本能寺燃ゆ

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第一章「純愛の村」

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 子どもたちは、権太をいじる。

 もともと、体も小さく、女の子みたいに華奢であったので、他の男の子からよくからかわれたものだが、最近はもっと酷い。

「おめんとこの明智のせいで、うららの飯がのうなったわ。どないしてくれるんね?」

 子どもたちは、親の話を聞いて、十兵衛のせいだと権太を突きまわす。

「おめえはええの、あいつのお蔭でたらふく食えて」

「おめえのお姉が『ちゃんぺ』させとるからな」

「おめえも、あいつに『ちゃんぺ』させとるんやないか?」

「『ちゃんぺ』や、『ちゃんぺ』!」

 その中で一番年配の、体の大きな男の子が言うと、他の連中も「『ちゃんぺ』!、『ちゃんぺ』!」と囃し立てた。

 すると、一緒に「『ちゃんぺ』!、『ちゃんぺ』!」と、楽しそうに叫んでいた一番年下の男の子が、

「『ちゃんぺ』って、なに?」

 と、訊いてきた。

「『ちゃんぺ』? 『ちゃんぺ』はな……」

 男の子たちは顔を見合わせる。

 彼らも、言葉は知っているが ―― それが酷く恥ずかしい言葉だとは知っているが、それが何を意味するのかは、はっきりと分かっていないようだ。

 言われた権太も、恥ずかしいのだが、十兵衛と姉のことを思いだすのだが、本当に何をしているのか分からない。

 男の子たちは、一番年配の男の子を見つめる。

「な、なんや、おめえら、『ちゃんぺ』も知らんのか? 『ちゃんぺ』は、べさのここや」

 彼は、自らの股間を指さす。

 他の男の子たちは首を傾げる。

「そこは、『だんべ』やろ?」

「あんぽんたれ、べさは『ちゃんぺ』言うんじゃ。そんなことも知らんのか? べさの『ちゃんぺ』にあなんぼがあるから、そこに『だんべ』を入れて、『ちゃんぺ』するんや。ほなら、えらい気持ちようなるで」

「ほんね?」

「ほやほや」

「おめんは、『ちゃんぺ』したことあるんか?」

「う、うらは……ない。ほやけど、見たことあるで。おめら、べさの『ちゃんぺ』見たことないやろう」

 男の子たちは、ないと首を振る。

「見せたる」

 その男の子は、他の男の子を引き連れて自分の家へと向かった。

 もちろん、権太もあとに続いた。

 その子の家まで行くと、家の近くで数人の女の子が遊んでいた。

 男の子は、その中のひとりに声をかける。

 と、ひとりの女の子が駆けてきた ―― その子の妹だ。

「おい、『ちゃんぺ』見せろ!」

 男の子は、妹に対して言った。

 他の男の子たちが、じっと女の子を見つめる。

 女の子の頬が急に真っ赤になって、

「嫌や!」

 と言った。

「ええから、見せろや!」

「嫌や!」

 と、兄妹で何度かやりあった後、しびれを切らした兄が、いきなり妹の着物の裾をたくし上げた。

 白くて細い両足の付け根に、うっすらと桃色に浮かぶ肌が見えた。

「これが『ちゃんぺ』や」

 妹の裾を持ち上げた男の子は、げらげらと笑う。

 他の男の子たちが、「これが『ちゃんぺ』か」と、女の子の股座をじっと見つめる。

 権太も、幼女のあそこを見た。

 初めてである ―― 姉はいるが、決して見せてはくれなかった。

 はっきりと、男とは違う ―― 『だんべ』がなく、窪んでいた。

「なんや、あなんぼあるゆうたけど、ないやん」

「もっと、見せてな」

 他の男の子たちが、もっとしっかりと見せろと、女の子の股に顔を近づける。
「あなんぼなら、あるって。もっとしっかり見せろや」

 兄が、妹の下半身に手を伸ばそうとすると、女の子はわっと火が点いたように泣き出し、家の中へと逃げていった。

 他の女の子は、おろおろとしながらも、こっちを睨みつけている。

 その視線が痛い。

 が、他の男の子たちは気にしていないようだ。
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