当て馬令息はフラグを回避したい

西楓

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イザベラの強行 2 ※

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「ふふふっ…何よっその目は!!私のことが怖いの?ユランは私のことが好きなはずなのよ。
やっぱりだめね。バグだから自分のことがよくわかっていなのね。素直にさせてあげる。
これを使うしかないようね。これ何かわかる?材料を手に入れるの大変だったのよ。
本当に商人の娘でよかったわ。まぁ、この存在を知っていたから手に入れられたのだけど」

イザベラが液体の入った虹色の瓶を手に持ち、僕の目の前にゆらゆらと掲げる。

「それは…ポーション?」

「ふふふ。そうっ…魔女の雫っていう隣国の秘薬を加工したものよ。ユランが心から素直になれる薬よ。
知ってる?
魔女の雫ってゲームでユランが誤って飲んで私を襲うきっかけになった媚薬なの。
もともとは強烈に性欲を高める薬なんだけど…
これはこのエキスを加えたものなの。この二つを混ぜ合わせるなんて思いもよらなかったわ。
あの人のお陰でこんな画期的な薬をつくることができたのよ。ユランも感謝してね。
本当にあの人には感謝しかないわ。このエキスの抽出にも協力してくれたし…
エキスだけでも好意くらいは抱くようにはなるけれど…
この薬は素晴らしいわっ」

イザベラじゃ目をぎょろっとさせて、液体をゆらゆらと揺らしながら愛おしそうに眺めている。
僕は思わず息を呑んだ。

(魔女の雫って…強姦未遂イベントで使われた媚薬だ‼︎
でも、あれは来年以降の出来事のはず…
どうしてイザベラがそれを持っているんだ?
エキスって何?あの人って?
もしかして王子?兄上?それともヒースがイザベラの手に堕ちてしまったの?
いやだっ!)

「エキスを混ぜ合わせた?あの人?何を言っているの?あんた言っていることがおかしいよ。
イザベラ、僕に何をしようとしているの?異常だよ!やめろっ、触るなっ!」
イザベラが僕の顎に手をかけると、くいっと乱暴に持ち上げた。

「いちいち煩い男ねっ!だから当て馬なのよっ。
これは…魔女の雫とは違って性欲を高めるだけじゃなくて、これを摂取したあとに性交をした人間に激しい恋愛感情を抱くようになる画期的な薬なのよ。
ほら、ちょうどゲームのユランのように私に執着心をもつようになるの。
さぁ、飲みなさい。これを飲んだら、私が気持ち良くしてあげるわ。
これでユランは私のことが好きで好きでたまらなくなるの。
おかしいのは今のユランなのよ。
本来のユランの姿に戻るのよ。バグは直してストーリーを進めましょう。
皆が幸せになるわ」


(落ち着けっ…僕…兄上は勃起しなければ挿入できないから、愛の営み…性交はできないって言っていたはず…
僕は大丈夫大丈夫大丈夫)


にやにやと厭らしい笑みを浮かべながら、手足を拘束されている俺の口を強引にこじ開けようとする。
僕はキッとイザベラを睨みつけ唾を吹きかけた。唾液はイザベラの顔には届かずただ僕の身体に吹き飛んで濡らした。

「ちっ…」

「あら…まだ反抗する体力があるのね!ゲームと違ってひょろひょろの身体をしているくせに!
あなたのために親切にも本当の自分を教えてあげている私に向かってなんて態度なのよ!
ただの当て馬のくせに!当て馬は当て馬らしく仕事をしなさいよっ!
ヒロインの手を煩わせるってどういうことよっ!
言うことを聞かない駄犬には躾が必要ねっ!」

イザベラが忌々しそうに声を張り上げて怒鳴ると、僕の右頬を思い切り殴りつけてきた。

「痛っ!…」

「いった~い。手が痛くなっちゃったわ。本当に忌々しい。誰かユランの口にこの液体流し込んじゃって!」



「イザベラ、俺がやろう」

遠巻きにニヤニヤ笑っていたドゥェインが面白そうにイザベラへ声をかけ近づいてきた。
手から瓶を受け取ると、僕の鼻を指で摘まみ無理やり口へ瓶を押しあててくる。

「んハッ!」

息苦しさに耐え切れず口を開いてしまい鯉のようにパクパクと呼吸を繰り返す。すかさず開いた口に虹色の液体が流し込まれる。ドゥエインがにやりと笑って僕の口を指で摘まむ。
鼻と口を塞がれた口内に液体が溢れかえり、耐え切れなくなった僕はごくんと飲み込んでしまった。

(まずい…飲み込んでしまった…
どうなるんだろ…薬って言ってたよな…
効果でるまでどれくらい時間があるんだろう…
どうしよ…ゲームでどうだったんだろう…覚えていない…
たすけて…)



ドクンっ!!


激しく鼓動が波打ち、身体がびくんと痙攣し仰反る。
な、なに…
熱いっ…苦し…

「あはは。本当に速攻なのね。面白い…熱くなってきた?ジンジンしてきたんじゃない?
気持ちよくしてあげるから感謝しなさい。
こんな可愛い子と経験できるなんてあなたはついてるわ。
バグがなければあなたみたいな当て馬なんて相手にしないのに…
ふふっ…私のことがどんなに好きでも、あなたが挿入するのは私のお尻よ。
私は王妃になるんだから処女じゃないといけないもの。
よかったわ…経験が役立って…」
そろそろ勃ってきたでしょう?と、横にきたイザベラが服の上から僕の股間をギュッと掴む。

「ヒィぃぃっー!」

突然強い力で股間を掴まれ激しい痛みが走る。

「あはは、おかしい。ひぃっーて何なのその声⁉︎獣?
…って何よ、勃ってないじゃない!薬が少ないんじゃないの?」

恐怖のあまり縮こまってしまった僕のペニスを見て、イザベラの顔からニタニタとしたにやけた笑いがすっかり消え去り、代わりにすさまじい怒りが眉のあたりに這う。


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