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第三章「焼き味噌団子」
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おかつが、お七にした話はあながち嘘ではない。
いや、ほとんど実話である。
おかつは小さいころに二親を亡くし、そのあとはどん底の生活をしていた。
『生きていくにはお飯を食べなくちゃいけねえ。お飯が欲しけりゃ、銭が必要だよ』
ということで、その銭を得るために始めたのが掏児だった。
生まれつき手先が器用だったせいか、めきめきと腕を上げて、その世界ではちょっと名の知れた存在になった。
だが、掏児なんざ、名が知れたらやってはいけない。
役人から目を付けられて、捕まったのが小次郎の縄だった。
そのときは小次郎も、おかつが初犯ということもあって見逃してやった。
そのあと、二、三度と捕まった。
そうなると、「仏の顔も何とやら」である。
とうとう小伝馬町送りとなった。
だが、小伝馬町に行く前日に、お解き放ちとなった。
おかつは首を捻った。
死罪、遠島は免れぬと覚悟していたのが、行き成り無罪放免である。
それも、命を助けてもらっただけでなく、働く店まで紹介してもらったのだから………………
それが、いまの一膳飯屋である。
(今日日の御番所も、なかなか粋なことをしてくれるじゃないかい)
おかつは、勝手に解釈していた。
後々になって聞いてみると、裏で小次郎がいろいろと手を回していたことが分かった。
(なんで秋山のやつが?)
小次郎は、おかつを捕まえた張本人である。
もしかして手篭めにするつもりじゃ………………と思い、なんでそこまで自分に優しくするのかと、おかつは直接訊いたことがある。
すると小次郎は口の端を緩めて、
『おう、小伝馬町送りには、勿体ねえほどのいい女だからな』
と言った。
小次郎の笑みを見て、背筋に悪寒が走った。
しかし、小次郎がおかつを求めてくることはなかった。
たまにお尻を撫でたり、下の話をしたりするが、それ以上は興味がないようだ。
実際のところは、手先として仕える女が欲しかっただけのようである。
(それなら、そう言えばいいのに。ほんと、秋山の旦那も素直じゃないね)
おかつは、心の中でくすりと笑っている。
これまで秋山の手先として何度も働いている。
が、今回のように仮牢に入れなど初めてだった。
『分かりましたよ。秋山様とは腐れ縁ですからね、やりますよ。で、何を聞き出せばいいんですか?』
『おうよ、そうこなくっちゃ』
と、尻をぽんと叩かれた具合である。
いや、ほとんど実話である。
おかつは小さいころに二親を亡くし、そのあとはどん底の生活をしていた。
『生きていくにはお飯を食べなくちゃいけねえ。お飯が欲しけりゃ、銭が必要だよ』
ということで、その銭を得るために始めたのが掏児だった。
生まれつき手先が器用だったせいか、めきめきと腕を上げて、その世界ではちょっと名の知れた存在になった。
だが、掏児なんざ、名が知れたらやってはいけない。
役人から目を付けられて、捕まったのが小次郎の縄だった。
そのときは小次郎も、おかつが初犯ということもあって見逃してやった。
そのあと、二、三度と捕まった。
そうなると、「仏の顔も何とやら」である。
とうとう小伝馬町送りとなった。
だが、小伝馬町に行く前日に、お解き放ちとなった。
おかつは首を捻った。
死罪、遠島は免れぬと覚悟していたのが、行き成り無罪放免である。
それも、命を助けてもらっただけでなく、働く店まで紹介してもらったのだから………………
それが、いまの一膳飯屋である。
(今日日の御番所も、なかなか粋なことをしてくれるじゃないかい)
おかつは、勝手に解釈していた。
後々になって聞いてみると、裏で小次郎がいろいろと手を回していたことが分かった。
(なんで秋山のやつが?)
小次郎は、おかつを捕まえた張本人である。
もしかして手篭めにするつもりじゃ………………と思い、なんでそこまで自分に優しくするのかと、おかつは直接訊いたことがある。
すると小次郎は口の端を緩めて、
『おう、小伝馬町送りには、勿体ねえほどのいい女だからな』
と言った。
小次郎の笑みを見て、背筋に悪寒が走った。
しかし、小次郎がおかつを求めてくることはなかった。
たまにお尻を撫でたり、下の話をしたりするが、それ以上は興味がないようだ。
実際のところは、手先として仕える女が欲しかっただけのようである。
(それなら、そう言えばいいのに。ほんと、秋山の旦那も素直じゃないね)
おかつは、心の中でくすりと笑っている。
これまで秋山の手先として何度も働いている。
が、今回のように仮牢に入れなど初めてだった。
『分かりましたよ。秋山様とは腐れ縁ですからね、やりますよ。で、何を聞き出せばいいんですか?』
『おうよ、そうこなくっちゃ』
と、尻をぽんと叩かれた具合である。
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