当て馬令息はフラグを回避したい

西楓

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騎士団と王子

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「ユランくん⁉︎」

「…っ…あ、ありがとうございます。大丈夫です」
倒れかけたところをレイスが支えてくれていたらしい。
ユランはすぐに顔をあげ体勢を整え、レイスの手から身体をゆっくりと離した。

「救護室へ連れて行こう」

「いえ、ちょっとした立ちくらみですのでもう平気です。皆様の白熱した打ち合いについ気持ちが入りすぎて興奮してしまいました」

抱き上げて運ぼうとするレイスに断りを入れ、慌てて弁明をする。
細められた瞼の奥の瞳が訝しげに妖しく光ったような気がしたが、それ以上突っ込まれることはなかった。

では…と、日陰のベンチへと連れていかれると、そこには先客がいた。






「ニコラス殿下、お久しぶりですね」

「レイス、あぁ、最近少し公務が立て込んでいてね。今日はたまたま窓から白熱している様子が見えて、休憩がてら久々に寄ってみたんだよ。……君は?」

レイスとニコラス殿下がにこやかに歓談しているが、頭が真っ白になったユランの耳に入ってこなかった。

本当は予定されてなかった兄の訓練参加…
周囲の兄への賛美の声と、僕にだけ聞こえる僕を卑下する声…
あまり来られないニコラス殿下の騎士団への訪問
大好きな兄への僻んだ感情の出現…

(これがゲームの強制力というやつなのだろうか。どんなに足掻いてもヒロインを襲い傷つけるという運命は変えることが出来ないのだろうか…)

「ユランくん?ユランくん?」

レイスから声をかけられ、ユランはハッと覚醒した。

「失礼しました。キャボット伯爵家次男のユラン=キャボットと申します。今日は皆様のご好意により練習風景を見学させていただいております」

「君が騎士団長が溺愛しているというユラン=キャボットだね。
私は第二王子のニコラス=ロレーヌだよ。同い年だし、親睦を深めようではないか…」

(これが噂のユラン…なんて華奢で可憐で…是非仲良くなりたい…)

「勿体ないお言葉、こちらこそよろしくお願いします」

鼻筋が通った端正な王子の顔立ちは遠くからでもオーラがあるが、間近でみると圧倒的な引力があり目を奪われずにはいられない。

(父上や兄上のような若干冷たくも感じるギリシャ彫刻のような顔と違って、眉目秀麗な第二王子はまさにゴージャスな貴公子という風貌だなぁ。
ヒースも目鼻立ちが整っているけど、ヒースは麗しいって感じでまた違うんだよね)







「父上、今日はありがとうございました。父上の剣技は迫力あり圧巻で惹き込まれました」

「ユランに言われるととても嬉しいね」

帰りの馬車で膝に抱えられているユランは、父の首にギュッと抱きついた。父はユランの頭を愛おしそうに何度も撫でてくれた。

「お父さまは何があってもユランの味方だからね、もし何か心配ごとがあるんなら、いつでもお父さまに相談してごらん」
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