本能寺燃ゆ

hiro75

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第二章「性愛の山」

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 太若丸は、安覚に手伝ってもらい着物を脱ぎ、湯を浴びた。

 鐘が聞こえる ―― 初夜の合図らしい。

 太若丸は湯から上がり、体を拭い、あれの仕度をする。

 湯により、『法性の花』は緩んでいるが、念には念をいれる。

 安覚から紙をもらい、細かく千切ったそれを人差し指と中指に巻いて、口に含む。

 唾をよく付け、おもむろに後ろへと回し、穴へとあてがってそっと差し込む。

 日頃の鍛錬のおかげか、いとも簡単に飲み込まれ、それを出し入れする。

 一度抜き、さっきまで自らの中に入っていた紙を安覚に渡す。

 彼はそれを布にくるみ、別の紙を差し出す。

 それで、今度は三本の指に巻き、唾を付けて穴へと誘って出し入れする。

 大丈夫のようだ。

 仕度を終えると、汚れた紙を安覚が受け取り、先ほどの紙とともに布に包んで懐へと仕舞う。

 彼は、人の見ていないところで、この紙を処分するのだ。

 火桶で手足を温める。

 普段は火に当たるのは厳禁だが、この時は許される。

 手足とともに、穴が更に緩むように、お尻も温める。

 穴が整うと、襦袢を身に着け、帯を締める。

 この時、女は右脇に結び目を持ってくるが、稚児は左脇である。

 こういったことにも、細かい決まりがあった。

 この上から小袖を羽織り、安覚が同行して、安仁の寝室へと向かった。

 満月である。

 御山の夜は、恐ろしいほど静かだ。

 僧侶の寝息も聞こえない。

 風すらない。

 耳が痛くなるほどの沈黙………………

 そのなかを、女と見間違うほどの美しき太若丸と、鬼のような形相の安覚が、手燭の明かりを頼りに進む。
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