当て馬令息はフラグを回避したい

西楓

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ヒロインの暴走

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教室の近くにきたところで、廊下の奥からイザベラがパタパタと音を立てて駆け寄ってくるのが見えた。

(兄上もヒースも警告していたように、彼女の側には近づかないようにしよう。
こんなに走って、教室の奥の別クラスにでも行くのだろうか。それとも階段降りて他の階にでも行くのだろうか。
騎士科へ向かって兄と接触するのだろうか?
それなら僕が止めたほうがよいのだろうか?
いや、僕は大人しく距離を置いておこう)

僕の横を走り抜けようとする彼女から少しでも距離をおこうと、廊下の端に身を寄せた。
視線をイザベラの方へ向けながら、ドアに右手をかけた。
横を通り過ぎると思った瞬間、方向を僕の方へ転換して凄まじい勢いで突っ込んできて、吹き飛ばされた。

けたたましい音が響き渡り、教室の中からクラスメイトが出てきた。




床に打ち付けられた僕は、息もできないほどの激痛に蹲っていた。

壁に寄りかかって大声で泣きじゃくるイザベラのもとへ、取り巻きが集まってくるのがみえる。



「ユラン様が、私に急に触れようとして…私怖いっ」

「イザベラ、あぁこんなに震えて可哀想に」

「イザベラ、もう大丈夫だよ、泣かないで…」

「イザベラが魅力的だからといって、嫌がる女性に触れようとするなんて度し難い。
教師に伝えて然るべき対応をしてもらいましょう」



啜り泣くイザベラを取り巻きが取り囲んで、次々と慰めの言葉を告げる。
状況が見えない他のクラスメイトは、僕たちを遠巻きにみているのがわかる。
イザベラと取り巻き達の声に、僕への険しい視線が増えていく。





隣の席の子や数人が僕のことを心配そうにみて駆け寄ろうとしている。

「ユラン様…大丈夫ですか?」

「ユラン様っ⁉︎」

イザベラやその取り巻きに阻まれ近づくことができない。



「女性に不用意に触れようとするなんて卑劣なやつ、助ける必要などないだろう?」

「そうだよ、自業自得だ」

「そいつを助けたら、お前たちも同罪だぜ」

批判の声が今度は彼らへと向けられる。


(まずい。僕がイザベラを避けられなかったから…
僕が被害者だと主張しないから、僕を助けようとしてくれる彼等にまで批判が…)



「ぼ、ぼくは…痛っ…そんなこっ」

声を絞り出すが言葉にならず、あまりの激痛に意識が遠のいていった。


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