173 / 498
第三章「寵愛の帳」
17
しおりを挟む
永禄十一(一五六八)年七月、十兵衛が仲介のもと、信長と義昭は会見し、義昭が将軍になるため、信長が支援するという契りを結んだ。
信長は破竹の勢いで京まで進出し、十月には義昭は征夷大将軍に補任された。
その時、内裏にかなりの金を積んだのも、信長だ。
義昭は、この働きに、『御父』と感謝状を贈ったらしい。
翌十二(一五六九)年、正月明け早々、義昭の定宿であった本国寺(現在は本圀寺)が、巻き返しを狙った三好三人衆に襲われる。
この時、十兵衛たちも奉公衆として防衛したらしい。
「いや~、何せこちらは数十、敵は数千、もう駄目かと思いましたよ」
と、十兵衛は大げさに言ってみせた。
戦は、奉公衆や若狭衆の活躍で、何とか防いだが、これを聞いた信長が、大雪の中、岐阜から二日あまりで救援に駆け付けたらしい。
その迅速な働きに、義昭はまた感動したとか。
それだけでなく、公方様が都に屋敷がないとは問題だと、二条に将軍御所を普請させたとか。
もう、信長様々である。
義昭とすれば、己が将軍として天下を差配するのを、信長は補佐してくれるのだろうという考えがあったのだろう。
信長を、副将軍にと内裏に要請している。
が、当の信長がこれを断った。
さらに、二条の御所ができると、岐阜に引っ込んでしまう。
信長からすれば、将軍になったのだから、あとは自ら天下を差配しなさいよ、こっちは領内のことで手いっぱいで、そこまで相手をしている暇はありませんよ、何かあれば言ってください、その時は駆け付けますから………………その程度だったのだろう。
というよりも、もともと義昭の配下に入るつもりもなかったのかもしれない。
「あれだけ力の差、金の差を見せつけられれば、どちらに天下を差配する力量があろうか、傍で見ていて分かります。殿は、そこを見切られたのでしょう。その点は、拙者と似ております」
十兵衛も、この辺りで将軍義昭に見切りをつけたらしい。
弾正忠の動向を探りますと義昭に断り、そのまま信長についていったらしい。
織田の家内では、「なんだ、こやつは?」となったらしいが、そこは昔好の藤吉郎が口を利いてくれたらしい。
信長も、十兵衛の目聡いところを気に入ったようだ。
「義」よりも、「利」に聡い ―― 十兵衛の言葉に、左馬助はむっとしていた。
信長は破竹の勢いで京まで進出し、十月には義昭は征夷大将軍に補任された。
その時、内裏にかなりの金を積んだのも、信長だ。
義昭は、この働きに、『御父』と感謝状を贈ったらしい。
翌十二(一五六九)年、正月明け早々、義昭の定宿であった本国寺(現在は本圀寺)が、巻き返しを狙った三好三人衆に襲われる。
この時、十兵衛たちも奉公衆として防衛したらしい。
「いや~、何せこちらは数十、敵は数千、もう駄目かと思いましたよ」
と、十兵衛は大げさに言ってみせた。
戦は、奉公衆や若狭衆の活躍で、何とか防いだが、これを聞いた信長が、大雪の中、岐阜から二日あまりで救援に駆け付けたらしい。
その迅速な働きに、義昭はまた感動したとか。
それだけでなく、公方様が都に屋敷がないとは問題だと、二条に将軍御所を普請させたとか。
もう、信長様々である。
義昭とすれば、己が将軍として天下を差配するのを、信長は補佐してくれるのだろうという考えがあったのだろう。
信長を、副将軍にと内裏に要請している。
が、当の信長がこれを断った。
さらに、二条の御所ができると、岐阜に引っ込んでしまう。
信長からすれば、将軍になったのだから、あとは自ら天下を差配しなさいよ、こっちは領内のことで手いっぱいで、そこまで相手をしている暇はありませんよ、何かあれば言ってください、その時は駆け付けますから………………その程度だったのだろう。
というよりも、もともと義昭の配下に入るつもりもなかったのかもしれない。
「あれだけ力の差、金の差を見せつけられれば、どちらに天下を差配する力量があろうか、傍で見ていて分かります。殿は、そこを見切られたのでしょう。その点は、拙者と似ております」
十兵衛も、この辺りで将軍義昭に見切りをつけたらしい。
弾正忠の動向を探りますと義昭に断り、そのまま信長についていったらしい。
織田の家内では、「なんだ、こやつは?」となったらしいが、そこは昔好の藤吉郎が口を利いてくれたらしい。
信長も、十兵衛の目聡いところを気に入ったようだ。
「義」よりも、「利」に聡い ―― 十兵衛の言葉に、左馬助はむっとしていた。
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説



大航海時代 日本語版
藤瀬 慶久
歴史・時代
日本にも大航海時代があった―――
関ケ原合戦に勝利した徳川家康は、香木『伽羅』を求めて朱印船と呼ばれる交易船を東南アジア各地に派遣した
それはあたかも、香辛料を求めてアジア航路を開拓したヨーロッパ諸国の後を追うが如くであった
―――鎖国前夜の1631年
坂本龍馬に先駆けること200年以上前
東の果てから世界の海へと漕ぎ出した、角屋七郎兵衛栄吉の人生を描く海洋冒険ロマン
『小説家になろう』で掲載中の拙稿「近江の轍」のサイドストーリーシリーズです
※この小説は『小説家になろう』『カクヨム』『アルファポリス』で掲載します

【完結】電を逐う如し(いなづまをおうごとし)――磯野丹波守員昌伝
糸冬
歴史・時代
浅井賢政(のちの長政)の初陣となった野良田の合戦で先陣をつとめた磯野員昌。
その後の働きで浅井家きっての猛将としての地位を確固としていく員昌であるが、浅井家が一度は手を携えた織田信長と手切れとなり、前途には様々な困難が立ちはだかることとなる……。
姉川の合戦において、織田軍十三段構えの陣のうち実に十一段までを突破する「十一段崩し」で勇名を馳せた武将の一代記。
1333
干支ピリカ
歴史・時代
鎌倉幕府末期のエンターテイメントです。
(現在の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』から、100年ちょい後の話です)
鎌倉や京都が舞台となります。心躍る激しい合戦や、ぞくぞくするようなオドロオドロしい話を目指そうと思いましたが、結局政治や謀略の話が多くなりました。
主役は足利尊氏の弟、直義です。エキセントリックな兄と、サイケデリックな執事に振り回される、苦労性のイケメンです。
ご興味を持たれた方は是非どうぞ!
滝川家の人びと
卯花月影
歴史・時代
故郷、甲賀で騒動を起こし、国を追われるようにして出奔した
若き日の滝川一益と滝川義太夫、
尾張に流れ着いた二人は織田信長に会い、織田家の一員として
天下布武の一役を担う。二人をとりまく織田家の人々のそれぞれの思惑が
からみ、紆余曲折しながらも一益がたどり着く先はどこなのか。

永き夜の遠の睡りの皆目醒め
七瀬京
歴史・時代
近藤勇の『首』が消えた……。
新撰組の局長として名を馳せた近藤勇は板橋で罪人として処刑されてから、その首を晒された。
しかし、その首が、ある日忽然と消えたのだった……。
近藤の『首』を巡り、過去と栄光と男たちの愛憎が交錯する。
首はどこにあるのか。
そして激動の時代、男たちはどこへ向かうのか……。
※男性同士の恋愛表現がありますので苦手な方はご注意下さい

本能のままに
揚羽
歴史・時代
1582年本能寺にて織田信長は明智光秀の謀反により亡くなる…はずだった
もし信長が生きていたらどうなっていたのだろうか…というifストーリーです!もしよかったら見ていってください!
※更新は不定期になると思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる