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第2話
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長政の渋い顔を見て、ヤヤは、
「そんなに面倒なら、引き受けなければいいものを。頼まれると断れない人なんだから」
と、聞こえよがしに呟く。
「仕方あるまい。猫は猫でも、ただの猫ではない。天下人の猫、太閤殿下の御愛猫の〝トラ〟だ」
秀吉は大の猫好きである。
数十匹飼っている。
以前、長政は秀吉に、猫よりも犬のほうが良いのではないかと尋ねたことがあった。
『犬は飼い主に忠節を尽くし、恩を忘れません。猫は飼い主に慣れませんし、恩を感じません。さながら、犬は武士、猫は女にございます』
『そこがええ』と、秀吉は笑った、『女はわがままなほうがええ。律儀な女は面白味がのうてよ』
『拙者は犬が好きでございます』
『弥兵衛は真面目よのう』
と、秀吉は膝に蹲る猫の背中を撫でた。
白毛に茶色のトラ模様が美しい猫であった。
秀吉が一番可愛がっていた猫である。
その猫がいなくなったという。
「そんなに面倒なら、引き受けなければいいものを。頼まれると断れない人なんだから」
と、聞こえよがしに呟く。
「仕方あるまい。猫は猫でも、ただの猫ではない。天下人の猫、太閤殿下の御愛猫の〝トラ〟だ」
秀吉は大の猫好きである。
数十匹飼っている。
以前、長政は秀吉に、猫よりも犬のほうが良いのではないかと尋ねたことがあった。
『犬は飼い主に忠節を尽くし、恩を忘れません。猫は飼い主に慣れませんし、恩を感じません。さながら、犬は武士、猫は女にございます』
『そこがええ』と、秀吉は笑った、『女はわがままなほうがええ。律儀な女は面白味がのうてよ』
『拙者は犬が好きでございます』
『弥兵衛は真面目よのう』
と、秀吉は膝に蹲る猫の背中を撫でた。
白毛に茶色のトラ模様が美しい猫であった。
秀吉が一番可愛がっていた猫である。
その猫がいなくなったという。
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