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第一章「純愛の村」
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そして、権太とおえいが信じたように、十兵衛は帰ってきた。
すぐに女のもとに行き、毎日一粒ずつ飲むようにと薬丸を渡した。
「それから、精のつくものを食べるといいです」
「精のつくものと言われても……、見てのとおり、旱で食べるものもなく……」
女が切なそうに言うと、十兵衛は満面の笑みで、
「大丈夫、もうじき水がきますから」
と、自信たっぷりに答えたらしい。
それから五日後だ、水が村にきたのは。
それで村人たちは、十兵衛への誤解をとき、さらには産後の肥立ちが悪かった女も、徐々にではあるが体調も回復してきたらしい。
「月のものが前よりもよくなったらしいわ。凄いわ、明智様」
「あの薬、高いんやろう。そやけど、明智様はお金はいらんと言われたらしいわ」
「まあ、そんな金、うらにはないけどな。そやけど、ええ人やわ」
「ほんま、ええ男やし、頭もええし、うららにも優しいし」
と、女たちが十兵衛を褒め称えた。
そんな女たちを見て男たちは何やら言ってやりたい気持ちはあったが、村に水を引き、病人まで診てもらったからには、十兵衛を以前のように罵ることもできず、
「まあ、ええ人ではあるわな」
と、少々屈折した感じで褒めた。
権太は、気分が良かった ―― それ見たことか、十兵衛は凄いんだと。
姉のおえいを同じようだ。
口には出さないが、源太郎の口から十兵衛の誇らしい話を聞くと、まるで自分が褒められたごとくに、嬉しそうな顔で頬を染めた。
それが、権太には気に食わない。
十兵衛が傍にいると、まるで懐いた犬のように纏わりつき、世話を焼いた。
十兵衛は少々困ったようだったが、姉の好きなようにさせている。
それもまた、権太には不満だった。
すぐに女のもとに行き、毎日一粒ずつ飲むようにと薬丸を渡した。
「それから、精のつくものを食べるといいです」
「精のつくものと言われても……、見てのとおり、旱で食べるものもなく……」
女が切なそうに言うと、十兵衛は満面の笑みで、
「大丈夫、もうじき水がきますから」
と、自信たっぷりに答えたらしい。
それから五日後だ、水が村にきたのは。
それで村人たちは、十兵衛への誤解をとき、さらには産後の肥立ちが悪かった女も、徐々にではあるが体調も回復してきたらしい。
「月のものが前よりもよくなったらしいわ。凄いわ、明智様」
「あの薬、高いんやろう。そやけど、明智様はお金はいらんと言われたらしいわ」
「まあ、そんな金、うらにはないけどな。そやけど、ええ人やわ」
「ほんま、ええ男やし、頭もええし、うららにも優しいし」
と、女たちが十兵衛を褒め称えた。
そんな女たちを見て男たちは何やら言ってやりたい気持ちはあったが、村に水を引き、病人まで診てもらったからには、十兵衛を以前のように罵ることもできず、
「まあ、ええ人ではあるわな」
と、少々屈折した感じで褒めた。
権太は、気分が良かった ―― それ見たことか、十兵衛は凄いんだと。
姉のおえいを同じようだ。
口には出さないが、源太郎の口から十兵衛の誇らしい話を聞くと、まるで自分が褒められたごとくに、嬉しそうな顔で頬を染めた。
それが、権太には気に食わない。
十兵衛が傍にいると、まるで懐いた犬のように纏わりつき、世話を焼いた。
十兵衛は少々困ったようだったが、姉の好きなようにさせている。
それもまた、権太には不満だった。
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