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第三章「寵愛の帳」
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殿の機嫌が良い時に、物の怪のことをそれとなく話してみた。
「なんだ、あいつらはそんなことを恐れているのか?」
と、笑っていた。
「物の怪など、この儂が叩き切ってやるわ」
流石殿でございます………………と、お世辞を言った後、されど馬廻りの方の士気にかかわりますので………………と、例の話を伝えた。
この手法は、十兵衛から聞いたと付け加えて。
「ほう、十兵衛はそういうことまで知っておるのか、流石だな」
殿は酷く感心していた。
これでまた、十兵衛の株があがっただろうか?
「まあ、よいわ。朝倉らの首を肴に、濁酒を飲むのも、また一興!」
早速殿は、京に晒されていた朝倉義景、浅井久政・長政親子の首を取り寄せ、腐敗していた肉を削ぎ落し、漆や金泥で彩らせた。
明けて天正二(一五七四)年元日、岐阜に畿内周辺の大名・武将らを集め、祝宴を開いた。
そのあと、馬廻り組だけを集め、例の薄濃にした三人の髑髏を御膳に乗せ、その前で酒宴を開いた。
上も下もなく、大酒を飲み、謡に興じ、女も侍らせ、太若丸も舞いを披露するなどして、大いに騒いだ。
そのお陰か、物の怪への恐怖もなくなり、いつもの精鋭な馬廻り組へと戻ったと、又左衛門も喜んでいた。
「こういった芝居じみたことも、下々を束ねるには必要じゃな」
と、殿も終始機嫌が良かった。
「なんだ、あいつらはそんなことを恐れているのか?」
と、笑っていた。
「物の怪など、この儂が叩き切ってやるわ」
流石殿でございます………………と、お世辞を言った後、されど馬廻りの方の士気にかかわりますので………………と、例の話を伝えた。
この手法は、十兵衛から聞いたと付け加えて。
「ほう、十兵衛はそういうことまで知っておるのか、流石だな」
殿は酷く感心していた。
これでまた、十兵衛の株があがっただろうか?
「まあ、よいわ。朝倉らの首を肴に、濁酒を飲むのも、また一興!」
早速殿は、京に晒されていた朝倉義景、浅井久政・長政親子の首を取り寄せ、腐敗していた肉を削ぎ落し、漆や金泥で彩らせた。
明けて天正二(一五七四)年元日、岐阜に畿内周辺の大名・武将らを集め、祝宴を開いた。
そのあと、馬廻り組だけを集め、例の薄濃にした三人の髑髏を御膳に乗せ、その前で酒宴を開いた。
上も下もなく、大酒を飲み、謡に興じ、女も侍らせ、太若丸も舞いを披露するなどして、大いに騒いだ。
そのお陰か、物の怪への恐怖もなくなり、いつもの精鋭な馬廻り組へと戻ったと、又左衛門も喜んでいた。
「こういった芝居じみたことも、下々を束ねるには必要じゃな」
と、殿も終始機嫌が良かった。
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