本能寺燃ゆ

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第三章「寵愛の帳」

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 その後、夕餉となったので、太若丸もご相伴に預かった。

 玉子の姿はなかった。

 普段は給仕を手伝うのが、体調を崩して寝ているらしい。

 大丈夫かとご母堂様に問うと、

「大丈夫なのでしょう」

 と、意味ありげに笑う。

 それは、太若丸殿が良く分かっているではないですか、と言いたそうだ。

 よくよくお休みくださりますようとだけ伝え、早々に寝床に下がった。

 だが、玉子のことが気になり、よく眠れない。

 明日から、女となった玉子が、どう接してくるかの?

 こちらも、どう接すればいいのか?

 しおらしい女性になるか?

 それとも、痛みでさらに不機嫌になるか?

 こちらも、女というものに興味があったので、玉子の口車に乗せられたような形になったが、やはり止めておけばよかった。

 玉子と顔を合わせづらい………………

 などと、考えていると余計に眠れなくなり、気分直しにと、厠に立った。

 玉子の寝室は、静まり返っている。

 昼間あんなことがあったのに、よく眠れるものだと、呆れてしまう。

 十兵衛の寝床は、明かりは灯っていないが、まだ寝ていないようだ。

 男と女の話し声がする。

 いや、聞き耳を立てると、睦会う声だ。

 十兵衛も物好きだ、あんな女を抱くなど。

 それほど女を抱きたいのか?

 あの程度の快楽ならば、女よりも、吾の方がいい。

 女を抱けば、快楽に沈み、欲の種(子)を遺すが、吾を抱けば、欲を消し、悟りを開くことができる。

 こんな素晴らしい吾がいるのに、何故女など抱くのか?

 十兵衛ともあろうものがと、太若丸はこれ見よがしに音を立てて、縁側から庭へと放尿し、そのまま寝床へ入った。

 久しぶりに、僧たちと契っている夢を見た。

 男は背中を突くので、尻を出してやった。

 後ろから抱き、腰を押し付ける。

 何度か動いたあとで、男は女のような悲鳴をあげる。

 行為のあと、ふとこの僧は誰だろうとみると、僧ではなく、侍である。

 十兵衛ではない。

 知らない男でもない、会ったことはあるが、はて、どこで?

 目を覚ますと、男の顔もすっかりと忘れ、思い出せなかった。

 だた、やはり、抱くより、抱かれる方がいい………………
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