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第4章「恋文」
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「はい、お待ちどうさん」
老婆が運んできたお茶を、小次郎は黙って口に運んだ。
(今日の茶は、馬鹿に苦えぜ)
小次郎は、頭を逸らして一気に流し込んだ。
顔をもとに戻すと、見覚えのある顔が飛び込んできた。
小次郎は、ふっと大きな息を吐き、茶碗をポンといい音をさせて置くと、勢い良く立ち上がった。
「旦那?」
「来たぞ」
貞吉は、残りの団子を急いで口の中に放り込んで立ち上がる。
生田庄之助は、今日も細い目ときりりとした眉を携えて、澄ました顔で近づいて来る。
小次郎は、両手を下げて目礼した。
庄之助は、それに答えることなく通り過ぎようとした。
「生田様」
その声に、庄之助の足が止まった。
「何用ですかな?」
「はっ、拙者、南町奉行所三番組同心、秋山小次郎と申します。しばし、お訊きしたいことがございます」
「はて、町方に用などないと思いますが?」
庄之助は、相も変わらず澄ましている。
「はっ、お七の件です」
「お七と? はて、聞いたことがない名ですね」
「おいおい、いい加減にしろよ、おめえさんの名は割れてんだぞ」
貞吉が前に出るが、これを小次郎が押し止めた。
「申し訳ございませぬ、礼儀を知らぬ者で。されど、まことにお七という娘をご存知ありませんか?」
「知り申さぬ」
庄之助は、強い口調で言い放った。
老婆が運んできたお茶を、小次郎は黙って口に運んだ。
(今日の茶は、馬鹿に苦えぜ)
小次郎は、頭を逸らして一気に流し込んだ。
顔をもとに戻すと、見覚えのある顔が飛び込んできた。
小次郎は、ふっと大きな息を吐き、茶碗をポンといい音をさせて置くと、勢い良く立ち上がった。
「旦那?」
「来たぞ」
貞吉は、残りの団子を急いで口の中に放り込んで立ち上がる。
生田庄之助は、今日も細い目ときりりとした眉を携えて、澄ました顔で近づいて来る。
小次郎は、両手を下げて目礼した。
庄之助は、それに答えることなく通り過ぎようとした。
「生田様」
その声に、庄之助の足が止まった。
「何用ですかな?」
「はっ、拙者、南町奉行所三番組同心、秋山小次郎と申します。しばし、お訊きしたいことがございます」
「はて、町方に用などないと思いますが?」
庄之助は、相も変わらず澄ましている。
「はっ、お七の件です」
「お七と? はて、聞いたことがない名ですね」
「おいおい、いい加減にしろよ、おめえさんの名は割れてんだぞ」
貞吉が前に出るが、これを小次郎が押し止めた。
「申し訳ございませぬ、礼儀を知らぬ者で。されど、まことにお七という娘をご存知ありませんか?」
「知り申さぬ」
庄之助は、強い口調で言い放った。
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