黒ウサギの雲の向こう

 昔々の森のなか。そこには世にも不思議な、人語を話すという黒ウサギが住んでいました。

 そのウサギは森で唯一の黒い毛をもち、ほかの白うさぎ達からはからかわれ、忌み嫌われる対象となっていました。
 黒ウサギは、一匹ぼっちで過ごす毎日でした。

 ある日、人の言葉を使っているところを悪知恵の働く白うさぎに見つかってしまった黒ウサギは、その白うさぎから「仲間になってほしい」との誘いを受けます。
 しかし、白うさぎ達の仲間になるための条件というのは、村から食料を盗むために黒ウサギに人語を話す特技を使って村人を騙してほしいとのことでした。
 人語を話す特技を悪用することに腹を立てた黒ウサギでしたが、反面いつも孤独という寂しい時間を過ごすなか、ずっと仲間という存在を欲していた強い思いもありました。
 黒ウサギは悩んだ末、嫌々ながらも白うさぎの条件を飲むことにしました。
 
 村での盗みを終え森への帰路につく道すがら、黒ウサギはある家で目の見えない若い女性、トツナと出会いました。

 その女性にウサギの姿を見られる心配がないと安心した黒ウサギは、得意の人語を使ってトツナと会話をしてみることにしました。
 時間を忘れ、トツナが知りたがっている『色』についての話をしているうちに、黒ウサギは、段々と心にかかっていた雲が晴れていくような穏やかな気持ちを感じていました。
 それからも黒ウサギは、村人や白うさぎ達の目を盗んでは、たびたびトツナに会いに行くようになりました。

 そんなある日、村で盗みを働くウサギ達がいるという噂をトツナは耳にすることとなりました……



 森で孤独な生活を送っていた黒ウサギと、目の見えない女性トツナとの交流を描いた作品となっております。
 つたない文章で紡いだ物語ではありますが、どうかお付き合いのほどよろしくお願いいたします。
24h.ポイント 0pt
0
小説 194,086 位 / 194,086件 児童書・童話 3,642 位 / 3,642件

あなたにおすすめの小説

それゆけ!しろくま号

七草すずめ
児童書・童話
これは、大人になったあなたのなかにいる、子供のころのあなたへおくるお話です。 サイドミラーはまるい耳。ひなた色をした体と、夜空の色をしたせなか。 しろくま号は、ヒナタとミツキを、どこへだって連れて行ってくれるのです。 さあ、今日はどんなところへ、冒険に出かける?

人形劇団ダブダブ

はまだかよこ
児童書・童話
子どもたちに人形劇をと奮闘する一人のおっちゃん、フミオ 彼の人生をちょっとお読みください

めちゃくちゃやさしい鬼もいる

未来の小説家
児童書・童話
みんながおもっている鬼ってどんな鬼? 鬼ってこわいとみんなおもってるかもしれないけれどやさしい鬼もかわいい鬼もいるんだよ。 ※第13回絵本児童書大賞エントリー作品です

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

おかあさんのおみやげ

天照てんてる
児童書・童話
「おかあさんのたんじょうび」続編 ある日、おかあさんはどこかへ行ってしまう。 帰ってきたおかあさんからのお土産とは――

【完結】王太子妃の初恋

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
カテリーナは王太子妃。しかし、政略のための結婚でアレクサンドル王太子からは嫌われている。 王太子が側妃を娶ったため、カテリーナはお役御免とばかりに王宮の外れにある森の中の宮殿に追いやられてしまう。 しかし、カテリーナはちょうど良かったと思っていた。婚約者時代からの激務で目が悪くなっていて、これ以上は公務も社交も難しいと考えていたからだ。 そんなカテリーナが湖畔で一人の男に出会い、恋をするまでとその後。 ★ざまぁはありません。 全話予約投稿済。 携帯投稿のため誤字脱字多くて申し訳ありません。 報告ありがとうございます。

ホタルまつりで会おうね

くまの広珠
児童書・童話
「なんでも屋さんのおじいさんにね、言われたの。 とっても、大事にしていたものと、おわかれしなきゃならないときは、ホタルまつりに行きなさい。 大事にしていた人には、ホタルまつりに行かなければならない、せきにんがあるんだって」 エブリスタにも掲載しました。 小学2年の少女ふたりの、ちょっと不思議で物悲しい、小さな冒険物語です。