10 / 10
その後4
しおりを挟む
公爵は俺の腰に手を回すと、強い力で公爵の方へ引き寄せた。バランスが崩れた俺は、勢いよく公爵の胸に抱きついてしまった。
(公爵の胸の音がダイレクトに聞こえる…)
公爵の心臓はドクドクドクと激しく波打っていた。俺の心臓もバクバクしていて、いつの間にか共鳴して一つになっていた。
(俺が公爵を思うように、公爵も俺のことを思って心臓をドキドキさせてるんだろうか。お揃いみたいで嬉しいような恥ずかしいような…)
想像していると顔が熱くなり、俺は公爵の胸に顔を埋めた。洗いざらしのシャツの匂いがした。
「サミュエル……」
公爵の声が艶かしくて甘い。
(心臓が飛び出そう…またキスしてくれるかな…それとももしかして…)
「だ、旦那様…」
公爵の綺麗な指が俺の顔に向かってきた。
俺は拳をギュッと握って胸の中で身構えをした。
(く、くる…)
「サミュエル…これは何だい?」
(⁉︎)
公爵が俺の目の前に見覚えのない小さな瓶を近づけてきた。瓶の中にはとろりとした透明の液体が入っている。
「?小瓶の中身ですか?ドレッシングですか?それとも飲み物でしょうか?」
質問の意図が理解できず、俺は小首を傾げた。俺の回答が予想外だったのか、公爵は腑に落ちない顔をしている。
(突然どうしたんだろう…色っぽいムードになるかと勘違いした自分が恥ずかしい…)
「…サミュエルは…これをあの宰相の息子から手渡されていたはずだが…本当にこれが何かわからないのかい?」
公爵は少し口をモゴモゴさせて、言うのを躊躇っている。空色の瞳はゆらゆらと揺れている、
(宰相の息子…カーティスから貰った?あっ…)
「カーティスから押し付けられていた物ですね。中身を存じ上げなくてすみません。拾ってくださってありがとうございました」
小さく礼をして、手の平を公爵の前に掲げた。
公爵の瓶を持つ手は固まっていて動かない。
(返してくれるわけではないのか?もしかして、中身を知らない事が問題なのか?という事は、危険物とか?液体爆薬とか毒薬?
いや、カーティスがそんな危ないものを俺に渡してくるはずはないし…公爵に確認してみよう)
「旦那様はご存知なんですか?それは危険なものなんでしょうか?」
公爵の瞳をまっすぐ見つめた。
「いや…っ…その…危険と言うには危険なんだが…
……サミュエルは社交界には参加して間もないから知らないのかな…………………あの男、一体何を思ってこんな物を私のサミュエルに…」
公爵は額に薄っすらと汗を滲ませながら、早口で捲し立てる。最後の方は小声のため、何を言っているのかよく聞き取れない。
(やはり危険物だったのか…しかも、社交界では話題になっているような、かなり危ない物を俺に押し付けてきてたのか…カーティスの奴、一体どんな意図でそんな物を…問いただしてやらねば!)
「分かりました。そんな危険な物はカーティスに熨斗を付けて返してやります」
カーティスへの怒りで無意識に強い口調となっていた。公爵の手から瓶を受け取ろうとしたが、公爵が強く握りしめていて離さない。
「いや…危険と言っても安全のために使う物で…危険ではないと言うか…………………………媚薬入りローションなんだが…」
沈黙の後、公爵の美しく整った口から信じられない単語が発せられた。
俺の目はまさに点になっていたに違いない。
あんぐりと口を開けると言う経験を初めてした。
ゴホンという公爵の咳払いで覚醒した。
(やばい…空耳が聞こえてきた。俺がエロいことを考えていたからか?)
「旦那さま、すみません。よく聞こえなかったのですが……私の聞き間違いでなければ、媚薬入りローションとおっしゃられましたか?
性交の際に用いられるという、ローションのことで間違いないでしょうか」
好きな人の前で、性的な話題を口にすると、そういう行為を想像してしまう。顔が熱くなり真っ赤になっているのが自分でもわかった。
「やはりサミュエルは、これが性交に用いられるという事を知っていたんだね。もしや既に使用済みという事はないだろうね。まさかあの宰相の息子と?
名前で呼び合っていたし、嘸かし親密なんであろう。
私に対しては名前呼びを拒否していたが、彼は特別なんだね」
公爵の声は凍りつくほど冷淡で、時折苛立ちのようなものが感じられた。
(誤解されたくない)
「誤解なさらないでください。そのローションの存在は今初めて知りましたし、見たことも使ったこともありません。
旦那様を名前で呼ぶなど恐れ多くて…
旦那様こそご婦人方に笑顔を振りまいて…俺にはキスも手も出してくれないのに…」
考えるより先に言葉が出ていた。やらかしてしまった事に気づき、身体中の汗が一気に吹き出す。
(まずい…うっかり心の底でずっと思っていた事を漏らしてしまった。俺の嫉妬心に気がづいてなければよいけれど)
公爵の顔を恐る恐る覗き見ると、険のある顔が一転して笑顔になっていた。
「もしかして…嫉妬してくれていたのかい?サミュエル、君はなんで可愛いんだ。
私の心も、私の瞳も、君しか映さないというのに…
心の中を全て見せてあげたいよ。
愛しいサミュエル。大切な君に不安な思いをさせてしまってすまなかった」
(公爵の胸の音がダイレクトに聞こえる…)
公爵の心臓はドクドクドクと激しく波打っていた。俺の心臓もバクバクしていて、いつの間にか共鳴して一つになっていた。
(俺が公爵を思うように、公爵も俺のことを思って心臓をドキドキさせてるんだろうか。お揃いみたいで嬉しいような恥ずかしいような…)
想像していると顔が熱くなり、俺は公爵の胸に顔を埋めた。洗いざらしのシャツの匂いがした。
「サミュエル……」
公爵の声が艶かしくて甘い。
(心臓が飛び出そう…またキスしてくれるかな…それとももしかして…)
「だ、旦那様…」
公爵の綺麗な指が俺の顔に向かってきた。
俺は拳をギュッと握って胸の中で身構えをした。
(く、くる…)
「サミュエル…これは何だい?」
(⁉︎)
公爵が俺の目の前に見覚えのない小さな瓶を近づけてきた。瓶の中にはとろりとした透明の液体が入っている。
「?小瓶の中身ですか?ドレッシングですか?それとも飲み物でしょうか?」
質問の意図が理解できず、俺は小首を傾げた。俺の回答が予想外だったのか、公爵は腑に落ちない顔をしている。
(突然どうしたんだろう…色っぽいムードになるかと勘違いした自分が恥ずかしい…)
「…サミュエルは…これをあの宰相の息子から手渡されていたはずだが…本当にこれが何かわからないのかい?」
公爵は少し口をモゴモゴさせて、言うのを躊躇っている。空色の瞳はゆらゆらと揺れている、
(宰相の息子…カーティスから貰った?あっ…)
「カーティスから押し付けられていた物ですね。中身を存じ上げなくてすみません。拾ってくださってありがとうございました」
小さく礼をして、手の平を公爵の前に掲げた。
公爵の瓶を持つ手は固まっていて動かない。
(返してくれるわけではないのか?もしかして、中身を知らない事が問題なのか?という事は、危険物とか?液体爆薬とか毒薬?
いや、カーティスがそんな危ないものを俺に渡してくるはずはないし…公爵に確認してみよう)
「旦那様はご存知なんですか?それは危険なものなんでしょうか?」
公爵の瞳をまっすぐ見つめた。
「いや…っ…その…危険と言うには危険なんだが…
……サミュエルは社交界には参加して間もないから知らないのかな…………………あの男、一体何を思ってこんな物を私のサミュエルに…」
公爵は額に薄っすらと汗を滲ませながら、早口で捲し立てる。最後の方は小声のため、何を言っているのかよく聞き取れない。
(やはり危険物だったのか…しかも、社交界では話題になっているような、かなり危ない物を俺に押し付けてきてたのか…カーティスの奴、一体どんな意図でそんな物を…問いただしてやらねば!)
「分かりました。そんな危険な物はカーティスに熨斗を付けて返してやります」
カーティスへの怒りで無意識に強い口調となっていた。公爵の手から瓶を受け取ろうとしたが、公爵が強く握りしめていて離さない。
「いや…危険と言っても安全のために使う物で…危険ではないと言うか…………………………媚薬入りローションなんだが…」
沈黙の後、公爵の美しく整った口から信じられない単語が発せられた。
俺の目はまさに点になっていたに違いない。
あんぐりと口を開けると言う経験を初めてした。
ゴホンという公爵の咳払いで覚醒した。
(やばい…空耳が聞こえてきた。俺がエロいことを考えていたからか?)
「旦那さま、すみません。よく聞こえなかったのですが……私の聞き間違いでなければ、媚薬入りローションとおっしゃられましたか?
性交の際に用いられるという、ローションのことで間違いないでしょうか」
好きな人の前で、性的な話題を口にすると、そういう行為を想像してしまう。顔が熱くなり真っ赤になっているのが自分でもわかった。
「やはりサミュエルは、これが性交に用いられるという事を知っていたんだね。もしや既に使用済みという事はないだろうね。まさかあの宰相の息子と?
名前で呼び合っていたし、嘸かし親密なんであろう。
私に対しては名前呼びを拒否していたが、彼は特別なんだね」
公爵の声は凍りつくほど冷淡で、時折苛立ちのようなものが感じられた。
(誤解されたくない)
「誤解なさらないでください。そのローションの存在は今初めて知りましたし、見たことも使ったこともありません。
旦那様を名前で呼ぶなど恐れ多くて…
旦那様こそご婦人方に笑顔を振りまいて…俺にはキスも手も出してくれないのに…」
考えるより先に言葉が出ていた。やらかしてしまった事に気づき、身体中の汗が一気に吹き出す。
(まずい…うっかり心の底でずっと思っていた事を漏らしてしまった。俺の嫉妬心に気がづいてなければよいけれど)
公爵の顔を恐る恐る覗き見ると、険のある顔が一転して笑顔になっていた。
「もしかして…嫉妬してくれていたのかい?サミュエル、君はなんで可愛いんだ。
私の心も、私の瞳も、君しか映さないというのに…
心の中を全て見せてあげたいよ。
愛しいサミュエル。大切な君に不安な思いをさせてしまってすまなかった」
100
お気に入りに追加
1,359
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(13件)
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


クラスのボッチくんな僕が風邪をひいたら急激なモテ期が到来した件について。
とうふ
BL
題名そのままです。
クラスでボッチ陰キャな僕が風邪をひいた。友達もいないから、誰も心配してくれない。静かな部屋で落ち込んでいたが...モテ期の到来!?いつも無視してたクラスの人が、先生が、先輩が、部屋に押しかけてきた!あの、僕風邪なんですけど。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)

シナリオ回避失敗して投獄された悪役令息は隊長様に抱かれました
無味無臭(不定期更新)
BL
悪役令嬢の道連れで従兄弟だった僕まで投獄されることになった。
前世持ちだが結局役に立たなかった。
そもそもシナリオに抗うなど無理なことだったのだ。
そんなことを思いながら収監された牢屋で眠りについた。
目を覚ますと僕は見知らぬ人に抱かれていた。
…あれ?
僕に風俗墜ちシナリオありましたっけ?

【完結済み】準ヒロインに転生したビッチだけど出番終わったから好きにします。
mamaマリナ
BL
【完結済み、番外編投稿予定】
別れ話の途中で転生したこと思い出した。でも、シナリオの最後のシーンだからこれから好きにしていいよね。ビッチの本領発揮します。
異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話
深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?

買われた悪役令息は攻略対象に異常なくらい愛でられてます
瑳来
BL
元は純日本人の俺は不慮な事故にあい死んでしまった。そんな俺の第2の人生は死ぬ前に姉がやっていた乙女ゲームの悪役令息だった。悪役令息の役割を全うしていた俺はついに天罰がくらい捕らえられて人身売買のオークションに出品されていた。
そこで俺を落札したのは俺を破滅へと追い込んだ王家の第1王子でありゲームの攻略対象だった。
そんな落ちぶれた俺と俺を買った何考えてるかわかんない王子との生活がはじまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
面白かったです( ゚Д゚)ゞ公爵良いです‼️
メロメロになる所見たいです。続き楽しみです。待ってます(*´~`*)
最高のお話だ!!!どタイプ!!!
続き楽しみです!!
お体に気をつけてください!!
続き楽しみにしてます。