法隆寺燃ゆ

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第一章「宿命の子どもたち」 後編

第23話

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 一方、山背大兄一行は、長徳の読み通り椿井の離宮まで逃れていた。

 ここからならば、斑鳩奪還にも、山城に逃れるにも好都合である。

 そしてこれも長徳の読み通り、いずれの策を取るかで揉めていた。

「斑鳩寺は未だ健在です。あそこには大量の武具もあります。なにより、堅牢な要塞にもなります。いま一度立ち返り、斑鳩を奪還するのです。そして、上宮王の御影を立てて戦うのです。そうすれば、飛鳥の臣下も靡きます。正義は、我らにあるのです」

 これは、山背大兄の三男、弓削王の意見である。

 多くの者が、彼の意見に賛同した。

「謹んで申し上げます。斑鳩は、最早大伴殿の手に落ちました。彼ならば、奪還作戦も視野に入れているはず。戻ったところを一網打尽にするつもりです。それよりは、ここは一旦深草屯倉に向かい、そこから馬に乗って、東国の乳部みぶに赴き、兵を挙げましょう」

 これは、戦禍の傷も痛々しい三輪文屋の意見であった。

「斑鳩宮には、偽装の骨を残して来ている。ヤツらは、我らが死んだと思っておる」

 と、弓削王は言う。

「あんな偽装……、大伴殿ならすぐ見破ります」

 と、文屋が言う。

「逃げることはできません! 斑鳩に戻り、正々堂々と戦うのです!」

 と、舂米女王が言う。

 意見は激しく分かれた。

 そんな状況を見て、山背大兄はポツリと呟いた。

「父上は、戦うことを望まれるであろうか………………」
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