当て馬令息はフラグを回避したい

西楓

文字の大きさ
上 下
56 / 61

カールへの説明

しおりを挟む
カールは王子と対面していた。

カールの容態の安定を確認した後ユランは伯爵邸に帰宅した。すっかり回復したカールも数日後には王宮の一室から伯爵邸に戻る。
その報告を受けて、王子はカールの帰宅前に昏睡していた間の経過説明をすることにした。

(これは当事者のユランではなく、私の口から話すべき事案であろう)

イザベラの企み、メデオの協力、そしてユランが襲われたこと。
イザベラやその取り巻きと保護者の処分、メテオの処分が科されたこと。



一連の話を聞いて、カールの肩が激しい怒りに震えた。

「彼女達は具体的にどのような処分となったのですか?」

「イザベラは隣国から違法薬物を密入所持と使用の罪により、退学と2年間の労役処分となった。父親のウエスト男爵には爵位取り上げの処分を科した。
イザベラの取り巻きの3人の子息は、イザベラの確保に協力したことを鑑み、半年間の停学と奉仕活動を科した。
メテオについては事件への積極的な関与はなかったが、イザベラの犯行を知りつつも学園に報告しなかった件、危険な薬の抽出に携わった事を重く見て、3ヶ月の謹慎処分となった」

「メテオとやらは…イザベラの暴行事件に便乗しているにも関わらず積極的ではないと…バカですか⁉︎」

カールはフンと鼻を鳴らすと、王子にかみついた。

「すまない。あくまでもユランへの暴行罪ではなく違法薬物使用の罪のため軽い処分となった」

カールの不敬な態度を王子は咎めることなく、ただ受け入れた。

「わかりました。では、メテオをユランと金輪際接触させぬよう私の方から学園に働きかけましょう」

「それは…」

王子が眉を顰め、小さく俯いた。

「伯爵家から学園に対しての個人的な抗議ですので、特に問題はないでしょう?」

王子の発言を否定と捉えたカールは苛立ちを隠せない。

「いや、学園への抗議を反対しているのではない。メテオとの接触の可否だが…それは難しいだろう……
………………
実はメテオは君の治療に協力し、それにあたり交換条件を提示してきた………」

「交換条件だと⁉︎」

「あぁ…ユランがメテオのものになることを条件として、君の治療法を教えると…」

カールが怒りのあまり卒倒しそうな顔で王子を見ていると、部屋がコンコンとノックされた。
執事に案内されたヒースが入ってきて礼をする。


「ニコラス殿下、お話中のところ申し訳ありません。主よりカール様へ火急の伝言を承っております」

王子が小さく頷くと、ヒースはカールの側へ駆けつけた。耳元で何事か囁くとカールの顔色が変わった。

「ユランが⁉︎」
カールの発言に王子の耳がぴくっと反応する。

「君はユランの従者のヒースだったよね。ユランがどうしたんだい?」

二人の尋常でない様子に、ユランの身にただならぬ事が起きたのだと推測する。話を聞いたカールの顔面は蒼白を通り越して真っ白になっていた。

「発言を失礼いたします。当家のユラン様がウエスト男爵家のイザベラ様に刺されました」

ヒースの発言に王子の頭の中は真っ白になった。自分の耳を疑い、信じられぬ思いでヒースを見る。
ヒースは緊張の中に不安と怒りの入り混じった複雑な表情をしている。

「刺された⁉︎一体どうして…ユランは?」

王子は自分の口元に手を当てわなわなと震える。

「理由はわかりません。アンギュー子爵邸でイザベラに刺されたとしか…意識不明の重体で子爵邸で駆けつけた当家の医師が治療を施しております」

「アンギュー子爵?メテオの……カール、君は先にユランの元へ向かうと良い。私も用意出来次第、魔術師を連れて子爵邸に向かおう」

しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。 そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。 その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。 あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。 あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……? ※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。

悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!

ペトラ
恋愛
   ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。  戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。  前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。  悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。  他サイトに連載中の話の改訂版になります。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

俺が総受けって何かの間違いですよね?

彩ノ華
BL
生まれた時から体が弱く病院生活を送っていた俺。 17歳で死んだ俺だが女神様のおかげで男同志が恋愛をするのが普通だという世界に転生した。 ここで俺は青春と愛情を感じてみたい! ひっそりと平和な日常を送ります。 待って!俺ってモブだよね…?? 女神様が言ってた話では… このゲームってヒロインが総受けにされるんでしょっ!? 俺ヒロインじゃないから!ヒロインあっちだよ!俺モブだから…!! 平和に日常を過ごさせて〜〜〜!!!(泣) 女神様…俺が総受けって何かの間違いですよね? モブ(無自覚ヒロイン)がみんなから総愛されるお話です。

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

悪役令嬢の双子の兄

みるきぃ
BL
『魅惑のプリンセス』というタイトルの乙女ゲームに転生した俺。転生したのはいいけど、悪役令嬢の双子の兄だった。

王道学園のモブ

四季織
BL
王道学園に転生した俺が出会ったのは、寡黙書記の先輩だった。 私立白鳳学園。山の上のこの学園は、政財界、文化界を担う子息達が通う超名門校で、特に、有名なのは生徒会だった。 そう、俺、小坂威(おさかたける)は王道学園BLゲームの世界に転生してしまったんだ。もちろんゲームに登場しない、名前も見た目も平凡なモブとして。

処理中です...