本能寺燃ゆ

hiro75

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第四章「偏愛の城」

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 大坂は、湾内に複数の川が走る水上都市である。

 古より交易の中心地であり、瀬戸内を通って運ばれてきた品々がここで陸揚げされ、ここからさらに川や陸を通って平城京なら平安京きょうへと文物がもたらされた。

 逆に、ここが西国や半島、大陸へ赴くための出発点ともなるため、帝らの行宮かりみやが建てられたほどだ。

 孝徳こうとく天皇の御代には、難波長柄豊碕宮が置かれている。

 本願寺は、その中心部分 ―― 小高い丘の上に築かれている。

 寺を中心に、丘の坂を下るように町屋が築かれたので、小さい坂の町「小坂おざか」 ―― 転じて「大坂」と呼ばれるようになったとか。

 本願寺の本拠地は、もともと京 ―― 山科である。

 天文元(一五三二)年、敵対していた法華宗や細川晴元ほそかわはるもと六角定頼ろっかくさだよりらの襲撃を受け、山科本願寺が焼失、翌年に本拠地を大坂に移す。

 その後も、晴元や三好勢との戦いに明け暮れ、寺は徐々に護りを固め、現宋主顕如の代には、まるで城のように要塞化していた。

 大坂を落とすのは、並大抵ではない。

 海上から物資や人員を運び込むことも可能なので、兵糧攻めを目的に、長期籠城に持ち込むことも難しい。

 まずは、兵糧を運び込む経路を遮断しようと、荒木村重が大坂の北側野田に三つの砦を築き、川筋を遮断、原田直政は大坂の西側木津を攻めるために、南側の天王寺に着陣した。

 長岡藤孝は大坂の東南側守口に、十兵衛は大坂の東側森河内にそれぞれ砦を築き、直政が木津攻めに動いたら、その後詰として佐久間信栄とともに天王寺砦へと入る段取りであった。
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