半身に手を伸ばしてみた。
 平内は恋人とする時、どんな風に触れるのだろうか。彼の大きな手が自分のモノを包むのを想像すると、体の中心が熱くなった。
 我慢できずに下着の中に手を入れる。平内はあの色っぽい唇で、どんなキスをするのだろうか。下からいやらしい水音が聞こえてくる。 
 あのタレ目がちな瞳が自分を見つめる。低い声で悠の名前を呼ぶ。悠の欲望を擦る速度が増す。
 
 『気持ちいい?』
 
 平内が耳元でそう囁くと、全身に電気が走るような感覚を覚えた。その瞬間頭が真っ白になり、悠の手は生暖かいもので汚れていた。
 
 やってしまった。平内に触れられることを想像して気持ちよくなってしまった。罪悪感に駆られているその時、玄関のチャイムが鳴った。
 慌ててズボンを履いて玄関のドアを開けると、そこにはたった今おかずにしてしまった本人が立っていた。
 
 「中原くん、うちにスマホ忘れてたよ」
 
 どうやら平内の家に忘れ物をしていたようだ。そんなことすら気づかなかった。
 
 「ああ、ありがとう」
 「なんか顔赤いけど、どうしたの?」
 
 平内が悠の顔を覗き込むので、動揺してしまった。
 
 「ちょっと筋トレしてたんだ」
 
 なおも平内がじっと見つめてくる。彼の視線の先を辿ると、慌ててズボンを履いたせいか、服装が乱れていた。  
 
 「……もしかして、僕邪魔しちゃったかな」
 「ッ……!」
 
 カッと顔に熱が集まった。これでは一人で慰めていたことを肯定したことになってしまう。
 
 「でも良かった。一人でするくらい元気になったみたいで。じゃあまた明日」
 
 そう言うと、平内は帰っていった。
 あまりの羞恥に、悠は少しの間その場で立ち尽くしていた。
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