桜はまだか?

hiro75

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第4章「恋文」

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「はい、お待ちどうさん」

 老婆が運んできたお茶を、小次郎は黙って口に運んだ。

(今日の茶は、馬鹿に苦えぜ)

 小次郎は、頭を逸らして一気に流し込んだ。

 顔をもとに戻すと、見覚えのある顔が飛び込んできた。

 小次郎は、ふっと大きな息を吐き、茶碗をポンといい音をさせて置くと、勢い良く立ち上がった。

「旦那?」

「来たぞ」

 貞吉は、残りの団子を急いで口の中に放り込んで立ち上がる。

 生田庄之助は、今日も細い目ときりりとした眉を携えて、澄ました顔で近づいて来る。

 小次郎は、両手を下げて目礼した。

 庄之助は、それに答えることなく通り過ぎようとした。

「生田様」

 その声に、庄之助の足が止まった。

「何用ですかな?」

「はっ、拙者、南町奉行所三番組同心、秋山小次郎と申します。しばし、お訊きしたいことがございます」

「はて、町方に用などないと思いますが?」

 庄之助は、相も変わらず澄ましている。

「はっ、お七の件です」

「お七と? はて、聞いたことがない名ですね」

「おいおい、いい加減にしろよ、おめえさんの名は割れてんだぞ」

 貞吉が前に出るが、これを小次郎が押し止めた。

「申し訳ございませぬ、礼儀を知らぬ者で。されど、まことにお七という娘をご存知ありませんか?」

「知り申さぬ」

 庄之助は、強い口調で言い放った。
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