本能寺燃ゆ

hiro75

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第三章「寵愛の帳」

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 翌日、玉子は朝から機嫌が悪く、

「太若丸殿、遠乗りに行きますよ」

 と、無理やり馬に乗せられた。

 いつもの場所に着くと、玉子は太若丸を押し倒し、馬乗りになっていつもより激しく腰を振った。

 あれが引き千切れるかと思った。

 何かあったのだろうか?

 酷く怒っている。

 いや、理由は分かっている。

 太若丸が京に行くからであろう。

 だからって、何もこんなに………………我慢できずに果てると、玉子も弓のように背中を仰け反らせ、何度か痙攣したのに、胸元に崩れ落ちた。

 いつも以上に息が荒い。

 満足したかと腰を上げようとすると、玉子は離さない。

 まるで鼈のように吸い付いてくる。

 そのまま何度も捩ると、再び『無明火』が灯ってくる。

 二度も?

 玉子は、太若丸にしがみ付いたまま、背中を突く。

 稚児と僧の間では、後ろからしたいという合図だ ―― 玉子にせがまれ、そういった行為があることも教えたことがある。

 玉子は、太若丸から降りると、背中を向け、真っ白な二つの丘を突き出す ―― 顔や手は焼けているのに、ここだけはまるで雪山である。

 仕方なく、後ろから入れる。

 そうしなければ、玉子が許してはくれないだろう。

 何度も何度も腰を押し付けると、玉子の尻たぶが艶めかしく揺れ、湿った音を立てる。

 少女は、狼の遠吠えのような叫び声を上げる。

 刹那、全身を小刻みに震わせ、果てる。

 しばし待っていると、ぶる、ぶるっと背中を揺さぶる。

 太若丸のあれは、まだ煌々と燃えている。

 玉子は振り向かず、二本の指で太若丸の臍をなぞる。

 前から欲しいようだ。

 少女は、少年に全てを晒すように両足を広げる。

 少年が入り込むと、包み込むように抱く。

 ゆっくり、ゆっくりと出し入れすると、普段の凛とした面持ちが嘘のように、目を背けたくなるほど淫らな面持ちで悦んでいる。

 稚児であれば、相手にそんな淫らな顔を見せてはならない。

 やはり、女は品がない………………と思った瞬間、太若丸は果てた。

 玉子は、まだのようだ。

 腰を浮かせて、求めるように揺さぶる。

 絞られるような締め付けに、不思議とまた燃え上がってしまう。

 なぜ、こうも『無明火』が灯るのか?

 ―― 吾もまだ、修行が足らん………………

 欲望を必死に抑えながら、玉子の腰つきに付き合う。

 玉子は、太若丸の欲望の汁を搾り取ろうと、激しく腰を動かす。

 ああっと気が漏れたような声を発すると、女は漸くに満足したようだ。

 太若丸の胸の中で、荒々しい息をしながら、汗で薄っすらと濡れた褐色の顔に妖艶な笑みを浮かべていた。

 耳元に口を近づけ、何事か囁く。

「いまので、太若丸殿のお子ができたやもしれません」

 冗談かと驚くと、玉子はにんまりと笑い、

「お帰り遊ばしたときには、まん丸とした赤子を抱いておりますよ」

 あれほど、子を産むのは嫌だと言っていたのに………………

 女の誇らしげで、勝ち誇ったような笑みに、頭とともに背中も冷たくなった。

「お早く、お帰り遊ばせ」

 耳朶に吹きつけられた息が、妙にくすぐったくて、寒気がした。
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