悪役令嬢の父に転生しました

西楓

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プロローグ

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「お前のような底意地の悪い女とは話したくもない」


 我が家の中庭に王子と令嬢が対峙している。
 側近候補達を従えた王子に責め立てられた、フローレンスは腕を組んで冷たい目を向ける。

「さようでございますか。では、ご不満でしたらお帰りくださいませ。お帰りはあちらです」

 まさか反抗してくるとは思わなかったのだろう。少しも怯むことないフローレンスに、王子は目を開き動揺を隠すことができない。
フローレンスの静かだが激しい怒りに、周りの側近達はただただ驚き成り行きを見守っている。





二人の対立の構図を見て私は前世を思い出した。
前世で私はサラリーマンをしていた。
卒業後すぐに就職した会社はブラックな企業で、私は過重労働を強いられていた。
始発から終電まで働き続ける私の身体は寝不足と体力の限界でフラフラだった。
今考えると、おそらく過労死したのであろう。
家族に迷惑をかけていないとよいのだが…

過労死して生まれ変わったのがこの世界だったのだ。
生前にハマっていた乙女ゲームの世界…
ヒロインが複数の攻略対象と繰り広げる恋愛の世界。可愛らしいヒロインに、イケメンの攻略対象。話を盛り上げるライバルとなる悪役令嬢。
見目麗しく魅力的なキャラクターが揃っている。

ただ、残念なことに私はメインとなる攻略対象ではない。
そう、悪役令嬢フローレンスの父になっていたのだ。
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