本能寺燃ゆ

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第三章「寵愛の帳」

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 殿は、次の標的を長島の一向衆と決めた。

 折よく、船の用意も整った。

 前回、船の仕度ができずに、長島を取り囲むことができなかった。

 大湊の会合衆が非協力的であったのだが、詳しく調べさせると、長島の要請で足弱衆(女子ども)が逃げる手助けをしていたようで、殿はこれを酷く叱責し、

『協力せぬのなら、余計な手出しをするな』

 と、これの責任者を処刑した。

 此度は、九鬼氏の船である。

 織田の配下である九鬼嘉隆くきよしたかが安宅船を率いて参戦するという。

 九鬼氏は、もともと北畠氏の配下であったが、信長との戦でその勢力が弱まると独立、そのまま信長に付いた。

 水軍を操る武将としては、毛利水軍とともに特質すべき存在である。

 七月十三日、信長は大軍を率いて出陣 ―― 天下(畿内)の采配を任されていた明智光秀、越前一向一揆に対応していた羽柴秀吉を除く、連枝衆、家臣団総出の戦である ―― その数、七万とも、八万とも………………

 信長は、これを三軍に分け、四方八方から攻め立てる。

 東の市江口からは、信忠を大将とし、織田信包のぶかね(信長の弟)、秀成ひでなり(信長の弟)、長利ながとし(信長の弟)、信成のぶなり(信長の従弟)、信次のぶぐつ(信長の叔父)の連枝衆、そこに斎藤新五さいとうしんご簗田広正やなだひろまさ森長可もりながよし坂井越中守さかいえっちゅうのかみ池田恒興いけだつねおき長谷川与次はせがわよじ山田勝盛やまだかつもり梶原景久かじわらかげひさ和田定利わださだとし中島豊後守なかじまぶんごのかみ関成政せきなりまさ佐藤秀方さとうひでかた市橋利尚いちはしとしひさ塚本小大善つかもとこだいぜん………………

 西の賀鳥口は、佐久間信盛、柴田勝家、稲葉一鉄・貞通さだみち親子、蜂屋頼隆………………

 早尾口からは、信長を総大将として、羽柴秀長はしばひでなが(秀吉の弟)、浅井政澄あさいまさずみ、丹羽長秀、氏家直通、安藤守就、飯沼長継、不破光治・直光親子、丸毛長照・兼利親子、佐々内蔵助成政なりまさ、市橋長利、前田又左衛門利家としいえ中条家忠ちゅうじょういえただ、河尻秀隆、織田信広、飯尾尚清いいおなおきよ………………

 海上を、九鬼嘉隆の安宅船に加え、滝川一益、伊藤実信いとうさねのぶ水野直盛みずのなおもりらの安宅船、島田秀満しまだひでみつ、林秀貞らの囲舟、さらには北畠信雄(信長の次男)・神戸信孝(信長の三男)らも大船を率いて参戦、長島一帯を取り囲んだ。

 七月十五日、海上封鎖が完了すると、信長は総攻撃を下し、敵の立て籠もる城を次々に落としていく。

 四方から攻め寄られた一向門徒は、篠橋・大鳥居・屋長島・中江・長島に立て籠った。

 信長は、これに対して、部隊を再度編成しなおし………………
 

 篠橋方面 ―― 織田信広、織田信成、織田信次、氏家直通、安藤守就、飯沼長継、
浅井政澄、水野信元のぶもと横井雅楽助よこいうたのすけ
………………

 大鳥居方面 ―― 柴田勝家、稲葉一鉄・貞通親子、蜂屋頼隆………………

 長島方面 ―― 市橋長利、不破直光、丹羽長秀………………

 加路戸島方面 ―― 織田信包、林秀貞、島田秀満………………

 大島方面 ―― 北畠信雄、神戸信孝………………

 後詰 ―― 佐久間信盛・信栄のぶひで親子………………
 

 大船や安宅船から、絶え間なく大鉄砲を撃ち込ませる。

 流石の一向門徒もこれには弱りはて、篠橋・大鳥居に立て籠もっていた連中が赦免を願い出た。

 が、殿はこれを許さなかった。
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