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2人目の攻略対象
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なぜ俺はこんなところにいるのだろう。
特別サロンで紅茶を飲んでいる。
王子の従者が入れた紅茶は厳選された茶葉を贅沢に利用した最高級のものなのだろう、熟れた果実のような甘い香りがほのかに鼻腔をくすぐる。
だが、エリオット王子とジェイデンを前にしている俺には緊張のあまり味がわからない。
こんな高級な紅茶を飲む機会なんて一生に一度だろうになんてもったいないんだ、俺…
「今日は来てくれてありがとう。そんなに緊張しないで、肩の力を抜いてくれたまえ。
今日は友達のジェイデンが懇意にしているというイーサンと話をしようと思ってね…是非、私のことも友人のように気軽に接してほしい」
友人は流石に恐れ多いです。そもそもジェイデンとも懇意ではないし友人でもない。
ただのサポートキャラの俺が、ストーリー関係なく攻略対象と接することはない。
きっと俺の顔は緊張のあまり血の気が引いて真っ青になっていたであろう。
「エリオット殿下、イーサン殿に無理強いをしないでくださいね。イーサン殿が困った顔をしているじゃないですか」
ジェイデンが私の方を向くと、「今日は強引に誘うような真似をしてすまない。顔色が悪いが大丈夫か?」と眉を顰めて心配そうに俺の頬に手を当ててきた。
「エリオット殿下、お誘いいただきありがとうございます。流石に、友人は恐れ多いですが、クラスメイトとしてよろしくお願いします。
ジェイデン様ご心配ありがとうございます。
エリオット殿下やジェイデン様のような高貴な方と個人的にお話する機会もありませんので少し緊張しておりました。
それにしてもお2人はとても仲がよろしいのですね」
王子と側近てもっと距離があると思っていたけど、結構近いんだな。
気の置けない親密な雰囲気の2人を見て知らず知らずににっこりと微笑んでいた。
「ところで、実技の授業では、ジェイデンとメアリー嬢と組んでいたようだが…メアリー嬢とは親密にされているのかな?どのようなご令嬢なのか分かる範囲で教えてほしい」
あぁ、よかった。
ヒロインの情報を所望なのですね。お応えするサポートキャラの役目ですから…と頭の中を確認するが何故かピコーんとは出てこない。
「親しくはしておりませんので詳しくはわかりませんが、メアリー=ラジヴィン男爵令嬢は、たしか、魔力量は平均より少し多く、去年編入して魔法を始められたばかりだと言うのに著しい成長で、難しいといわれる攻撃魔法は特に優秀だと伺っています。
それに、可愛らしい容貌をされていて、いつも笑顔を絶やさない朗らかで明るい方ですね」
いつものようにピコーんという正解の会話が出てこないので、サポートキャラとしてヒロインの良さをこれでもかと誇張してみる。
あれ?
何か間違えたのだろうか…
「エ・タ・ン・…」
それまでの穏やかな表情が嘘かのように、ジェイデンのこめかみには薄らと血管が浮き出ており、眉間は皺が寄ってひどく不愉快そうな顔をしている。
エタン?俺の愛称?親しい友達のいない俺のことをエタンと呼ぶのは家族ぐらいだ。
前世では渾名か侮蔑かわからないメガネと呼ばれていたが、今はそう呼ぶものすらいない。
聞き間違いだろう。
あの表情は…メアリーのことをよく知る俺への嫉妬、それとも好きな女の事を知りすぎる俺への怒りだろうか。
「あっ、あの、私は特にメアリー嬢のことは何とも思っておりませんのでご安心ください。
お2人のような端正な顔立ちで学業優秀な方ならともかく、才覚あふれる彼女に凡庸な私のような者は相応しくありません」
頬をピクピクさせ、唇を歪めているジェイデンは、手の平をギュッと握りしめており、その拳はプルプルと震えている。
「くくっ…ジェイデンそう焦るな。まぁ、イーサンがメアリー嬢に籠絡されているわけでなくてよかったよ。
実はメアリー嬢が婚約者がいる子息に思わせぶりな態度をとってたらし込んでいるという苦情が複数あがってきている。
私やジェイデンにも無闇矢鱈に近づいてきて不審な言動を繰り返していたのでハニートラップではないかと用心、バックを探っているところだ。
イーサンも彼女には警戒した方がよかろう」
メアリーーっ‼︎王子にめちゃめちゃ不審がられてるぞ!
ハーレムルートを狙っていたのか⁉︎
確かにクラスでモブ男子に囲まれているところは見たけど、てっきりヒロインが愛らしく可愛いからと思っていたら、自分からたらし込んでたんかい‼︎
王子とジェイデンの反応がイマイチだから、範囲を広げたのか?
もしかして、可愛い女の子に転生してモテモテ生活を満喫しているのだろうか、モブ男子にチヤホヤされて嬉しそうにしてたわ。
そういう意味ではモブの中でも顔も立場もイマイチの俺にヒロインが近づく事はない。彼女が俺に近づくのはサポートを求める時だけである。
流石に説明出来るわけがないで、「わかりました」と、メガネをくいと持ち上げると、神妙な顔を無理矢理作り頷いてみせた。
特別サロンで紅茶を飲んでいる。
王子の従者が入れた紅茶は厳選された茶葉を贅沢に利用した最高級のものなのだろう、熟れた果実のような甘い香りがほのかに鼻腔をくすぐる。
だが、エリオット王子とジェイデンを前にしている俺には緊張のあまり味がわからない。
こんな高級な紅茶を飲む機会なんて一生に一度だろうになんてもったいないんだ、俺…
「今日は来てくれてありがとう。そんなに緊張しないで、肩の力を抜いてくれたまえ。
今日は友達のジェイデンが懇意にしているというイーサンと話をしようと思ってね…是非、私のことも友人のように気軽に接してほしい」
友人は流石に恐れ多いです。そもそもジェイデンとも懇意ではないし友人でもない。
ただのサポートキャラの俺が、ストーリー関係なく攻略対象と接することはない。
きっと俺の顔は緊張のあまり血の気が引いて真っ青になっていたであろう。
「エリオット殿下、イーサン殿に無理強いをしないでくださいね。イーサン殿が困った顔をしているじゃないですか」
ジェイデンが私の方を向くと、「今日は強引に誘うような真似をしてすまない。顔色が悪いが大丈夫か?」と眉を顰めて心配そうに俺の頬に手を当ててきた。
「エリオット殿下、お誘いいただきありがとうございます。流石に、友人は恐れ多いですが、クラスメイトとしてよろしくお願いします。
ジェイデン様ご心配ありがとうございます。
エリオット殿下やジェイデン様のような高貴な方と個人的にお話する機会もありませんので少し緊張しておりました。
それにしてもお2人はとても仲がよろしいのですね」
王子と側近てもっと距離があると思っていたけど、結構近いんだな。
気の置けない親密な雰囲気の2人を見て知らず知らずににっこりと微笑んでいた。
「ところで、実技の授業では、ジェイデンとメアリー嬢と組んでいたようだが…メアリー嬢とは親密にされているのかな?どのようなご令嬢なのか分かる範囲で教えてほしい」
あぁ、よかった。
ヒロインの情報を所望なのですね。お応えするサポートキャラの役目ですから…と頭の中を確認するが何故かピコーんとは出てこない。
「親しくはしておりませんので詳しくはわかりませんが、メアリー=ラジヴィン男爵令嬢は、たしか、魔力量は平均より少し多く、去年編入して魔法を始められたばかりだと言うのに著しい成長で、難しいといわれる攻撃魔法は特に優秀だと伺っています。
それに、可愛らしい容貌をされていて、いつも笑顔を絶やさない朗らかで明るい方ですね」
いつものようにピコーんという正解の会話が出てこないので、サポートキャラとしてヒロインの良さをこれでもかと誇張してみる。
あれ?
何か間違えたのだろうか…
「エ・タ・ン・…」
それまでの穏やかな表情が嘘かのように、ジェイデンのこめかみには薄らと血管が浮き出ており、眉間は皺が寄ってひどく不愉快そうな顔をしている。
エタン?俺の愛称?親しい友達のいない俺のことをエタンと呼ぶのは家族ぐらいだ。
前世では渾名か侮蔑かわからないメガネと呼ばれていたが、今はそう呼ぶものすらいない。
聞き間違いだろう。
あの表情は…メアリーのことをよく知る俺への嫉妬、それとも好きな女の事を知りすぎる俺への怒りだろうか。
「あっ、あの、私は特にメアリー嬢のことは何とも思っておりませんのでご安心ください。
お2人のような端正な顔立ちで学業優秀な方ならともかく、才覚あふれる彼女に凡庸な私のような者は相応しくありません」
頬をピクピクさせ、唇を歪めているジェイデンは、手の平をギュッと握りしめており、その拳はプルプルと震えている。
「くくっ…ジェイデンそう焦るな。まぁ、イーサンがメアリー嬢に籠絡されているわけでなくてよかったよ。
実はメアリー嬢が婚約者がいる子息に思わせぶりな態度をとってたらし込んでいるという苦情が複数あがってきている。
私やジェイデンにも無闇矢鱈に近づいてきて不審な言動を繰り返していたのでハニートラップではないかと用心、バックを探っているところだ。
イーサンも彼女には警戒した方がよかろう」
メアリーーっ‼︎王子にめちゃめちゃ不審がられてるぞ!
ハーレムルートを狙っていたのか⁉︎
確かにクラスでモブ男子に囲まれているところは見たけど、てっきりヒロインが愛らしく可愛いからと思っていたら、自分からたらし込んでたんかい‼︎
王子とジェイデンの反応がイマイチだから、範囲を広げたのか?
もしかして、可愛い女の子に転生してモテモテ生活を満喫しているのだろうか、モブ男子にチヤホヤされて嬉しそうにしてたわ。
そういう意味ではモブの中でも顔も立場もイマイチの俺にヒロインが近づく事はない。彼女が俺に近づくのはサポートを求める時だけである。
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