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夢と現実の狭間
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◇
インキュバス関連の個人調査してから数日後、3日ほど休みを貰い意気揚々と隣村へ向かった。
意気揚々しているのは、インキュバスの新情報を得られそうだというのもあるが、昨日夢のなかでそんなに日が経っていないのに珍しくルイスが来てくれたのだ。
しかも、いつもより積極的で前回ルイスが満足するまでセックスしてもいいというのは継続中らしく、俺もいつもよりがっついてしまった。そのせいで次来るのは随分先になるからな後悔しとけ! って怒られながら目が醒めたのだ。
「夢精がなければより良いんだがなぁ……」
思わず独り言を言ってしまったが、無理もない。隣町へ行くまでの道のりが思ったより遠く、入り込んでいる。道はあるものの、獣道に近いうえに誰一人もすれ違うことなく登り続けて数時間たっている。
隠れ家にするには丁度いいくらいで、情報源の信憑性は上がった。
ようやく密集した木々から開け、しばらく歩くと中心部らしきとこへたどり着いた。こぢんまりとしたのどかな町で、あたりを見回すと農地ばかりで住民達はずいぶん年を召された人達だった。若年が全然見あたらない。
「あらまぁ、お若いのが来てるわ。めずらしいねぇ。せっかくだしここでしばらくゆっくりしときい」
畑仕事帰りなのか鍬や籠などの道具を背負って歩いていた老婆が嬉々と声をかけられた。とりあえず軽く会釈し、若者らしき人がいるかどうか訊ねてみると、アンタが一番の若者だよと言われてしまった。
もしかしたらここではなく別のとこだったか…? と困惑していると、この町のなかで一際大きい屋敷の庭から領主らしき人出てきて声かけられた。おそらく会話が聞こえて気になってたのだろう。
「本当だな。お若いのが来ておる。商売か何かかい?」
ここには人がくるのがめったにないのか、その人も警戒することもなく俺を迎えてくれた。
「あ、いえ。人探ししておりまして」
「ほう? 人探し?」
もっさりとした髭を撫でて眉を顰めた。もし領主であれば情報は入ってくるはずと思い、その人に訊いてみた。
「ここ数年に若い二人組がここに来ませんでしたか?」
「あぁ……、山頂に住んでる家族のことかい? 月に一回ほどそこの地で青空市場があってな、店を出す時だけ降りてくる。お若いのといえばその人達ぐらいだ。他の若いものは出稼ぎで出ていったきり戻ってこないしな」
指差した先には広い野原があった。どうやら本日は『月一回の青空市場』の日ではないらしい。
また登るはめになるのか……とげんなりしたのをハッキリ顔に出ていたらしく、笑われてしまった。
「私はここの領主だが、その人達はめったに降りないことで有名だ。降りるといえば青空市場と何かと必要な時ぐらいだ。ただトラブルとかの情報は入ってこないし無害だろうとは思ったんだが、訳アリか何かかね?」
おっといけない。そんなつもりはなかったが人探しとなると確かに訳アリになってしまう。
「いえ、訳アリではありません。実は私の生き別れの兄弟がここにいるという情報があったので……もしかしたらその人達かもしれません。教えていただきありがとうございます」
領主に感謝の礼として深くお辞儀し、返答を待たずにすぐその場を去ろうとした。
「おっと、待ってくれ。そこの家族は子どもがひとりおる。せっかくだからコレを持って行け。そこの子どもが大好きな果物だ」
庭に生えている木の果実をいくつかもぎって、そのまま手渡される。手のひらに収まる大きさで成熟した赤い実だった。
「もし生き別れの兄弟なら、話題が必要だろう? そうでなくてもコレでごまかしは効く。幸運を祈ってるよ」
朗らかに笑って優しく肩を叩かれた。
領主にしてはとても人がいい。騙すことになってしまった罪悪感を持ちつつ、感謝を述べて手元にあるいくつかの果実を旅袋に入れた。
「この道をまっすぐいけば、あの山頂の入り口がある。そこから登ればいい」
「ありがとうございます」
早速山頂へ向かうために歩き出したが、領主は姿が見えなくなるまで見送ってくれていた。
長いこと見送られるというのは今まで経験がなく、なんだか気恥ずかしくなり口元がゆるみそうで手で塞いだ。
インキュバス関連の個人調査してから数日後、3日ほど休みを貰い意気揚々と隣村へ向かった。
意気揚々しているのは、インキュバスの新情報を得られそうだというのもあるが、昨日夢のなかでそんなに日が経っていないのに珍しくルイスが来てくれたのだ。
しかも、いつもより積極的で前回ルイスが満足するまでセックスしてもいいというのは継続中らしく、俺もいつもよりがっついてしまった。そのせいで次来るのは随分先になるからな後悔しとけ! って怒られながら目が醒めたのだ。
「夢精がなければより良いんだがなぁ……」
思わず独り言を言ってしまったが、無理もない。隣町へ行くまでの道のりが思ったより遠く、入り込んでいる。道はあるものの、獣道に近いうえに誰一人もすれ違うことなく登り続けて数時間たっている。
隠れ家にするには丁度いいくらいで、情報源の信憑性は上がった。
ようやく密集した木々から開け、しばらく歩くと中心部らしきとこへたどり着いた。こぢんまりとしたのどかな町で、あたりを見回すと農地ばかりで住民達はずいぶん年を召された人達だった。若年が全然見あたらない。
「あらまぁ、お若いのが来てるわ。めずらしいねぇ。せっかくだしここでしばらくゆっくりしときい」
畑仕事帰りなのか鍬や籠などの道具を背負って歩いていた老婆が嬉々と声をかけられた。とりあえず軽く会釈し、若者らしき人がいるかどうか訊ねてみると、アンタが一番の若者だよと言われてしまった。
もしかしたらここではなく別のとこだったか…? と困惑していると、この町のなかで一際大きい屋敷の庭から領主らしき人出てきて声かけられた。おそらく会話が聞こえて気になってたのだろう。
「本当だな。お若いのが来ておる。商売か何かかい?」
ここには人がくるのがめったにないのか、その人も警戒することもなく俺を迎えてくれた。
「あ、いえ。人探ししておりまして」
「ほう? 人探し?」
もっさりとした髭を撫でて眉を顰めた。もし領主であれば情報は入ってくるはずと思い、その人に訊いてみた。
「ここ数年に若い二人組がここに来ませんでしたか?」
「あぁ……、山頂に住んでる家族のことかい? 月に一回ほどそこの地で青空市場があってな、店を出す時だけ降りてくる。お若いのといえばその人達ぐらいだ。他の若いものは出稼ぎで出ていったきり戻ってこないしな」
指差した先には広い野原があった。どうやら本日は『月一回の青空市場』の日ではないらしい。
また登るはめになるのか……とげんなりしたのをハッキリ顔に出ていたらしく、笑われてしまった。
「私はここの領主だが、その人達はめったに降りないことで有名だ。降りるといえば青空市場と何かと必要な時ぐらいだ。ただトラブルとかの情報は入ってこないし無害だろうとは思ったんだが、訳アリか何かかね?」
おっといけない。そんなつもりはなかったが人探しとなると確かに訳アリになってしまう。
「いえ、訳アリではありません。実は私の生き別れの兄弟がここにいるという情報があったので……もしかしたらその人達かもしれません。教えていただきありがとうございます」
領主に感謝の礼として深くお辞儀し、返答を待たずにすぐその場を去ろうとした。
「おっと、待ってくれ。そこの家族は子どもがひとりおる。せっかくだからコレを持って行け。そこの子どもが大好きな果物だ」
庭に生えている木の果実をいくつかもぎって、そのまま手渡される。手のひらに収まる大きさで成熟した赤い実だった。
「もし生き別れの兄弟なら、話題が必要だろう? そうでなくてもコレでごまかしは効く。幸運を祈ってるよ」
朗らかに笑って優しく肩を叩かれた。
領主にしてはとても人がいい。騙すことになってしまった罪悪感を持ちつつ、感謝を述べて手元にあるいくつかの果実を旅袋に入れた。
「この道をまっすぐいけば、あの山頂の入り口がある。そこから登ればいい」
「ありがとうございます」
早速山頂へ向かうために歩き出したが、領主は姿が見えなくなるまで見送ってくれていた。
長いこと見送られるというのは今まで経験がなく、なんだか気恥ずかしくなり口元がゆるみそうで手で塞いだ。
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