本能寺燃ゆ

hiro75

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第一章「純愛の村」

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 年が明けると、村は忙しくなる。

 源太郎を含め、庄屋や村の役方は、領主への新年の挨拶回りや神事など、やることが多い。

 四日には、まだ年明け気分が抜けないなか、銭を少々持って山崎家へと挨拶へ行き、代わりに小豆飯と酒が振る舞われた。

 七日には逆に領主がやってくるので、それを餅と酒で持て成す。

 これ以外にも、『粥祝』や『鏡の祝』『湯祝』『塞の祭』など、目白押しだ。

 権太も、手伝いに駆り出される。

「そなたも、そのうちやらんといかんことなる。いまのうち、しっかりと見ておき」

 源太郎にそう言われて、間近で見ているが、やることが多くて難しい。

 というか、覚える必要があるのか、権太は不思議に思う。

 源太郎の跡を継ぐのは、婿養子に入る十兵衛ではないのか?

 自分は寺に入れさせられるのでは?

 当然、寺の和尚は正月行事の最中でも、源太郎に権太の寺入りを催促している。

「いや、まだ跡取りが……」

 とか、源太郎は誤魔化しているが、

「跡取りなら、明智殿など良いではないですか?」

 と、和尚は姉と十兵衛をくっつけようとする。

「なんなら、拙僧から明智殿に話してしんぜようか?」

「いえいえ、それは……」

「明智殿は?」

 と、辺りを見回すが、その姿はない。

 十兵衛も、正月に入りより忙しくなっていた。

 武家には武家で、正月行事が沢山あり、併せて処々諸々雑事も多く、なかなか権太の屋敷に戻らなった。

 源太郎は、「婿養子の話を出したので、帰りづらくなったかな?」と、少々不安げであった。

 姉は、十兵衛ならきっと帰ってくるからと、いつものように気丈に振る舞ってはいるが、聊か機嫌が悪い。

 権太も寂しい。

 戻ってきても、浮かない顔をしていることも多い。

 権太が心配そうに見ると、その時はいつものようににこりと笑ってくるのだが、すぐにまた考え込んでしまう。

「色々と大変なのだろう、いまそっとしておいて差し上げなさい」

 と、源太郎も、姉も、無理に構おうとはしなかった。
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