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第一章「宿命の子どもたち」 後編
第17話
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「大鳥殿、林殿は、大后では蘇我家の勢力が削がれるのを恐れていらっしゃるのではないですかな?」
どこからともなく声がした。
「なるほど、そんなことを恐れておいでか? それは、さもありなん」
「そんな矮小な考えはございません」
嫌味なことを言うやつだな ―― 入鹿は、声のした方に目をやった。
そこには、小柄な男が控えている。
どことなく、中臣鎌子に似た顔である。
「私に、妙案がございますが」
「ほう、中臣殿、その案とは?」
小柄な男は促され、喋り出した ―― なるほど、あれが鎌子殿の異母兄、枚夫かと、入鹿は鋭い目をやった。
「山背様を大王とし、大后には山背様の大后になって頂きます。そして、大兄には田村様のご子息、古人様になって頂くのです」
「なるほど、それは名案。これで、山背派も大后派も納得がいくだろう。蘇我家の支配も、山背様、古人様と続けることができますぞ。どうですかな?」
入鹿は、枚夫の顔を見た。
その顔は冷静そのものである。
入鹿は思った ―― 恐ろしい奴だと………………
結局、この日の重臣会議は、枚夫の案を再度検討するという形でお開きとなった。
入鹿は、その足で、重臣会議の結果を宝大后に報告するために参上した。
しかし、枚夫の案は、言葉の端にも出さなかった。
「会議は揉めているようですね、林臣」
宝大后の言葉はきつかった。
「申し訳ございません」
「林臣、大臣が決断できないようなら、私が大王代行として裁可を下しますよ」
「それには、及びません。急ぎ、取り纏めますので」
宝大后は痺れを切らしていた。
そして屋敷に帰っては、蘇我敏傍が慌てた様子で入鹿に詰め寄った。
「兄上、山背様と大后の婚姻は本当なのですか?」
「どこからその話を?」
「分かりませんが、舂米様はご立腹のようで。詳細を説明せよと、いま、三輪殿が外に待っておりますぞ」
重臣会議の話が漏れている。
いや、故意に漏らしているのか?
もはや猶予はない。
山背大兄も、宝大后も、そして重臣たちも納得のいく方法………………入鹿は、最終決断を下すことにした。
どこからともなく声がした。
「なるほど、そんなことを恐れておいでか? それは、さもありなん」
「そんな矮小な考えはございません」
嫌味なことを言うやつだな ―― 入鹿は、声のした方に目をやった。
そこには、小柄な男が控えている。
どことなく、中臣鎌子に似た顔である。
「私に、妙案がございますが」
「ほう、中臣殿、その案とは?」
小柄な男は促され、喋り出した ―― なるほど、あれが鎌子殿の異母兄、枚夫かと、入鹿は鋭い目をやった。
「山背様を大王とし、大后には山背様の大后になって頂きます。そして、大兄には田村様のご子息、古人様になって頂くのです」
「なるほど、それは名案。これで、山背派も大后派も納得がいくだろう。蘇我家の支配も、山背様、古人様と続けることができますぞ。どうですかな?」
入鹿は、枚夫の顔を見た。
その顔は冷静そのものである。
入鹿は思った ―― 恐ろしい奴だと………………
結局、この日の重臣会議は、枚夫の案を再度検討するという形でお開きとなった。
入鹿は、その足で、重臣会議の結果を宝大后に報告するために参上した。
しかし、枚夫の案は、言葉の端にも出さなかった。
「会議は揉めているようですね、林臣」
宝大后の言葉はきつかった。
「申し訳ございません」
「林臣、大臣が決断できないようなら、私が大王代行として裁可を下しますよ」
「それには、及びません。急ぎ、取り纏めますので」
宝大后は痺れを切らしていた。
そして屋敷に帰っては、蘇我敏傍が慌てた様子で入鹿に詰め寄った。
「兄上、山背様と大后の婚姻は本当なのですか?」
「どこからその話を?」
「分かりませんが、舂米様はご立腹のようで。詳細を説明せよと、いま、三輪殿が外に待っておりますぞ」
重臣会議の話が漏れている。
いや、故意に漏らしているのか?
もはや猶予はない。
山背大兄も、宝大后も、そして重臣たちも納得のいく方法………………入鹿は、最終決断を下すことにした。
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