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第一章「宿命の子どもたち」 前編
第17話
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あの日、弟成が真っ赤な目をして帰ってきたので、雪女は驚いた。
遊んでいる時に転んで、泣きながら帰ってくることはよくあったのだが、明らかに泣いたであろうと思われる顔を洗い流し、なお且つ、その顔を見られないように俯いて帰ってくるのは、初めてであった。
「どないしたん? 何かあったん?」
と、尋ねるのだが、本人は、
「なんもない」
の一点張りであった。
父や母に相談したが、彼らは到って楽天的で、
「どうせ、どこかで転んだだけやろ」
の一言だった。
弟成の様子に気付いたのは、黒万呂も一緒だった。
いつものような元気がないように思えたので、
「なんかあったんか?」
と訊くのだが、これもまた、
「なんもない 」
で返されるのであった。
「なんもない」ことはなく、明らかに斑鳩で何かあったと雪女は思っていた。
実際、弟成は斑鳩へのお遣いを嫌がるようになった。
無理やり行かせたところで、前は丸一日帰ってこなかったのに、いまは用事を済ませると、すぐに帰ってくるようになった。
不審に思った雪女は、人を遣って三成にそれとなく訊いてみたが、彼もその理由は分からないということであった。
遊んでいる時に転んで、泣きながら帰ってくることはよくあったのだが、明らかに泣いたであろうと思われる顔を洗い流し、なお且つ、その顔を見られないように俯いて帰ってくるのは、初めてであった。
「どないしたん? 何かあったん?」
と、尋ねるのだが、本人は、
「なんもない」
の一点張りであった。
父や母に相談したが、彼らは到って楽天的で、
「どうせ、どこかで転んだだけやろ」
の一言だった。
弟成の様子に気付いたのは、黒万呂も一緒だった。
いつものような元気がないように思えたので、
「なんかあったんか?」
と訊くのだが、これもまた、
「なんもない 」
で返されるのであった。
「なんもない」ことはなく、明らかに斑鳩で何かあったと雪女は思っていた。
実際、弟成は斑鳩へのお遣いを嫌がるようになった。
無理やり行かせたところで、前は丸一日帰ってこなかったのに、いまは用事を済ませると、すぐに帰ってくるようになった。
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