秀吉の猫

hiro75

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第2話

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 長政の渋い顔を見て、ヤヤは、

「そんなに面倒なら、引き受けなければいいものを。頼まれると断れない人なんだから」

 と、聞こえよがしに呟く。

「仕方あるまい。猫は猫でも、ただの猫ではない。天下人の猫、太閤殿下の御愛猫の〝トラ〟だ」

 秀吉は大の猫好きである。

 数十匹飼っている。

 以前、長政は秀吉に、猫よりも犬のほうが良いのではないかと尋ねたことがあった。

『犬は飼い主に忠節を尽くし、恩を忘れません。猫は飼い主に慣れませんし、恩を感じません。さながら、犬は武士、猫は女にございます』

『そこがええ』と、秀吉は笑った、『女はわがままなほうがええ。律儀な女は面白味がのうてよ』

『拙者は犬が好きでございます』

『弥兵衛は真面目よのう』

 と、秀吉は膝に蹲る猫の背中を撫でた。

 白毛に茶色のトラ模様が美しい猫であった。

 秀吉が一番可愛がっていた猫である。

 その猫がいなくなったという。
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