本能寺燃ゆ

hiro75

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第四章「偏愛の城」

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 ほっと、一息ついてから、

「まったく、おぬしらのぼんくらぶりときたら……」

 長秀や秀吉らの顔を見回す。

「分かるか、太若丸? これが〝王たるもの〟と、そうでないものの違いじゃ」

 確かにと、太若丸は頷いた。

「十兵衛であれば、一度儂の話を聞けば、それに沿うような城を造ってくれるぞ。それに引き換え、おぬしらは………………」

 長秀や高重は、苦虫を噛みつぶしたような顔をしている。

 秀吉は、額から汗が吹き出し、恥ずかしそうに俯いている。

「安土の普請は、十兵衛に任せれば良かったのう。あれが早く戻ってくれればよいのじゃが………………」

「惟任殿は、蟄居謹慎では?」

 殿は、高重をぎろりと睨みつける。

 不要な言葉だったと、高重は秀吉の背中に隠れるようにして小さくなった。

 それを無視して殿は、

「太若丸、十兵衛から報せはないか?」

 太若丸は首を振った ―― ただ医師からは、徐々にではあるが回復していると………………

「まだ回復せんか? その医者は大丈夫なのか? 心配じゃなぁ、いっそ坊丸ぼうまるを遣わそう」

 坊丸 ―― 織田七兵衛信澄おだしちべいのぶすみは、信長の甥で、十兵衛の娘婿である。

 太若丸は、すぐさま信澄に使いを出した。

「十兵衛には、早く戻ってきてもらわねば、こんなぼんくらども相手にしておっては、儂も疲れるからな」

 と、最後は笑っていたが、家臣たちはむっとした表情であった。
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