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第一章「純愛の村」
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「おぬし、そんなことでここへ来たわけではないであろう?」
「おう、そうそう、忘れておった。お前に言われて色々と探りを入れたぞ」
八郎は、鉄箸一本を手に、囲炉裏の灰に何やら描き出した。
「山のこの辺りに三人、こっち側に二人、この辺には三人……」
どうやら周辺の山中に潜んでいる足軽連中の所在を調べてきたらしい。
状況を聞いて、
「思ったよりも増えてるな」、十兵衛は渋い顔をした、「纏まったら面倒だ。この中で、頭になりそうな奴はどこだ?」
「ここかな?」
八郎は、五人ほど集まっているというところを鉄箸で差した。
「ここにいる奴は面白いぞ」
「ほう、どのように?」
八郎はにやりと笑うと、十兵衛にこっちに耳を貸せと手招きをする。
十兵衛は、そのまま話せよ、という顔をしながら、八郎に顔を近づけた。
八郎は、十兵衛の耳元で何やら囁いている。
ふむふむとしばらく頷いていた十兵衛だが、
「まことか?」
と、驚いたあと、しばらく考えていた。
「どうよ、なかなか良い話だろう」
「うむ……」
「高いぞ」
「出世払いだ」
「いつになるやら」
十兵衛と八郎は顔を見合わせ、声をあげて笑った。
そのあと、また昔話になり、その晩は二人して客間で寝た。
姉は不服そうだった。
いい気味だと思った。
客間に入る前に十兵衛が、「いよいよ運が向いてきたかな」と、八郎に言っているのが聞こえた。
八郎が、それに何と答えたかは分からない。
「おう、そうそう、忘れておった。お前に言われて色々と探りを入れたぞ」
八郎は、鉄箸一本を手に、囲炉裏の灰に何やら描き出した。
「山のこの辺りに三人、こっち側に二人、この辺には三人……」
どうやら周辺の山中に潜んでいる足軽連中の所在を調べてきたらしい。
状況を聞いて、
「思ったよりも増えてるな」、十兵衛は渋い顔をした、「纏まったら面倒だ。この中で、頭になりそうな奴はどこだ?」
「ここかな?」
八郎は、五人ほど集まっているというところを鉄箸で差した。
「ここにいる奴は面白いぞ」
「ほう、どのように?」
八郎はにやりと笑うと、十兵衛にこっちに耳を貸せと手招きをする。
十兵衛は、そのまま話せよ、という顔をしながら、八郎に顔を近づけた。
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ふむふむとしばらく頷いていた十兵衛だが、
「まことか?」
と、驚いたあと、しばらく考えていた。
「どうよ、なかなか良い話だろう」
「うむ……」
「高いぞ」
「出世払いだ」
「いつになるやら」
十兵衛と八郎は顔を見合わせ、声をあげて笑った。
そのあと、また昔話になり、その晩は二人して客間で寝た。
姉は不服そうだった。
いい気味だと思った。
客間に入る前に十兵衛が、「いよいよ運が向いてきたかな」と、八郎に言っているのが聞こえた。
八郎が、それに何と答えたかは分からない。
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