本能寺燃ゆ

hiro75

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第四章「偏愛の城」

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「では、大坂は落ちませぬか?」

「落とせぬことも、できぬわけではございませぬ」

「ほう、松永殿は、如何にお考えか?」

「確かに、大坂はまるで山城のように頑強で、なかなか攻めるのが難しい。が、攻め込むのが難しいということは、相手にとっては守るのも難しくなる。如何に頑強な城でも、籠城すれば食いものも、水もつき、自ら崩れ落ちる。大坂の強いところは、その籠城ですら、毛利や雑賀の助けがあるため。これらを打ち破れば、あとは砂上の城の如く崩れ落ちましょう」

「毛利と雑賀か………………、あれらには先の木津浦で煮え湯を飲まされた。やはりあれらを叩かねば、大坂は落ちませぬか?」

「毛利は、いまや村上をも抱え込んだ西国の雄、雑賀も鉄砲衆を抱え持ち、水軍を巧みに操る戦上手、これに大坂の念仏連中が手を合わせれば、向かうところ敵なし………………」

「松永殿ならば、如何になされるか?」

「いやいや、拙者の意見など………………」

「是非拝聴したい」

「否々」「是非是非」のやり取りがあったあと、

「ならば、一緒に」

 と、双方が口を開いた。

「雑賀!」

 ふたりとも、同じである。

 お互い、にやりと笑った。

「やはり、雑賀ですか? して、その根拠は?」

「毛利を相手にするとなれば、西国へと足を伸ばさねばなりますまい。さすれば、膝元の大坂や雑賀が煩くなるでしょう。さらには、毛利には公方様がおられる。毛利が公方様を奉じて戦をするとなれば、西国の大名たちも煩くなるでしょう。ならば先に、雑賀を叩いた方が良い。雑賀は地侍の集まり、いまは惣国を守らんと寄り集まっておりまするが、烏合の衆、あれを取り纏める大将格がおりませぬ。一部の里を懐柔すれば、相手にする敵も少なくて済むかと」

「うむ、流石は松永殿じゃ。現に、雑賀の三つの郷には探りを入れさせておる。近々良い返事がくるのではないかと思っておるが………………」

「ほう、それは目出度い。そうなれば、雑賀攻めの際は、是非拙者もご同行願いつかまつる」

「うむ、その折は是非に」
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