本能寺燃ゆ

hiro75

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第四章「偏愛の城」

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 十月二十三日、羽柴秀吉は播磨へと出陣。

 余程薬が効いたのか、二十八日には、『国人衆から人質を出し、霜月十日頃には平らかになり候………………』という書状が届いた。

「あっぱれと送ってやれ」

 殿は、あまり興味なさそうに祐筆に朱印状を書かせ、自らは鷹狩りの仕度にいそしんでいた。

 此度の鷹狩りは、京で広がっている織田家についての悪いうわさや、陰鬱な雰囲気を一掃するため、宮中をも巻き込んだ大々的な催しである。

「帝に、儂自慢の鷹をお見せする。おぬしらも連れてゆくゆえ、存分に張り切るがよい。太若丸も、存分に着飾れよ」

 と、小姓や馬廻衆だけでなく、御弓衆や御年寄り連中まで仕度に大わらわだった。

 太若丸も、久々に化粧をした。

 白粉をつけ、眉をかき、紅を塗った。

 髪をおろし、首元で結び、頭に花冠を載せた。

 着物は、殿が帝から拝領したもの ―― 殿がいらぬと、太若丸に投げ寄こしたものだ ―― 金糸、銀糸をあしらった見事なものだ。

 他の小姓や馬廻衆の前に出ると、驚きの声があがった。

 殿も、目を丸くしている。

「うむ、おぬし、まことは女子ではあるまい? あれはついておったかの?」

 毎晩見ているくせに………………

「しかし、これほどの女子は京にもおらぬだろうな」

 と、感嘆されていた。
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