異世界転生したらαでした

兄の優しさ

醜態を晒してしまった。
αの俺が抱かれてしまったことが兄にバレた。
敬愛する兄の指を俺の体液で汚してしまった。

俺はやらかした事の大きさに頭が真っ白になり呆然としてしまう。

「あ…兄上…ごめんなさい」

「ルーク、昨日何があった？誰がお前を傷つけたのか教えなさい」

声を震わせ静かに怒りを表す兄。
フィンレイの事は言えない…
だって、元々は僕に責任があるんだから…

俺には優しいが冷酷なところもある当主代理の兄は、あらゆる力を使ってフィンレイを報復…抹殺してしまうかもしれない。

男性だとは言え、一度は好きになった相手ーフィンレイの苦しむ姿を見たいとは思わなかった。
理知的な姿、華奢な身体、緩やかウェーブを描く金色の髪、理想を詰め込んだフィンレイの事は嫌いになれなかった。あんなことをされても惹かれる気持ちは残っていた。

「…お、俺が悪いんだ。俺が自分のせいでこんな事に…もうこんなことはしないから…聞かないで欲しい。兄上には知られたくない」
俯いて膝の上で小刻みに震えながら両拳を握る。

「お前は優秀なαだし、ないとは思うけど、虐められ…無理矢理されたわけではないんだな？」
いつのまにか強く強く握っていた俺の拳を手に取ると、兄が優しく開いた。俺の手のひらには赤い爪の跡がいくつもついていた。

「うん。…ご、合意の上のことだから…相手は悪くないんだ。相手のことを責めないで」
優しく手を握られ、兄の顔をじっと見上げる。

「ああ…傷ついた顔をしてるよ、ルーク。そんな辛い表情をするな。お前が合意だというのなら、…その…相手のことは罪には問わないことにしてやろう。
もう、しないというなら、金輪際相手とは会うな。私の側にいればよい」

（ルークは合意というが…それでもはらわたが煮えくりかえるぐらい腹立たしいが…これ以上追及してはルークが私の前から離れてしまうかもしれない…
他の男には…女にもお前を渡しはしない…
私がずっと求めていたの半身はルークだったんだ…
この淫らな身体も綺麗な心も全て私のもの…
まずは嫌なことを記憶から消しさり…ゆっくりと時間をかけて私のものだと刻み込もう）
兄ディランはルークの身体を引き寄せギュッと抱きしめた。

兄に指で目元を拭われ、ルークはいつのまにか涙が流れていたことに気づいた。