本能寺燃ゆ

hiro75

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第一章「純愛の村」

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 確かに筵は板の間に敷かれ、十兵衛もいた。

 が、なぜか姉もいた。

 それなら別段問題もないのだが、いや、十兵衛と姉がふたりっきりでいることが、すでに権太の心をかき乱すのだが、そのふたりが睦合っている姿を見て、権太の心はまるで野分の海のように荒ぶった。

 はじめは何をしているのか分からなかった。

 月のお蔭で、様子はしっかりと見て取れた。

 十兵衛が、仰向けに寝そべる姉の上にのり、体をゆっくりと動かしていた。

 ときおり、姉の首筋や肌蹴た胸元に顔を埋める。

 そのたびに姉は細い眉を寄せ、苦しいのか、霞んだ声をあげていた。

 音は、姉のそれだ。

 そして、十兵衛の身体が前の方に大きくせりあがったかと思うと、姉は体を仰け反らせ、閉じられた唇が、花がぱっと咲くかのように艶やかな声が零れ落ちた。

 それが何度か続いた………………十兵衛が体を動かすたびに、おえいは眉を顰め、苦悶とも喜びともいえぬ、弟が聞いても恥ずかしくなるような声をあげた。

 月の光に照らされた筵は乱れ、まるで水面に広がる波紋のようにふたりの周りに広がっていく。

 そうか、これがあれなのだ。

 はじめて言葉と行為が一致した瞬間だった。

 確かに恥ずかしい行為だ。

 見ているこっちも恥ずかしくなる。

 だが………………変だ。

 なんだろう、先ほど尿を出したところが異様にむずむずする。

 出したばっかりなのに、また?

 でも、このむずむずはいつもの小便を催すときのそれとは違うことは権太にも分かっていた。

 権太は、自分のものを弄った ―― 大きくなっているのが分かった。

 十兵衛と姉の行為を見ながら、まさぐり続けた。

 いけないことだと思った

 してはいけない気がしたが、正直乱れた心が落ち着く………………というか、別の気が高ぶり、おえいたちへの気持ちが消えていくような、不思議な感覚だった。

 月は、なおも明るい。

 男の身体が激しく波打ち、岩に砕け散るような声を出したかと思うと、女も悲鳴に近いような声を出して、背中を仰け反らせ、権太も言い知れぬ快感を覚えた。

 終わって、権太は全身に汗をかいていた。

 吹き付ける生温かい風が、変に心地よかった。

 なぜか疲れたので、ぼぅーっとしていた。

 十兵衛と姉は、しばらく何事が話していたようだ、会話は聞こえなかったが。

 しばらくすると、姉が客間を出ていく気配がした。

 権太は慌てて家に戻る。

 家に入ると、ばったり姉と出くわした。

 幾分引き攣った顔をしている。

 それは権太も同じだったろう。

 どこに行っていたのだと煩く聞くので、尿とだけ答えた。

「ねぇは?」

 と聞き返すと、答えず、寝転がった。

 隣に寝転がると、姉の身体から十兵衛の匂いがした。

 悔しくなって、姉に背中を向けて寝た。
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