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第三章「寵愛の帳」
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「さて、あとは、そこに武田をどうやってそこにおびき寄せるか………………」
勝頼は、長篠の周辺に陣を張っている。
そこを主戦場とすれば、こちらの防御陣が無駄になり、逆に武田側が天然の防御に囲まれ、有利になる。
「それならば、我らで」
と、家康が進み出る。
「いまの武田の陣容は如何に?」
「されば………………」
家康が口を開いたところで、
「申し上げます、長篠より伝番が参上いたしました」
数人に抱えられながら転げるように入ってきたのは、長篠城から脱け出してきた鳥居強右衛門である。
息も絶え絶えながら、信長と家康の前に進み出た。
「申し上げます、長篠城、いまだ頑強。我が方は、主ともども士気は旺盛。武田の猛攻、これを寄せ付けず!」
「うむ、強右衛門、よくぞ無事で知らせてくれた。感謝するぞ!」
「ありがたき幸せ」
「それで、武田の現状は如何に?」
強右衛門は、長篠城を囲む武田の状況を伝えたのち、
「ならば、拙者はこれにて!」
「そう急ぐな」
「いえ、織田様、徳川様の助力ありと、我が主に早々に報せたきゆえ」
「ならば、奥平殿に伝えよ。我ら早々に助太刀にゆくゆえ、よくよく持ちこたえよ」
強右衛門は頭を下げ、休む間もなく飛び出していった。
「奥平は、よき家臣を持っておる」
殿も、至極感心していた。
この強右衛門、長篠城間近で武田に捕まってしまう。
武田は強右衛門に、裏切りを誘う。
命を助け、さらに所領を与える代わりに、長篠城に立て籠る味方に向かって、『織田・徳川の援軍はない、諦めて開城せよ』と伝えよという。
強右衛門はこれに応じ、城の前まで連れ出された。
そして、城を見上げて、
『すでに織田、徳川の兵は間近! それまで持ちこたえられたし!』
と叫んだ。
城内からは、歓声があがる。
武田からは怒声が飛ぶ。
武田は、強右衛門をその場で磔にし、槍で突き殺したという。
強右衛門の命と引き換えに、奥平方の士気はあがり、長篠城は何とか持ちこたえることができたのである。
勝頼は、長篠の周辺に陣を張っている。
そこを主戦場とすれば、こちらの防御陣が無駄になり、逆に武田側が天然の防御に囲まれ、有利になる。
「それならば、我らで」
と、家康が進み出る。
「いまの武田の陣容は如何に?」
「されば………………」
家康が口を開いたところで、
「申し上げます、長篠より伝番が参上いたしました」
数人に抱えられながら転げるように入ってきたのは、長篠城から脱け出してきた鳥居強右衛門である。
息も絶え絶えながら、信長と家康の前に進み出た。
「申し上げます、長篠城、いまだ頑強。我が方は、主ともども士気は旺盛。武田の猛攻、これを寄せ付けず!」
「うむ、強右衛門、よくぞ無事で知らせてくれた。感謝するぞ!」
「ありがたき幸せ」
「それで、武田の現状は如何に?」
強右衛門は、長篠城を囲む武田の状況を伝えたのち、
「ならば、拙者はこれにて!」
「そう急ぐな」
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「ならば、奥平殿に伝えよ。我ら早々に助太刀にゆくゆえ、よくよく持ちこたえよ」
強右衛門は頭を下げ、休む間もなく飛び出していった。
「奥平は、よき家臣を持っておる」
殿も、至極感心していた。
この強右衛門、長篠城間近で武田に捕まってしまう。
武田は強右衛門に、裏切りを誘う。
命を助け、さらに所領を与える代わりに、長篠城に立て籠る味方に向かって、『織田・徳川の援軍はない、諦めて開城せよ』と伝えよという。
強右衛門はこれに応じ、城の前まで連れ出された。
そして、城を見上げて、
『すでに織田、徳川の兵は間近! それまで持ちこたえられたし!』
と叫んだ。
城内からは、歓声があがる。
武田からは怒声が飛ぶ。
武田は、強右衛門をその場で磔にし、槍で突き殺したという。
強右衛門の命と引き換えに、奥平方の士気はあがり、長篠城は何とか持ちこたえることができたのである。
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