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惨敗と救護
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2人は明らかに僕をターゲットにしていた。
体格のよい男性二人組は、1人でこっちの2人を相手にするように作戦を立てていたらしい。
魔法を使わない方の男性が、楽しそうに剣で二人をいなして颯爽と躱している。
(赤子の手を捻るみたいに捌いている。同級生でこんなに実力って違うものなの?)
圧倒的な力の差なら、数秒で勝負がつきそうなものなのに、あえて決着をつけないように時間稼ぎをしているようだ。
背の高いもう一人の男性が、にやにやといやらしい笑みを浮かべて、剣を持たない僕を執拗に追いかけ回す。
猫が鼠を痛ぶるように、剣を前からまっすぐに突き刺して、僕がギリギリで躱せるように攻撃を繰り返す。
何度も壁で防御をし、回復呪文をかけると体力を消耗し、足腰がフラフラとしてきた。
男はぐへへと下卑た笑いをしながら、水鉄砲のような水魔法の攻撃をしかけてくる。
体力を消耗し、足の力が抜けてフラフラとした僕は地面に足元を滑らせ蹲った。
少し離れたところで剣のぶつかり合う音と、ハァハァという激しい息遣いが聞こえてくる。二人の足はもつれて今にも転げそうになっている。
(誰も助けてくれない。立ち上がらないと…)
僕のチームの2人は涙を流しながら剣を持ち、真っ青な顔をしてフラフラとして今にも倒れそう。僕は土壁に守られながらも床に座り込んでいる異様な光景だ。
先生は明らかに勝敗が決着しているこの状況に気がついていながらも、対戦を止めようとする気配がまったくない。
(もしかして、この対戦を仕組んでいたのだろうか。
イザベラに好意を抱く誰かが僕を逆恨みしたとか…)
クラスメイトはこの状況を固唾を飲んで見守っている。
男は立ちあがろうとする僕をにやにやと見下ろしながら、執拗に水魔法で攻撃を仕掛けてくる。
僕がなけなしの力を振り絞って立ちあがろうとした時、実演場に凛とした声が響き渡った。
*
「そこまでだ!勝負はついている」
ふわりと頭から上着をかけられた。
突然の感覚に驚いて見上げると、いつの間にか僕をニコラス王子が覗き込んでいた。ニコラス王子は僕をちらりと見ると、頬を赤く染め目を逸らした。
「透けてる。これを着ておけ。目の毒だ」
慌てて周りを見回すと、数人のクラスメイトと目が合う。彼等は僕を見ると顔を紅潮させ、慌てたように視線を逸らしていた。
(男だから裸なんて全然恥ずかしくないのに…
この世界って同性でも裸隠すものなのかな?
恥ずかしがられると、僕も釣られて照れちゃうよ)
周りに釣られて、顔が赤くなるのを感じて思わず俯いてしまう。
体力消耗と怪我の影響か立ち上がれない。
王子は動かない僕の膝をひょいと抱えると、僕を横に抱きかかえて歩き出した。
「でっ⁉︎殿下っ⁉︎歩けますっ」
「いいから…私に任せなさい」
有無を言わさぬ口調で言う。続けて小声で「遅くなってすまなかった。よく頑張ったな」と囁いてきた。
王子の言葉に堪えていた涙が溢れる。
涙ぐむ僕を王子が身体でガードする。
息遣いも聞こえるほど王子の顔が接近してきた。間近で見る優しい王子の笑顔に、口から心臓が飛び出そうなほど胸の鼓動が激しくなった。
体格のよい男性二人組は、1人でこっちの2人を相手にするように作戦を立てていたらしい。
魔法を使わない方の男性が、楽しそうに剣で二人をいなして颯爽と躱している。
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圧倒的な力の差なら、数秒で勝負がつきそうなものなのに、あえて決着をつけないように時間稼ぎをしているようだ。
背の高いもう一人の男性が、にやにやといやらしい笑みを浮かべて、剣を持たない僕を執拗に追いかけ回す。
猫が鼠を痛ぶるように、剣を前からまっすぐに突き刺して、僕がギリギリで躱せるように攻撃を繰り返す。
何度も壁で防御をし、回復呪文をかけると体力を消耗し、足腰がフラフラとしてきた。
男はぐへへと下卑た笑いをしながら、水鉄砲のような水魔法の攻撃をしかけてくる。
体力を消耗し、足の力が抜けてフラフラとした僕は地面に足元を滑らせ蹲った。
少し離れたところで剣のぶつかり合う音と、ハァハァという激しい息遣いが聞こえてくる。二人の足はもつれて今にも転げそうになっている。
(誰も助けてくれない。立ち上がらないと…)
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先生は明らかに勝敗が決着しているこの状況に気がついていながらも、対戦を止めようとする気配がまったくない。
(もしかして、この対戦を仕組んでいたのだろうか。
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僕がなけなしの力を振り絞って立ちあがろうとした時、実演場に凛とした声が響き渡った。
*
「そこまでだ!勝負はついている」
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