上 下
5 / 14

お茶会とドレス

しおりを挟む
リチャード王子とその弟オズワルド王子の周りにはちょうど同じ年頃のご令嬢が集まっている。
寡黙なリチャード王子も明るく饒舌なオズワルド王子の話に優しそうに相槌を打っている。

婚約後初めてのお茶会にマリーナはアマンダとお揃いの淡い薄ピンクのドレスに身を纏い参加している。

「見て、あれがリチャード殿下の婚約者なんですってよ!何だかチグハグなドレスを着てますこと」
「ええ。あの棒切れのような身体にぶかぶかなドレスって、ドレスだけが浮いて見えますわ」
「きっとお顔に自信がないから、敢えてボヤけた色のドレスに身を纏ってらっしゃるのよ、うふふ」
心ない中傷が突き刺さる。
淡い薄ピンクはアマンダのピンクゴールドの髪を際立たせたが、マリーナのイエローゴールドには合わずぼんやりとした印象を残していた。




「マリーナ、明日のお茶会のドレスはこちらで用意しているから、楽しんでらっしゃい」
義母の言葉は優しいが、片方の口の端を歪めた独特な表情でほくそ笑んだ。

「アマンダとお揃いの衣装なのよ。採寸楽しかったわ。可愛いデザインにしたのよね~」
「そうね、アマンダ。とても似合っていたわ」
義母とアマンダがマリーナを無視して、にこやかに衣装のあれこれを話す。


あぁ、そうだったんだわ。
前日サイズの合わない、似合わないデザインのドレスを渡されて…これも嫌がらせだったのね…
採寸もせずに作られたドレス…色の合わないドレス…細身の私には合わない可愛らしいフリフリのドレス…

この頃から始まっていたのよね…



∞∞∞∞∞

明日がリチャード王子や同年代とのお茶会と聞いて、お茶会での辛い出来事を思い出し目を閉じる。

夢の中とはいえ、また同じ悲しい思いはしたくはないわ。別にリチャード王子のことはどうでもよいけど…義母やマリーナには一矢報いたい。

アマンダは5年間で培ったプロ級と言われた裁縫の腕前をふるうことにした。
まだ、13歳の手はとても小さくて思ったようにいかないところもあったけれど、身丈にあわせ脇出しをし、すらりとした脚にあわせてドレスの裾出しをし、全体としてシャープな印象に変えていった。

あとは髪型よね。
アマンダもだけど艶やかな髪を綺麗にみせるために、髪をおろすかハーフアップにするのが普通だけど、この色合いなドレスと髪が重なると濁った印象になるのよね。


∞∞∞∞∞

「行って参ります、お義母様」
ガーナに髪を結ってもらい、華奢なドレスを身に纏うマリーナを見ると、義母は歯をぎりぎりとさせてとても悔しそうな顔をしていた。
アマンダは驚きの方が勝ったのだろう、私を凝視して唖然としている。



リチャード王子は私を見ると数秒凝視して固まっていたが、ゴホンと咳払いをすると私の手をとりエスコートをしてくれた。

隣に座れってことなのかな?
さすが夢の中ね。願望がでてきてるわ。

「お姉様だけだと心配なので、私も…」と、アマンダが無理矢理テーブルに割り込んできた。

「あの方、どちらの方なのかしら礼儀がなってないわ」
「あぁ、リチャード殿下の婚約者の妹らしいですわ。お姉様は洗練された仕草ですのに妹の方は違ってますのね」
「本当…マリーナ様の装いは素晴らしいわ。あのように髪を結い上げるのも魅力的ですわね」
周りのご令嬢の反応も、現実の時とは違う。



「あら、皆様お姉様のこと話してますよ。ドレスのことかしら。お姉様ったら、私と同じドレスにして私のことを虐めるんですのよ」
「あぁ、よく見たら同じドレスだったんだな。華奢な雰囲気がマリーナ嬢に似合って綺麗だな」
愛想良くオズワルド王子がマリーナを見て微笑むと、アマンダがカップを落としパリンと破片が飛び散った。


マリーナが膝の上に飛んできた破片を掴むと、指に細いキズがつき血が滲んだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。

つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。 彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。 なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか? それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。 恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。 その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。 更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。 婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。 生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。 婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。 後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。 「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。

学院内でいきなり婚約破棄されました

マルローネ
恋愛
王立貴族学院に通っていた伯爵令嬢のメアリは婚約者であり侯爵令息、さらに生徒会長のオルスタに婚約破棄を言い渡されてしまう。しかも学院内のクラスの中で……。 慰謝料も支払わず、さらに共同で事業を行っていたのだがその利益も不当に奪われる結果に。 メアリは婚約破棄はともかく、それ以外のことには納得行かず幼馴染の伯爵令息レヴィンと共に反論することに。 急速に二人の仲も進展していくが……?

「地味でブサイクな女は嫌いだ」と婚約破棄されたので、地味になるためのメイクを取りたいと思います。

水垣するめ
恋愛
ナタリー・フェネルは伯爵家のノーラン・パーカーと婚約していた。 ナタリーは十歳のある頃、ノーランから「男の僕より目立つな」と地味メイクを強制される。 それからナタリーはずっと地味に生きてきた。 全てはノーランの為だった。 しかし、ある日それは突然裏切られた。 ノーランが急に子爵家のサンドラ・ワトソンと婚約すると言い始めた。 理由は、「君のような地味で無口な面白味のない女性は僕に相応しくない」からだ。 ノーランはナタリーのことを馬鹿にし、ナタリーはそれを黙って聞いている。 しかし、ナタリーは心の中では違うことを考えていた。 (婚約破棄ってことは、もう地味メイクはしなくていいってこと!?) そして本来のポテンシャルが発揮できるようになったナタリーは、学園の人気者になっていく……。

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ

音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。 だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。 相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。 どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。

王太子が悪役令嬢ののろけ話ばかりするのでヒロインは困惑した

葉柚
恋愛
とある乙女ゲームの世界に転生してしまった乙女ゲームのヒロイン、アリーチェ。 メインヒーローの王太子を攻略しようとするんだけど………。 なんかこの王太子おかしい。 婚約者である悪役令嬢ののろけ話しかしないんだけど。

婚約破棄の次は爵位剥奪ですか? 構いませんよ、金の力で取り戻しますから

ひじり
恋愛
「エナ、僕は真実の愛を見つけたんだ。その相手はもちろん、きみじゃない。だから僕が何を言いたいのか分かるよね?」  男爵令嬢のエナ・ローリアは、幼い頃にリック・ティーレンスからのプロポーズを受けた。  将来を誓い合った二人は両家公認の仲になったが、ティーレンス家が子爵に陞爵した日を境に、すれ違う日が増えていった。  そして結婚式を前日に控えたある日、エナはリックから婚約を一方的に破棄されてしまう。  リックの新しい相手――カルデ・リスタは伯爵令嬢だ。しかし注目すべきはそこじゃない。カルデは異世界転生者であった。地位や名誉はもちろんのこと、財産や魔力の差においても、男爵令嬢のエナとは格が違う。  エナはリックの気持ちを尊重するつもりだったが、追い打ちをかける出来事がローリア家を襲う。  カルデからリックを横取りしようとした背信行為で、ローリア家は爵位を剥奪されることになったのだ。  事実無根だと訴えるが、王国は聞く耳を持たず。異世界転生者と男爵家の人間では、言葉の重みが違う。貴族の地位を失った父――ロド・ローリアは投獄され、エナ自身は国外追放処分となった。 「悪いわね~、エナ? あんたが持ってたもの、ぜーんぶあたしが貰っちゃった♪」  荷物をまとめて王都を発つ日、リックとカルデが見送りにくる。リックに婚約破棄されたことも、爵位剥奪されたことも、全てはこいつのしわざか、と確信する。  だからエナは宣言することにした。 「婚約破棄の次は爵位剥奪ですか? 構いませんよ、金の力で取り戻しますから」 ※異世界転生者有り、魔法有りの世界観になります。

【完結】君の世界に僕はいない…

春野オカリナ
恋愛
 アウトゥーラは、「永遠の楽園」と呼ばれる修道院で、ある薬を飲んだ。  それを飲むと心の苦しみから解き放たれると言われる秘薬──。  薬の名は……。  『忘却の滴』  一週間後、目覚めたアウトゥーラにはある変化が現れた。  それは、自分を苦しめた人物の存在を全て消し去っていたのだ。  父親、継母、異母妹そして婚約者の存在さえも……。  彼女の目には彼らが映らない。声も聞こえない。存在さえもきれいさっぱりと忘れられていた。

処理中です...