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我を忘れた妹と煽る私
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「そうなの。少し食欲がないので朝食は抜きにするわ。料理長には伝えといてくれるかしら」
「わかりました、お嬢様」
前回と同じようにご飯を抜いて、パーティーまでの時間を確保する。
前回は結局、この3時間の間に、証拠となる日記の整理や使用人の証言の取りまとめで終わってしまった。
そして、それは結局アランの手で捨てられてしまった。
証拠は持っていた方が良いのかしら。
そもそも王子は私がシエンナを虐めていると本当に信じているのかしら。
私と婚約破棄したいがために陥れたの?
いや、王子はよくも悪くも純粋な人よ。
私がシエンナを虐めていると信じていたからこそ、事実確認をすると言ったのだわ。
例え色ボケしていたとしても、シエンナの正体さえわかれば目が覚めるはず…
いいえ、淡い期待など持つべきではないは…
私は崖っぷちにいるのよ。
やはり逃げた方がよいわ。
陛下と王妃が戻る明日まで時間を稼がないと…
*
「お嬢様、どちらへ行かれるのですか?」
部屋から抜け出そうとした私にメイドが慌てたように駆け寄ってくる。
みつかった…
「まだ準備まで時間もありますし…気分転換に温室へでも行こうかなと思ってますの」
苦し紛れの言い訳を伝える。
「お嬢様⁉︎あと数時間もございませんよ。お花でしたら、すぐにお持ちしますのでお部屋でお待ちください」
だめかぁ…
まぁ、そうよね。
仮に温室に行けたとしてもずっと付き添っているはずだから、抜け出す時間はないわ…
ケガをしてでも、窓から抜け出そうかしら…
押し込まれるように部屋へ戻ってきた私は、窓から下の庭を覗いてみた。庭にいた使用人が私の存在に気づき、ぺこりと頭を下げた。
窓からもダメね…
仮病を使ったところで、父も義母もシエンナの味方だで、きっと事情を知っているはずだから、首に縄をつけても連れて行くでしょう。
パーティーに欠席という手段は使えないということなのね。
*
「シエンナ、素敵なドレスね」
ホールには着飾ったシエンナがいた。会場で早めに王子と待ち合わせているようだ。
婚約者の私を差し置いて迎えにくるほどの恥知らずではなくてよかったわ…
王子の緑の目の色に合わせた鮮やかなミントグリーンのドレスはレースを多くあしらった可愛らしいデザインでシエンナの華奢な身体にはよく映えていた。
「ふふん、お姉様より私の方がグリーンは似合いますからね」
口の端をあげて意地悪そうな笑みを浮かべている。
自分の方が王子とお似合いだと言いたいのね。
でも、ここで反論しても…
「そうね…私の金色の髪では淡いグリーンは霞んでしまうから…貴女の茶色の髪が羨ましいわ」
シエンナは私の蜂蜜色の金髪を羨んでいる。
平凡な義母の茶髪を受け継いだシエンナが、亡き母の金髪を受け継いだ私のことを、実は妬んでいることを私は知っている。
「そ、、、そうね」
言葉が詰まるということは、この攻撃は聞いているのね。
もう少し突いてみようかしら…
これで物を投げるなり私に当たり散らしてくれたら、私の方が虐められている証拠になるもの。
「王子はこの金色の髪をとても綺麗とおっしゃってくださるのですけど…シエンナの平凡な茶色の髪が羨ましいわ」
自分の髪を触りながら、ちらりとシエンナの髪をみる。
上手く煽れたかしら…
「王子が…へ、平凡な…?」
額に青筋を浮かべている。
もう少しね…
「そうですの。貴族では金色も珍しくもありませんのに、お恥ずかしいわ」
貴女は平民ですもの…
「うるさいわね!あんたなんかどうせ王子に捨てられるくせに!こんな髪なんかなければ良いのよ」
シエンナは叫ぶと、すごい勢いでハサミを取り出して、私の髪を一束掴みばさりと切った。
私とシエンナの間に金色の髪が散らばっている。
激情に駆られた自分の行動に呆然とするシエンナ。
思った以上の卑劣な行いに瞠目する私。
貴族の女性にとって髪の毛は命といっても過言ではない。
理性をなくしていたとはいえ、その命にもかわる髪の毛を切るなんて…
許せないという気持ちと、これで虐めを受けていた証拠が出来たという達成感とが入り混じる。
あまりのことに唖然としている使用人やメイドを置いて私は部屋に戻った。
前回と同じように日記、証言、切られた髪の毛を用意した。
あとは本番だ!
「わかりました、お嬢様」
前回と同じようにご飯を抜いて、パーティーまでの時間を確保する。
前回は結局、この3時間の間に、証拠となる日記の整理や使用人の証言の取りまとめで終わってしまった。
そして、それは結局アランの手で捨てられてしまった。
証拠は持っていた方が良いのかしら。
そもそも王子は私がシエンナを虐めていると本当に信じているのかしら。
私と婚約破棄したいがために陥れたの?
いや、王子はよくも悪くも純粋な人よ。
私がシエンナを虐めていると信じていたからこそ、事実確認をすると言ったのだわ。
例え色ボケしていたとしても、シエンナの正体さえわかれば目が覚めるはず…
いいえ、淡い期待など持つべきではないは…
私は崖っぷちにいるのよ。
やはり逃げた方がよいわ。
陛下と王妃が戻る明日まで時間を稼がないと…
*
「お嬢様、どちらへ行かれるのですか?」
部屋から抜け出そうとした私にメイドが慌てたように駆け寄ってくる。
みつかった…
「まだ準備まで時間もありますし…気分転換に温室へでも行こうかなと思ってますの」
苦し紛れの言い訳を伝える。
「お嬢様⁉︎あと数時間もございませんよ。お花でしたら、すぐにお持ちしますのでお部屋でお待ちください」
だめかぁ…
まぁ、そうよね。
仮に温室に行けたとしてもずっと付き添っているはずだから、抜け出す時間はないわ…
ケガをしてでも、窓から抜け出そうかしら…
押し込まれるように部屋へ戻ってきた私は、窓から下の庭を覗いてみた。庭にいた使用人が私の存在に気づき、ぺこりと頭を下げた。
窓からもダメね…
仮病を使ったところで、父も義母もシエンナの味方だで、きっと事情を知っているはずだから、首に縄をつけても連れて行くでしょう。
パーティーに欠席という手段は使えないということなのね。
*
「シエンナ、素敵なドレスね」
ホールには着飾ったシエンナがいた。会場で早めに王子と待ち合わせているようだ。
婚約者の私を差し置いて迎えにくるほどの恥知らずではなくてよかったわ…
王子の緑の目の色に合わせた鮮やかなミントグリーンのドレスはレースを多くあしらった可愛らしいデザインでシエンナの華奢な身体にはよく映えていた。
「ふふん、お姉様より私の方がグリーンは似合いますからね」
口の端をあげて意地悪そうな笑みを浮かべている。
自分の方が王子とお似合いだと言いたいのね。
でも、ここで反論しても…
「そうね…私の金色の髪では淡いグリーンは霞んでしまうから…貴女の茶色の髪が羨ましいわ」
シエンナは私の蜂蜜色の金髪を羨んでいる。
平凡な義母の茶髪を受け継いだシエンナが、亡き母の金髪を受け継いだ私のことを、実は妬んでいることを私は知っている。
「そ、、、そうね」
言葉が詰まるということは、この攻撃は聞いているのね。
もう少し突いてみようかしら…
これで物を投げるなり私に当たり散らしてくれたら、私の方が虐められている証拠になるもの。
「王子はこの金色の髪をとても綺麗とおっしゃってくださるのですけど…シエンナの平凡な茶色の髪が羨ましいわ」
自分の髪を触りながら、ちらりとシエンナの髪をみる。
上手く煽れたかしら…
「王子が…へ、平凡な…?」
額に青筋を浮かべている。
もう少しね…
「そうですの。貴族では金色も珍しくもありませんのに、お恥ずかしいわ」
貴女は平民ですもの…
「うるさいわね!あんたなんかどうせ王子に捨てられるくせに!こんな髪なんかなければ良いのよ」
シエンナは叫ぶと、すごい勢いでハサミを取り出して、私の髪を一束掴みばさりと切った。
私とシエンナの間に金色の髪が散らばっている。
激情に駆られた自分の行動に呆然とするシエンナ。
思った以上の卑劣な行いに瞠目する私。
貴族の女性にとって髪の毛は命といっても過言ではない。
理性をなくしていたとはいえ、その命にもかわる髪の毛を切るなんて…
許せないという気持ちと、これで虐めを受けていた証拠が出来たという達成感とが入り混じる。
あまりのことに唖然としている使用人やメイドを置いて私は部屋に戻った。
前回と同じように日記、証言、切られた髪の毛を用意した。
あとは本番だ!
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