当て馬令息はフラグを回避したい

西楓

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鋭いヒース

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ユランの意識がとんでいる間に、カールの手で寝衣を着せられベッドで眠っていた。

「名残惜しいけど、お兄さまは仕事に行かないといけないからね。
ユラン、部屋着に着替えて部屋に戻ろうか」

(私の大きな寝衣に包まれたユランはなんで扇情的なんだ…
ユランは後数年で成人するというのに…こんなに小さくて細くてとても庇護欲をそそられる。
8年前の攻撃的なユランもそれはそれでかわいかったが…
あの頃は弟にこんなことをしたいなんて思いもしなかった。

この白い頸に痕をつけたい、赤い唇を舐め回したい…なんだそのうるうるとした瞳は…
誘っているのか…
昨日の行為のせいか?いつもより官能的で情欲をそそられる。
この姿は他には見せたくないな。服を着替えさせよう。

ヒースは私のユランに不埒な感情を抱いているようだ。私のユランに…
流石のヒースも無理矢理ユランに手を出すことはないだろうが…
ユランの色気はすこしでも抑えた方がよいだろう)



そう言うとカールはユランの額に優しく唇を落とした。
慣れた手つきでユランの身体を抱えて、昨日の服に素早く着替えさせる。

鍛え上げられた肉体でユランを軽々と持ち上げ横抱きにすると、足早にユランの部屋へ向かった。

「あ…兄上、自分で歩けます…」

「こら、初めてで疲れてるだろう。お兄さまに任せなさい。もう少し休んでから朝食にしたらよい」

なぜか甘さを含んだ声で言われ、ユランは頷くしかなかった。
ベッドに横たえられ、ユランはカールの首に手を回すといってらっしゃいの挨拶のキスをした。

カールは、「また、帰ってきたら訓練をしようね」と嬉しそうに微笑んでユランの部屋を後にした。










疲れてはいないと思ったが、緊張によるものか疲労が溜まっていたようだ。
いつの間にかぐっすりと眠っていたらしく、カーテンの隙間から差し込む光でユランは目を覚ました。


「お目覚めですか、ユラン様?」


「…っ…ヒース… 
…お、おはよう、ヒース」

(び…びっくりした。今日は朝から美形のアップばかり見てる気がする…)

「昨日の夜はカール様の部屋で過ごされたのですか?」

ヒースは少し低い声を震わせている。

「…そうだよ。お兄さまのお部屋で寝てたんだよ。ヒースに伝えてなくてごめんね」

ヒースに説明していると兄の甘い声や艶かしい肌が思い出され、ユランの顔は紅潮してした。
ユランは顔の赤みを誤魔化すように静かに俯いた。


「大丈夫ですよ、ユラン様。それよりも…
(クソエロ)カール様のお部屋に行かれたのは、例のご質問の関係ですか?」

(顔が赤い?何があった?いつもより官能的な…
媚態は…胸の高鳴りがとまらない。
よもやあのクソエロカール様が俺のユラン様に何か淫らな行いをしたのではないか…
あ、もしや、ユラン様はクソエロカール様に不能になる方法を尋ねられたとか?いや、まさか…)


「…う、うん…そのことかな…でも、解決したから大丈夫だよ。
ヒースは成人してからって言ってたけれど、僕はどうしてもすぐに知りたくて、焦ってしまって、お兄さまにも聞いたんだ…ごめんね…」

「…………」

(ヒース…返事がないけれど…僕の事を怒っているのかな?…)

長い沈黙が続き、沈黙に耐えきれなくなったユランはヒースの目を下から覗き込んだ。
ヒースはユランの瞳を感情の見えない表情で凝視すると、拳にぎりぎりと音がなるぐらい強く握りしめた。
はーっと大きく深呼吸を何度か繰り返し、ヒースはユランの髪を撫でた。

「昨日はお風呂に入られておられないようなので、これから湯浴みをいたしましょう」

ヒースの身長は172センチと、僕より身長は10センチ以上も高い。
鍛えているからか慎重だけでなく肩幅もヒースの方がずいぶんと大きく見える。

(ヒース…こんなに大きくなったんだなぁ…)

ユランの返事も待たずに、ヒースはユランを軽々と持ち上げ足早に浴室へと向かった。
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