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イザベラ視点 2
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(イザベラ視点)
学校の入学式で壇上に立つニコラス王子の姿を目にした時、えもいわれぬ喜びで笑いが込み上げてきた。
(このポプリを手にした私は最強よ。そこで澄ました顔をしている王子もすぐ私の手に堕ちるのね。
これだけ女生徒から慕われている男を我が物にできるなんて最大のステイタスだわ。
この女達は私に憧れ平伏すようになるのね)
ふふふと込み上げる笑いを誤魔化すように、口を押さえ俯く。
(たしか…最初のイベントは…
入学式の後に、教室へ駆けていたイザベラは、カールとぶつかって膝を擦りむくのよね。カールがイザベラをお姫様抱っこをして保健室へ連れて行くのよ。
でも、怪我をするのは痛くて嫌だし、今カールが目の前にいるのに待つなんてまどろっこしい。
保健室へ連れて行ってもらえれば良いんだから、ここで倒れたらいいじゃない。
上手くいったら、王子とカール両方と接触出来るかも…だって。私はヒロインだもの)
「あっ……」
足元に障害がないことを十分に確認して、私は額に手を当てるとふらっと床に倒れた。
ー誰かが倒れたぞ!
ーこの熱気に当てられたのかしら?
ー大丈夫かしら?
身体を揺すられ、何度も声をかけられたが、私は目を瞑り気を失ったフリをし続けた。
「カール、ここはよいから、倒れた女生徒を保健室へ連れて行ってやってくれ」
王子がカールに命じている声がした。
(ふふふ。作戦成功。王子が釣れなかったのは残念だけど、保健室イベントのターゲットはカールだから、それでよしとしましょう)
屈強な身体をしたカールが軽々と私を抱き上げると、足を抱えまるで荷物のようにヒョイと肩に担いだ。
(何なのよ‼︎お姫様抱っこじゃないの?ゲームと違うじゃないの‼︎男としてこの担ぎ方はどうなのよ!壊物のように大切に扱いなさいよ‼︎)
私はカールの背中に顔を埋めたまま、腹立たしさを堪えるように歯をぎりぎりと噛み締めた。
(もうすぐ保健室ね。このカールは紳士的なゲームのカールと違って、ツンデレタイプなんだろう。
きっと保健室に着いたら、ゲームと同じように私の手を握るんだわ。
緊張で胸がドキドキしてきた。
これが、私のハーレム生活の始まりなのね)
カールが肩から私を保健室のベットに置いた。
保険医は外出しているため、ガザゴソと薬を探している。
(気付薬を探してるの?いや、私には必要ないから…
早く私の横に座って手を握りなさいよ)
私が愚鈍なカールにイラッとしていると、トントンとノックの音がした。
「おお、ユラン、顔色がよくないな。大丈夫なのかい?」
カールがドアを開けると、攻略対象のヒースが知らない女を横抱きにして入ってきていた。
カールは私には一言も発しなかった優しい声をその女にかけると、大事なものでも扱うようにお姫様抱っこして手前のベッドに横たえていた。
(何なのよ‼︎私への態度と違いすぎるじゃない!
なんで、そんなモブの女に優しく声をかけてお姫様抱っこするなんてどう言うことよ‼︎
ヒースもこの女に絡んでるし…何なのよ!)
ヒースの姿はゲームで見たより、鍛えられていて頑丈で一回り大きかった。
(ゲームだと華奢なイメージだったけれど、こんなに屈強な男なんだわ。カールもゲームと違うみたいだし、なんか変ね。こんな図々しいモブ女もいるし…
この女もモブのくせに攻略対象と仲良くするなんて…きっと私の真似をして倒れたんだわ。ヒースの人の良さにつけ込むなんて、性格悪い女ね。
どことなく前世の妹に似ていて忌々しい‼︎
まぁ、カールが私の横に戻って手を握るはずだから、今は寝たふりをして大人しく待ってあげるわ)
怒鳴りつけたい気持ちを、拳を握りしめて堪えていると、少しハスキーな声のモブ女の声がした。
「女生徒には僕が先生に付き添いますのでーーーニコラス王子のところへ戻ってください」
(何てこと言うのよ。よく聞こえなかったけど、私のイベントの邪魔をするなんて!せっかく楽しみにしていたシチュが台無しじゃない!)
頭に血が昇った私はそれからの行動を覚えていない。
気がつけば自分の部屋にいた。
学校の入学式で壇上に立つニコラス王子の姿を目にした時、えもいわれぬ喜びで笑いが込み上げてきた。
(このポプリを手にした私は最強よ。そこで澄ました顔をしている王子もすぐ私の手に堕ちるのね。
これだけ女生徒から慕われている男を我が物にできるなんて最大のステイタスだわ。
この女達は私に憧れ平伏すようになるのね)
ふふふと込み上げる笑いを誤魔化すように、口を押さえ俯く。
(たしか…最初のイベントは…
入学式の後に、教室へ駆けていたイザベラは、カールとぶつかって膝を擦りむくのよね。カールがイザベラをお姫様抱っこをして保健室へ連れて行くのよ。
でも、怪我をするのは痛くて嫌だし、今カールが目の前にいるのに待つなんてまどろっこしい。
保健室へ連れて行ってもらえれば良いんだから、ここで倒れたらいいじゃない。
上手くいったら、王子とカール両方と接触出来るかも…だって。私はヒロインだもの)
「あっ……」
足元に障害がないことを十分に確認して、私は額に手を当てるとふらっと床に倒れた。
ー誰かが倒れたぞ!
ーこの熱気に当てられたのかしら?
ー大丈夫かしら?
身体を揺すられ、何度も声をかけられたが、私は目を瞑り気を失ったフリをし続けた。
「カール、ここはよいから、倒れた女生徒を保健室へ連れて行ってやってくれ」
王子がカールに命じている声がした。
(ふふふ。作戦成功。王子が釣れなかったのは残念だけど、保健室イベントのターゲットはカールだから、それでよしとしましょう)
屈強な身体をしたカールが軽々と私を抱き上げると、足を抱えまるで荷物のようにヒョイと肩に担いだ。
(何なのよ‼︎お姫様抱っこじゃないの?ゲームと違うじゃないの‼︎男としてこの担ぎ方はどうなのよ!壊物のように大切に扱いなさいよ‼︎)
私はカールの背中に顔を埋めたまま、腹立たしさを堪えるように歯をぎりぎりと噛み締めた。
(もうすぐ保健室ね。このカールは紳士的なゲームのカールと違って、ツンデレタイプなんだろう。
きっと保健室に着いたら、ゲームと同じように私の手を握るんだわ。
緊張で胸がドキドキしてきた。
これが、私のハーレム生活の始まりなのね)
カールが肩から私を保健室のベットに置いた。
保険医は外出しているため、ガザゴソと薬を探している。
(気付薬を探してるの?いや、私には必要ないから…
早く私の横に座って手を握りなさいよ)
私が愚鈍なカールにイラッとしていると、トントンとノックの音がした。
「おお、ユラン、顔色がよくないな。大丈夫なのかい?」
カールがドアを開けると、攻略対象のヒースが知らない女を横抱きにして入ってきていた。
カールは私には一言も発しなかった優しい声をその女にかけると、大事なものでも扱うようにお姫様抱っこして手前のベッドに横たえていた。
(何なのよ‼︎私への態度と違いすぎるじゃない!
なんで、そんなモブの女に優しく声をかけてお姫様抱っこするなんてどう言うことよ‼︎
ヒースもこの女に絡んでるし…何なのよ!)
ヒースの姿はゲームで見たより、鍛えられていて頑丈で一回り大きかった。
(ゲームだと華奢なイメージだったけれど、こんなに屈強な男なんだわ。カールもゲームと違うみたいだし、なんか変ね。こんな図々しいモブ女もいるし…
この女もモブのくせに攻略対象と仲良くするなんて…きっと私の真似をして倒れたんだわ。ヒースの人の良さにつけ込むなんて、性格悪い女ね。
どことなく前世の妹に似ていて忌々しい‼︎
まぁ、カールが私の横に戻って手を握るはずだから、今は寝たふりをして大人しく待ってあげるわ)
怒鳴りつけたい気持ちを、拳を握りしめて堪えていると、少しハスキーな声のモブ女の声がした。
「女生徒には僕が先生に付き添いますのでーーーニコラス王子のところへ戻ってください」
(何てこと言うのよ。よく聞こえなかったけど、私のイベントの邪魔をするなんて!せっかく楽しみにしていたシチュが台無しじゃない!)
頭に血が昇った私はそれからの行動を覚えていない。
気がつけば自分の部屋にいた。
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