本能寺燃ゆ

hiro75

文字の大きさ
上 下
128 / 498
第二章「性愛の山」

51

しおりを挟む
 太若丸は、安覚に手伝ってもらい着物を脱ぎ、湯を浴びた。

 鐘が聞こえる ―― 初夜の合図らしい。

 太若丸は湯から上がり、体を拭い、あれの仕度をする。

 湯により、『法性の花』は緩んでいるが、念には念をいれる。

 安覚から紙をもらい、細かく千切ったそれを人差し指と中指に巻いて、口に含む。

 唾をよく付け、おもむろに後ろへと回し、穴へとあてがってそっと差し込む。

 日頃の鍛錬のおかげか、いとも簡単に飲み込まれ、それを出し入れする。

 一度抜き、さっきまで自らの中に入っていた紙を安覚に渡す。

 彼はそれを布にくるみ、別の紙を差し出す。

 それで、今度は三本の指に巻き、唾を付けて穴へと誘って出し入れする。

 大丈夫のようだ。

 仕度を終えると、汚れた紙を安覚が受け取り、先ほどの紙とともに布に包んで懐へと仕舞う。

 彼は、人の見ていないところで、この紙を処分するのだ。

 火桶で手足を温める。

 普段は火に当たるのは厳禁だが、この時は許される。

 手足とともに、穴が更に緩むように、お尻も温める。

 穴が整うと、襦袢を身に着け、帯を締める。

 この時、女は右脇に結び目を持ってくるが、稚児は左脇である。

 こういったことにも、細かい決まりがあった。

 この上から小袖を羽織り、安覚が同行して、安仁の寝室へと向かった。

 満月である。

 御山の夜は、恐ろしいほど静かだ。

 僧侶の寝息も聞こえない。

 風すらない。

 耳が痛くなるほどの沈黙………………

 そのなかを、女と見間違うほどの美しき太若丸と、鬼のような形相の安覚が、手燭の明かりを頼りに進む。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

1333

干支ピリカ
歴史・時代
 鎌倉幕府末期のエンターテイメントです。 (現在の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』から、100年ちょい後の話です)  鎌倉や京都が舞台となります。心躍る激しい合戦や、ぞくぞくするようなオドロオドロしい話を目指そうと思いましたが、結局政治や謀略の話が多くなりました。  主役は足利尊氏の弟、直義です。エキセントリックな兄と、サイケデリックな執事に振り回される、苦労性のイケメンです。  ご興味を持たれた方は是非どうぞ!

大航海時代 日本語版

藤瀬 慶久
歴史・時代
日本にも大航海時代があった――― 関ケ原合戦に勝利した徳川家康は、香木『伽羅』を求めて朱印船と呼ばれる交易船を東南アジア各地に派遣した それはあたかも、香辛料を求めてアジア航路を開拓したヨーロッパ諸国の後を追うが如くであった ―――鎖国前夜の1631年 坂本龍馬に先駆けること200年以上前 東の果てから世界の海へと漕ぎ出した、角屋七郎兵衛栄吉の人生を描く海洋冒険ロマン 『小説家になろう』で掲載中の拙稿「近江の轍」のサイドストーリーシリーズです ※この小説は『小説家になろう』『カクヨム』『アルファポリス』で掲載します

【完結】電を逐う如し(いなづまをおうごとし)――磯野丹波守員昌伝

糸冬
歴史・時代
浅井賢政(のちの長政)の初陣となった野良田の合戦で先陣をつとめた磯野員昌。 その後の働きで浅井家きっての猛将としての地位を確固としていく員昌であるが、浅井家が一度は手を携えた織田信長と手切れとなり、前途には様々な困難が立ちはだかることとなる……。 姉川の合戦において、織田軍十三段構えの陣のうち実に十一段までを突破する「十一段崩し」で勇名を馳せた武将の一代記。

滝川家の人びと

卯花月影
歴史・時代
故郷、甲賀で騒動を起こし、国を追われるようにして出奔した 若き日の滝川一益と滝川義太夫、 尾張に流れ着いた二人は織田信長に会い、織田家の一員として 天下布武の一役を担う。二人をとりまく織田家の人々のそれぞれの思惑が からみ、紆余曲折しながらも一益がたどり着く先はどこなのか。

永き夜の遠の睡りの皆目醒め

七瀬京
歴史・時代
近藤勇の『首』が消えた……。 新撰組の局長として名を馳せた近藤勇は板橋で罪人として処刑されてから、その首を晒された。 しかし、その首が、ある日忽然と消えたのだった……。 近藤の『首』を巡り、過去と栄光と男たちの愛憎が交錯する。 首はどこにあるのか。 そして激動の時代、男たちはどこへ向かうのか……。 ※男性同士の恋愛表現がありますので苦手な方はご注意下さい

本能のままに

揚羽
歴史・時代
1582年本能寺にて織田信長は明智光秀の謀反により亡くなる…はずだった もし信長が生きていたらどうなっていたのだろうか…というifストーリーです!もしよかったら見ていってください! ※更新は不定期になると思います。

処理中です...