本能寺燃ゆ

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第二章「性愛の山」

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 その後、おみよとの関係はなかった。

 おみよも飯の世話などはしてくれるが、夫婦のように馴れ馴れしく接してこなかった。

 権太も、恥ずかしくて、必要以上は話しかけない。

 だが、おみよとの行為が忘れられず、女は狡い、女になりたかったと思いながらも、あそこは大きくなり、弄ることがあった。

 老婆のところに来て、十日ぐらいだろうか?

「ごめん、婆はおるか?」

 夕暮れ間近、女たちが筵を持って出かけようとしたところに、男がやってきた。

「これはこれは安寿あんじゅ様、こんなむさ苦しいところに、ようこそお出でくださいまして」

 老婆は、珍しくにこやかに、揉み手をしながら男を迎え入れた。

「なに、造作もない。新しい娘が入ったと聞いたのでな」

 男は、囲炉裏の前に座る。

 見ると、坊主である。

 寺の坊主が何の用だろうと思ったが、

「安寿様、次はうちを誘ってくださいよ」

 などと女たちが言いながら出て行くので、よく来るのだろう。

 安寿と呼ばれた坊主は、にこりと笑みを返す。

 囲炉裏の火に照らされた顔はほっそりとして、目元はきりりと上がって鋭いのだが、ほころぶ口元は優しげで、不思議な雰囲気を醸し出していた。

 老婆は、安寿に白湯を差し、

「もう少しお待ちください。いま、仕度をしておりますので」

「うむ」

 と、頷いて口に運んだ。

 おみよは、どうしたのだろう?

 いつもなら、おみよが客の世話をするのだが………………

 権太は、何もすることなく、囲炉裏の前に座っていた。

 見てはいけないと思いながらも、安寿を見ていると、目が合った。

 安寿は、にこりと微笑む。

 慌てて目を逸らした。

「仕度ができました。如何せん、おぼこですので、ご容赦くださいませ」

 老婆は、安寿を奥へ案内する。

「それがいいのです」

 と、安寿は笑顔でついていった。
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