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第三章「寵愛の帳」
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翌日、信重の小姓たちの話が、こちらにも伝わってきた。
さぞかし、お愉しみであったのだろうと思っていると、どうやらそうでもないらしい。
勘九郎様は意気地がないと、小姓たちが笑っていたので、まあ、上手くはいかなかったのであろう。
初めてなら、然もありなん。
そんなことを思いながら、殿の寝所を片付けていると、不意に信重がお供も連れず顔を出した。
殿なら弓矢の稽古ですが………………と、驚いていると、知っているとのこと。
では、何用かと?
信重は、しばらく首元をさすったり、あっちこっちと見まわしたりしていたが、覚悟を決めたのか、訥々と話し出した。
「太若丸は、御山の稚児であったのであろう?」
左様で………………
「では………………、そういうことは得手であろう?」
何を言っているのか分からなかったが、ああ、そういうことかと、ようやく気が付いた。
別に得意でありません、そういうことも教わったということで………………
しかし、左馬助の娘玉子もそうだし、他の小姓もそうだし、そんなに御山の稚児が珍しいか?
それとも、この年代の男も女も、そういうことに興味があるのだろうか?
「ならば……」と、信重が頭を下げてきた、「頼む、ワシに教えて下され」
若殿から必死に頭を下げられお願いされたので、何事かと慌てて止めた。
「いや、実は……」
信重は、耳まで真っ赤にして答える。
やはり、昨夜は何もできなかったらしい。
相手も生娘だったようで、お互い横になったのはよいが、何をすればいいのか分からず、夜が明けたらしい。
お付きの者からは色々と話を聞いて、やり方を教わっていたようだが、いざ本番となると、頭が真っ白になって、何もできなったとのこと。
しっかりと、教えてほしいとのことだ。
ならば、もう一度お付きの者に訊かれた方が宜しいのでは………………との問いには、
「いや、一度訊いたことを何度も尋ねるのは、一家の棟梁としては如何であろうか?」
なるほど、若殿は若殿で、己の立場というのを理解なされているのだな。
しかし、吾は………………
「頼む!」
と、何度も懇願されて、それではと口頭で教えた。
信重は、鼻息を荒くして、真剣に聞いている。
だが、口だけでは要領を得ないようだ。
では、紙に書きましょうかと、文机に向かおうとすると、
「いや、身体で教えてほしい!」
と、後ろから抱きついてきた。
何を?
と、慌てていると、襟元に手を差し入れ、胸を弄ってくる。
―― 勘九郎様、何をなさいます?
信重は、
「すまぬ! すまぬ!」
と呟きながら、太若丸の首元に何度も唇を押しつけてくる。
「ワシにも分からぬが……、そなたを見ていると……、なぜか……、こうしたいのじゃ……、あのときも……」
相撲のときも、欲情してしまったらしい。
「あのときから……、ワシは……」
信重は、着物を強引に脱がし、太若丸の身体を堪能するかのように、首筋だけでなく、背中やわき腹に吸い付き、または舌を這わせてくる。
いけませぬ、こんなんところ、殿に見られては………………
「父上など……、父上など……」
こんなところ、殿に見つかったら、信重はお叱り程度で済まされるかもしれないが、太若丸は只では済まないのだが………………
だが信重は、腹を空かせた野良犬のようにしゃぶりついてくる。
そっと触ってみると、驚くほど猛々しくなっている。
殿よりも大きいかもと思いながら、太若丸はゆっくりと弄る。
信重の鼻息がさらに荒くなる。
「太若丸………………」
ここまでしたら、信重のほうも最後までしないと収まらないだろう。
仕方がございませんと、袴の紐を解き、お尻を差しだした。
信重は、白昼に突如と現れた満月のような尻にむしゃぶりつく。
あまりの夢中に少々驚きながらも、勘九郎様、そろそろと若殿の猛った『無明火』を、己の『法性の花』に導いた。
その瞬間、信重は「うっ」と唸ったまま止まってしまった。
どうしたのかと尋ねると、出してしまいそうだと………………恥ずかしそうに言うので、何度でもと……こちらから動いてやった。
結局信重は、太若丸の中で二度果てた。
まだ物足りなそうだったが、これ以上は殿が戻られるのでと、太若丸のほうから遠慮した。
先程のような強引さで、女子を相手にすれば宜しいのです、若殿相手ならば、どんな娘も嫌とはいいますまい………………などと勇気づけて送り出した。
「なるほど、うむ……、これなら今夜あたりはできそうだ」
と、信重は満足して出ていった。
しばらくすると、殿が戻ってきた。
寝所に入るなり、ぐるりと部屋の中を見渡し、
「何事かあったか?」
別段と誤魔化したが、
「そうか」
と、突然抱きつき、犯してきた。
昼間からお戯れが過ぎますと、窘めたが、殿は構わず続ける。
「そなたは儂のものじゃ……、儂のものじゃ……」
と、怒ったように囁きながら、何度も果てた。
さぞかし、お愉しみであったのだろうと思っていると、どうやらそうでもないらしい。
勘九郎様は意気地がないと、小姓たちが笑っていたので、まあ、上手くはいかなかったのであろう。
初めてなら、然もありなん。
そんなことを思いながら、殿の寝所を片付けていると、不意に信重がお供も連れず顔を出した。
殿なら弓矢の稽古ですが………………と、驚いていると、知っているとのこと。
では、何用かと?
信重は、しばらく首元をさすったり、あっちこっちと見まわしたりしていたが、覚悟を決めたのか、訥々と話し出した。
「太若丸は、御山の稚児であったのであろう?」
左様で………………
「では………………、そういうことは得手であろう?」
何を言っているのか分からなかったが、ああ、そういうことかと、ようやく気が付いた。
別に得意でありません、そういうことも教わったということで………………
しかし、左馬助の娘玉子もそうだし、他の小姓もそうだし、そんなに御山の稚児が珍しいか?
それとも、この年代の男も女も、そういうことに興味があるのだろうか?
「ならば……」と、信重が頭を下げてきた、「頼む、ワシに教えて下され」
若殿から必死に頭を下げられお願いされたので、何事かと慌てて止めた。
「いや、実は……」
信重は、耳まで真っ赤にして答える。
やはり、昨夜は何もできなかったらしい。
相手も生娘だったようで、お互い横になったのはよいが、何をすればいいのか分からず、夜が明けたらしい。
お付きの者からは色々と話を聞いて、やり方を教わっていたようだが、いざ本番となると、頭が真っ白になって、何もできなったとのこと。
しっかりと、教えてほしいとのことだ。
ならば、もう一度お付きの者に訊かれた方が宜しいのでは………………との問いには、
「いや、一度訊いたことを何度も尋ねるのは、一家の棟梁としては如何であろうか?」
なるほど、若殿は若殿で、己の立場というのを理解なされているのだな。
しかし、吾は………………
「頼む!」
と、何度も懇願されて、それではと口頭で教えた。
信重は、鼻息を荒くして、真剣に聞いている。
だが、口だけでは要領を得ないようだ。
では、紙に書きましょうかと、文机に向かおうとすると、
「いや、身体で教えてほしい!」
と、後ろから抱きついてきた。
何を?
と、慌てていると、襟元に手を差し入れ、胸を弄ってくる。
―― 勘九郎様、何をなさいます?
信重は、
「すまぬ! すまぬ!」
と呟きながら、太若丸の首元に何度も唇を押しつけてくる。
「ワシにも分からぬが……、そなたを見ていると……、なぜか……、こうしたいのじゃ……、あのときも……」
相撲のときも、欲情してしまったらしい。
「あのときから……、ワシは……」
信重は、着物を強引に脱がし、太若丸の身体を堪能するかのように、首筋だけでなく、背中やわき腹に吸い付き、または舌を這わせてくる。
いけませぬ、こんなんところ、殿に見られては………………
「父上など……、父上など……」
こんなところ、殿に見つかったら、信重はお叱り程度で済まされるかもしれないが、太若丸は只では済まないのだが………………
だが信重は、腹を空かせた野良犬のようにしゃぶりついてくる。
そっと触ってみると、驚くほど猛々しくなっている。
殿よりも大きいかもと思いながら、太若丸はゆっくりと弄る。
信重の鼻息がさらに荒くなる。
「太若丸………………」
ここまでしたら、信重のほうも最後までしないと収まらないだろう。
仕方がございませんと、袴の紐を解き、お尻を差しだした。
信重は、白昼に突如と現れた満月のような尻にむしゃぶりつく。
あまりの夢中に少々驚きながらも、勘九郎様、そろそろと若殿の猛った『無明火』を、己の『法性の花』に導いた。
その瞬間、信重は「うっ」と唸ったまま止まってしまった。
どうしたのかと尋ねると、出してしまいそうだと………………恥ずかしそうに言うので、何度でもと……こちらから動いてやった。
結局信重は、太若丸の中で二度果てた。
まだ物足りなそうだったが、これ以上は殿が戻られるのでと、太若丸のほうから遠慮した。
先程のような強引さで、女子を相手にすれば宜しいのです、若殿相手ならば、どんな娘も嫌とはいいますまい………………などと勇気づけて送り出した。
「なるほど、うむ……、これなら今夜あたりはできそうだ」
と、信重は満足して出ていった。
しばらくすると、殿が戻ってきた。
寝所に入るなり、ぐるりと部屋の中を見渡し、
「何事かあったか?」
別段と誤魔化したが、
「そうか」
と、突然抱きつき、犯してきた。
昼間からお戯れが過ぎますと、窘めたが、殿は構わず続ける。
「そなたは儂のものじゃ……、儂のものじゃ……」
と、怒ったように囁きながら、何度も果てた。
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