乙女ゲームのサポートメガネキャラに転生しました

西楓

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攻略イベント

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魔法と剣の世界、ここでは当然のように実技の授業もある。いわゆるイベントである。
小さな魔物が集まる実習場で、3人ずつのグループで魔法や剣で魔物を倒す実戦授業だ。
もちろんヒロインはその時点で一番好感度の高い攻略対象とサポートキャラの俺とグループを組んで魔物に挑む。

「ジェイデン様、イーサン様よろしくお願いします」
「イーサン殿、メアリー嬢よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
ジェイデンが一番好感度が高かったようだ。
先日の発言からジェイデンの好感度は下がったというより、そもそも上がっていないかと思っていたので少し意外だった。
先日の時点から状況が変わって、メアリー嬢に好意を抱くようになったのかもしれない。
仮に、『メアリー嬢はジェイデン様のことをよく観察されていたので気付かれたのでしょう』という俺の発言が好感度上げに貢献していたのなら、サポートし甲斐があるというものだ。

魔物をメアリーの攻撃魔法、俺の防御魔法、ジェイデンの剣を中心に魔物を退治していくのだが、たしか突然1匹の巨大化して襲いかかってきた魔物を力を合わせてやっつけるというイベントだ。

俺がすることはゲームの筋どおりにヒロインと攻略対象をあるポイント…巨大化する魔物が出現するであろうポイントにつれていくことだ。
巨大化する魔物は目の上に赤い星形の痣があるのが目印だ。
他のクラスメイトが剣を向けるが、素早い魔物に顔に傷をつける事しか出来ない。
しかし赤い星形の痣を傷つけてしまったことで、魔物は咆哮し、巨大化するのだ。

「イーサン様、どの魔物から倒していったら良いと思いますか?」
なぜかキラキラとした瞳でメアリーが聞いてくる。
暴力的なことが苦手なはずのメアリーには不似合いなほど明るい声で、この状況を心から楽しんでいる表情だ。
やはり、メアリーも転生してゲームの知識があるのかな。
まあ、この質問には当然のようにサポートメガネキャラとして頭に浮かぶ答えを告げる。

「右前方に魔物が固まっているから、あそこの魔物から倒していったらよいのではないでしょうか?」
メガネをくいと上げると、念のため探索魔法で魔物の広がり具合を調べる。

「わかった。そちらから向かおう」
ジェイデンの後ろを俺とメアリーが庇われるようにゆっくりと進む。ジェイデンは授業なのに紳士的だな。
これが好感度の証かぁ。

あ、赤い星形の痣。例の魔物だ。
すこし離れたところに、例の魔物に対峙し震える手で剣を構えるクラスメイトの姿が見えた。
俺の視線に気づいたのか、ジェイデンも前方の魔物とクラスメイトに目を向けた。

巨大化する!
つい、あらかじめ巨大化することを知っていても、やはり目の前で膨大する獣は恐ろしく思わず目を瞑ってしまう。

「ジェイデン様‼︎」
メアリーの叫び声で目を開けると、いつの間にか前方に移動したジェイデンが例の魔物に対面し剣を向けていた。

まずい‼︎巨大化する‼︎
サポートキャラとしては攻略対象を死なすわけにはいかない。
ジェイデンに駆け寄って防御魔法を施すのと、ジェイデンが魔物に切りかかるのが同時だった。

魔物はジェイデンの剣で急所を刺され消滅している。
消えていく魔物を見ながら、メアリーが小さく、「どうして?」と呟いているのが聞こえた。

「ジェイデン様、お怪我は?」
「あぁ、大丈夫だ。防御魔法ありがとう。おかげで反動を気にせず力一杯切りつけることが出来た。イーサン殿は怪我はないか?」
「はい」
殿
ジェイデンは表情はわかりにくいが、よく見ると口元軽く緩んでおり薄い笑みが浮かんでいる。

「な、な、な、な、なんでそのセリフをサポキャラに…」
メアリーが目をこれでもかと大きくあけてわなわなとふるえている。
サポキャラ発言…メアリーは転生者確定。
そのセリフって何だっけ⁉︎
ああ、『貴女の魔法のフォローがあったから魔物を倒すことができた。ありがとう』だっけ…

ヒロインのメアリーが攻撃魔法でフォロー、ジェイデンが剣でトドメを刺す。
息のあった戦いぶりでイベントをクリアすると、好感度が上がり、ヒロインであるメアリーは攻略対象のジェイデンからそのセリフを告げられる。

確かに…同じセリフだけど…
そもそも魔物も巨大化してないし…メアリーも共闘していない…
イベントクリアならずってとこなのかな。
どうして巨大化前にジェイデンが動いたのだろう?
何かストーリーが変わってきている?
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