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エピローグ
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「サミュエル、体調は問題ないだろうか?」
ベッドの横の椅子に座って公爵が覗き込んでくる。
「だ…旦那様っ!」
慌てて立ちあがろうとしたが、公爵が腕で制してきたため上半身だけ起こした。
「アマーリエが君に卑劣な行いをしてすまなかった。従者からこれまでも君を虐げていたと聞いた。
私は保護者でありながら娘の行いを止めることもせず、認識すらしていなかった。
本当に君には辛い思いをさせ申し訳なかった」
公爵が悲痛の表情を浮かべて頭を下げる。
「顔を上げてください、旦那様。旦那様にお伝えしなかった私が悪いのです」
公爵の両手をギュッと握り、公爵の目をじっと見つめる。
「私はあの子のことも、君のことも正面から受け止めていなかった。親としての役割を私が果たしていなかったから、アマーリエは身勝手な子供になってしまったのだろう。
アマーリエは修道院で教育し直すこととした。もう、君を苦しめることはない。
君のことは箝口令を敷いているが、公爵令嬢が媚薬を手に入れたという愚かな行いは貴族社会でも漏れ伝えてきているようだ。修道院で暮らす方があの子にとっても幸せであろう」
「アマーリエお嬢様は今はどうされているのですか?」
「アマーリエは今は監視の自室で大人しくしている。あの子もしでかした事の重大さにようやく気づいてくれた。
私も保護者の責任として、公爵家を退き家督を譲ろうと思う。君が成人するまでは従兄弟に代理を頼む予定だ」
公爵の目は真摯的で力があり、凛とした声には強い意志が感じられた。
(感情的に話す公爵は全然冷淡ではない。
むしろこんなに優しくて温かい人だったんだ。
公爵は決して感情がない人ではなかったんだ。
俺がゲームの知識があったから虐められるのは当然だと考えて、全てを諦めて嫌がらせを受け入れてしまったから…
自分から一歩引いて公爵ともアマーリエとも距離を置いていたから…
もし、俺の方から少しでも歩み寄っていたら、公爵ともアマーリエとも関係は変わっていたのかもしれない)
「旦那様、引退しないでください。公爵の公務は旦那様から教わりたいです。
旦那様に責任があるというのなら、私にもアマーリエお嬢様を止められなかった責任があります。
アマーリエお嬢様の言動が過激になったのは、私にも原因があると思います。
旦那様が責任を取るというのなら、私の側で一緒に公爵家を盛り立ててください」
「サミュエル…」
公爵が熱のこもった瞳で俺を見つめ、甘く囁いてくる。
(えっ?色っぽい…俺…何か間違えた?)
「だっ旦那様…」
激しく鼓動が脈打ち頬が赤くなる。
公爵は目をギュッと瞑ると首を軽く横に振り、深く呼吸をした。
「わっ…私は君に対し不埒な感情を抱いてしまった。
こんなにも歳の離れた君に対し好意を抱いてしまった。
君を愛する私は君を手放す事が出来ず、いずれ君を抱きたいと思ってしまうだろう。
このような私が君の側にいる資格はない。
大丈夫だよ、サミュエル。心配しなくても、従兄弟は私ほどではないが充分に優秀な人間。じっくりと公務を教わると良い」
目を細めて微笑む瞳は少し淋しそうだった。
(愛する?俺を?公爵が?この綺麗な人がっ?俺のことを?)
心臓が口から飛び出そうなくらいにドキドキと鼓動が激しくなる。
「愛というのは私にはまだよくわかりません。でも、私は旦那様の笑顔に胸が熱くなるし、旦那様の感情に触れると心が温かくなります。
私は旦那様と一緒にいたいです」
公爵の首に抱きつくと俺は公爵の頬にキスをした。
ゲーム開始前に悪役令嬢は退場してしまった。
ヒロインと攻略対象との恋愛がどうなるのかはわからない。
ただ、俺はヒロインには攻略される予定はない。
ベッドの横の椅子に座って公爵が覗き込んでくる。
「だ…旦那様っ!」
慌てて立ちあがろうとしたが、公爵が腕で制してきたため上半身だけ起こした。
「アマーリエが君に卑劣な行いをしてすまなかった。従者からこれまでも君を虐げていたと聞いた。
私は保護者でありながら娘の行いを止めることもせず、認識すらしていなかった。
本当に君には辛い思いをさせ申し訳なかった」
公爵が悲痛の表情を浮かべて頭を下げる。
「顔を上げてください、旦那様。旦那様にお伝えしなかった私が悪いのです」
公爵の両手をギュッと握り、公爵の目をじっと見つめる。
「私はあの子のことも、君のことも正面から受け止めていなかった。親としての役割を私が果たしていなかったから、アマーリエは身勝手な子供になってしまったのだろう。
アマーリエは修道院で教育し直すこととした。もう、君を苦しめることはない。
君のことは箝口令を敷いているが、公爵令嬢が媚薬を手に入れたという愚かな行いは貴族社会でも漏れ伝えてきているようだ。修道院で暮らす方があの子にとっても幸せであろう」
「アマーリエお嬢様は今はどうされているのですか?」
「アマーリエは今は監視の自室で大人しくしている。あの子もしでかした事の重大さにようやく気づいてくれた。
私も保護者の責任として、公爵家を退き家督を譲ろうと思う。君が成人するまでは従兄弟に代理を頼む予定だ」
公爵の目は真摯的で力があり、凛とした声には強い意志が感じられた。
(感情的に話す公爵は全然冷淡ではない。
むしろこんなに優しくて温かい人だったんだ。
公爵は決して感情がない人ではなかったんだ。
俺がゲームの知識があったから虐められるのは当然だと考えて、全てを諦めて嫌がらせを受け入れてしまったから…
自分から一歩引いて公爵ともアマーリエとも距離を置いていたから…
もし、俺の方から少しでも歩み寄っていたら、公爵ともアマーリエとも関係は変わっていたのかもしれない)
「旦那様、引退しないでください。公爵の公務は旦那様から教わりたいです。
旦那様に責任があるというのなら、私にもアマーリエお嬢様を止められなかった責任があります。
アマーリエお嬢様の言動が過激になったのは、私にも原因があると思います。
旦那様が責任を取るというのなら、私の側で一緒に公爵家を盛り立ててください」
「サミュエル…」
公爵が熱のこもった瞳で俺を見つめ、甘く囁いてくる。
(えっ?色っぽい…俺…何か間違えた?)
「だっ旦那様…」
激しく鼓動が脈打ち頬が赤くなる。
公爵は目をギュッと瞑ると首を軽く横に振り、深く呼吸をした。
「わっ…私は君に対し不埒な感情を抱いてしまった。
こんなにも歳の離れた君に対し好意を抱いてしまった。
君を愛する私は君を手放す事が出来ず、いずれ君を抱きたいと思ってしまうだろう。
このような私が君の側にいる資格はない。
大丈夫だよ、サミュエル。心配しなくても、従兄弟は私ほどではないが充分に優秀な人間。じっくりと公務を教わると良い」
目を細めて微笑む瞳は少し淋しそうだった。
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私は旦那様と一緒にいたいです」
公爵の首に抱きつくと俺は公爵の頬にキスをした。
ゲーム開始前に悪役令嬢は退場してしまった。
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