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なんとなく寝不足で、将典の車に乗せられている。
朝になっても、お尻の違和感が残り、再度薬を塗る。軽い麻酔薬が入っているとかで、薬が効いている間は、マシなのだが・・・。
「将典さん・・・僕、本番無理そう・・・。」
もじ、とお尻を揺らして、気持ち悪いと訴える。
「大丈夫。指三本より、痛くないよ。」
「・・・嘘。」
「本当。指の骨がごつごつ当たる感触も、本番はないし。
案外入っちゃうと思うよ。」
「入ったとして、痛いに決まってるじゃないですか。」
「慣れないうちはね。・・・何度でも抱くよ。気持ちよくなるまでね。」
「ならないと思います。」
「未知、してる時みたいに、甘えた声聞かせて?敬語、やめようよ。」
言われて赤面する。
「や・・・だ。」
「うん。可愛い。」
可愛いと言われ、そういうのが好きなら、とちらりと思う。
「将典さん、まだまだ遠い?」
かれこれ一時間は走っている。目的のショップはどこにあるのか。
今日は、ジュエリーの工房を見に行くことにしたのだが、本当は日曜は休みにしているとかで、将典だから、と特別に出てきてもらっている。
「待ち合わせの時間、大丈夫?」
「大丈夫。あと十分くらいで着くよ。」
ホッと胸を撫でおろす。約束は十時半。デザイナー兼職人さんだそうで、詰めた話ができそうだと思う。イメージがうまく伝わるといいのだが。
そうこうしているうちに、車は小さなショップの駐車場へと入っていった。
「お店の方は開いてるから、ちょっと覗かせてもらう?」
「うん。」
意識して、敬語をやめてみる。気付いているのかいないのか、将典は、嬉しそうに店の中へと入っていった。
店内は明るく、いくつかのショーケースが並んでいる。ジャンルごとに分かれているようだった。将典が迷わず指輪のケースを見に行ったので、慌ててしまう。
「将典さん、こういうのって、普通の男女のカップルが買うものでしょう?」
場違いでは?と目で訴える。
「デザイナーさんは偏見ない人、っていうかこっち寄りの人。
だから心配しなくていいよ。」
何のためにここにしたと思ってるの?と問い返される。
「そろそろ工房の方行ってみようか。」
と、将典が手を取って歩き出す。
他にもお客さんいるのに・・・。
恥ずかしくなって、視線を足元に縋らせた。
工房には、約束の時間にデザイナーと思われる人が到着していた。細身の男性だ。
「どうも、お久しぶりです。樺山さん。」
相手の方が気付いて声をかけてくれた。
「お久しぶりです五十畑さん。その後順調そうで何よりです。」
「ありがとうございます。」
と、挨拶を交わし、デザイナーは自分の方を見た。
「彼が樺山さんの?」
「花田未知です。こんにちは。」
の?なんだろうと思いながら、名乗って挨拶をする。それは顔に出たようで。
「ハニー?子猫ちゃん?」
「強いて言うなら、婚約者ですかね。」
「ちょ、将典さん!?」
初対面の人に、なんて紹介の仕方だと憤る。将典は、いたって真面目な顔で、それで指輪を作りに、と改めた。
「なるほどね。確かにほかの店には連れていけないわ。」
どうぞ、と工房の方へ案内される。二階への階段へと促され、上るとミーティングルームのようなものがあった。椅子を勧められ、そわそわと腰かける。
「既存のデザインの中から選んでもらうか、まったく新しく作るのか・・・どうしたいの?」
「気に入ったのがあれば、既存のデザインの中からでもいいです。」
答えると、五十畑は分厚いデザインブックを持ってきた。
「マリッジリングはこの辺かな。」
タグのついたページをめくられる。普段付けられるような、シンプルなデザインの指輪のページだった。
「翡翠を使いたいんですが。」
「翡翠?どうして?」
「未知の家は、翡翠堂と言う古書店をしてるんです。でも、来年の三月に取り壊しが決まっていて。思い出の場所だから、何か残るものをと。」
将典がかいつまんで説明する。
「石はあるの?」
「将典が、ポケットからハンカチに包んだ翡翠を取り出した。」
楕円形のそれは、さくらんぼ大だ。綺麗だったが・・・。
「二つにしちゃっていいの?」
「一つを割るから意味があるっていうか・・・。」
なんとなくそう思って、大丈夫、と頷いた。
「要望としては、リングの裏に石を入れてほしくて。あと、日付と・・・。」
「お互いの名前ね!」
五十畑はそう言って素敵ねぇ、と呟いた。
デザインブックをめくっていると、理想に近いリングがあった。
「あ、これ。こういう感じの。」
「あぁ。なるほど。」
将典が覗き込む。
「でもこれだと、石が少しもったいないかな?」
確かに。入っているのは、ごく小さい石だ。持ってきた翡翠を加工するとなると、もったいないかもしれない。
「石はこちらで手配するのじゃダメなの?」
出来れば、祖母の石を使いたいが・・・。
悩んでいると、五十畑が別のページをめくった。ペンダントトップだ。楕円に他の石をあしらった華やかなものだが。
「こういう感じの、もっと男らしい感じに加工して、皮ひもでも通したら割とカジュアルに使えると思うの。石を縦半分にすればロスも出ないし。」
「将典さん、どうしても指輪がいいですか?現実問題結婚しないのに指輪はずっとつけていられるわけじゃないし。こっちなら服の下につけていられますよ。」
「片方はこれで、もう片方をネクタイピンとカフスにしてもいいかも。有効活用した方が、石も喜ぶわ。」
ピアスでも開けてたらそれもいいけど、と五十畑が耳に触れた。びく、と逃げてしまう。耳に穴は開けていない。
将典は、あごに手を置いて唸っていた。
「指輪は、じゃぁそれはそれで用意しよう。けじめだからね。
翡翠は、思い出の品として作り替えるのもいいかもね。」
イメージしてきたものとはだいぶ違ったものになりそうで、もう想像力の限界だった。
「将典さん、お任せでお願いする?」
「そうしようか。五十畑さん、それで大丈夫ですか?二人分になるように。」
「任せておいて。男っぽいものでいいのよね?」
「・・・もちろんです。」
工房を後にして、車の中。
「ね?理解ある人だったでしょう?」
と将典がうそぶく。
「理解があるというか・・・完全におねぇの人だったじゃないですか。」
「あー敬語戻ってるー。」
ぶーぶーと将典がため息する。
「そう簡単に、慣れないよ・・・。」
「頑張って!未知とはもっと近づきたい。」
将典は貪欲だ。
「・・・指輪、も買うの?」
「うん。けじめだからね。未知とはまだ付き合い短いし、たった半年で同棲初めて、そのままお嫁さんにしようって言うんだから、買わせて。未知の親御さんにも・・・挨拶しないとなぁ。うちにも来てくれる?」
行ったとして、なんて紹介する気なんだろう?
「行くのは・・・いいけど。来てもいいけど・・・」
「なんて言おうかね?」
将典は楽しそうだ。
「まぁ・・・実際問題、土地に買い手がつくのはいいことだと思うよ。未知のお父さんもきっと喜ぶよ。あとはいくらで売るつもりなんだろうかだねぇ。」
「安くしてって言ったら、おじさんたちに怒られそうだなぁ。」
「そうだね。地価相場調べておかなくちゃね。俺も、馬鹿を見る気はないし。」
鋭い目をした将典は、別人のようだった。仕事中の顔、なんだろうか。慈善事業をしてるんじゃないんだもんな。社長なんだから。社員を抱えて、社員の家族も抱えて・・・自分のことも抱えようとしてる。それができると信じて生きてるんだ。きっと。
かっこいい・・・。
なんでこんな人と付き合うことになったんだろう。
「将典さん、僕のこと・・・。」
好き?と聞こうとしてできないでいた。すると、信号で止まった将典が、こちらに視線を向けて、好きだよ、と返した。
小さく、僕も、と言うのが精いっぱいだった。
こんな情けない自分を、好きになってくれてありがとう。
いつか来るんだろうか。胸を張って、将典の隣にいる未来。
車の窓に向かって、そっとため息すると、窓に小さな曇りができた。
逃げ出したいような、連れ去ってほしいような、複雑な心境だった。
途中、お腹が空いたでしょう、とイタリアンのレストランに寄った。
「ここはピザが美味しいよ。石窯で焼いてる。」
「もしかしてここも、将典さんの仕事先ですか?」
「わかる?若いころに、初めて一人でやらせてもらった店なんだ。今も行列で嬉しいよ。」
お勧めは、マルゲリータとクワトロフォルマッジ、とオーダーする。
「飲物なんにする?」
「ジンジャーエールで。」
「ビール飲みたいけど・・・ノンアルコールでいいや。」
甘くない炭酸が飲みたかったようだった。
「僕、運転できないですから、我慢してください。」
「どうして?免許はあるんでしょ?」
いずれは車買いたいね、と、とんでもないことを言ってくる。
「ムリです。」
「どうして?あ、敬語ー。」
「うー・・・。多分、僕の収入だと買っても維持できないよ。
ローンだって払いきれるかどうか。」
「俺が買って、俺に返すのじゃダメ?」
「税金とか・・・。」
未知は堅実だなぁと、将典がため息する。
「現実を見てるだけです。必要ないし。」
「オレのマンションに来るなら、買い物ちょっと不便だよ?」
「えっ?」
「えっ?じゃないでしょう?翡翠堂を建て替える間、君、どこに住むつもりなの?」
普通に実家に帰るつもりでいましたと、言える雰囲気ではなく・・・。でも・・・。
「実家に帰ろうかなって・・・。」
「俺を一人にするの?」
案の定将典は、捨てられる寸前の犬の顔だ。
そこに、ピザと飲み物が届く。
ジンジャーエールを一口し、一呼吸おいて、諭すように口を開いた。
「その間に、両親説得しようかなって・・・。僕、まだ一人の稼ぎで生きてるわけじゃないんで。両親にとってはまだまだ子供で。それが突然、将典さんと新居で同棲しますなんて言い出したら、どうなるか・・・。僕はまだ、人として未熟なので。」
将典は、ふーっとため息した。
「生活費、気にしてるんだ?」
「気にしますよ。」
「わがままだから、聞き流してね。君がお嫁さん、っていうかハウスキーパー兼お店番してくれたら、その分給料出すって言ったらどうする?」
「どうするってそんなの・・・。」
今の生活と、何ら変わりないじゃないか。将典を待つ間、家に一人でいるのは孤独だ。
「将典さん、まだお店あきらめてないの?」
「本当は、どこにもやらずに、ただ家に閉じ込めておきたい。でも、それじゃぁ退屈でしょう?だから、お店があった方が、まだいいかなって。」
「・・・僕も外で働きたい・・・。」
もっとたくさんの人と、接する機会が欲しいのに。
涙腺が緩む。
将典は、閉じ込めておきたいなんて思ってるんだ・・・。
大丈夫なのかな。このまま一緒にいて。
時々、将典が怖い。
「うん。わかってる。未知の可能性だもんね。潰したら駄目だよね。
だからね、俺のわがままだから、聞かなかったことにしていいよ。
ピザ・・・食べよ?冷めると美味しくない。」
本当にわかってくれているのだろうか。わかったうえで我慢してくれているのだろうか。
我慢しながら一緒にいる関係って、そもそも長続きするのかな・・・。
「うん。」
食事を促す将典に、頷きはすれど手が伸びない。お腹は空いているはずなのに。
「未知、ごめんね?」
「・・・うん。」
ほんとにごめんって思ってる?
将典の瞳に問いかける。その瞳が、少しだけ伏せられて、将典が吐息する。
「未知、言いたいことは言っていいよ。でないとうまくやれない。」
「うん。」
言わないのって、言えないのって、悪いことだよね。
どうしたらいいんだろう?
このまま同棲を始めるとしたって、どうしたって立場の強い将典に、対等に発言できようはずもない。
将典は強い。
そこに惹かれるのは、自分があまりにも弱いから・・・。
将典が自分を守ろうとするのは、弱いから。
強くなりたいのに、将典が羽を摘む。翡翠堂を続けるということは、そういうこと。
「枷になったらだめだって、言ってくれたのに。」
「未知のこと、無理やり俺のパートナーにしてしまったからね。それって、世間的にはどういう目で見られるか、わかる?」
ゆくるかぶりを振る。
「偏見は根強いから・・・そういうものにさらしたくないって、あらためて思っちゃったんだよ。未知、外に出て、隠し通せる?」
「隠した方がいいの?」
「世の中が、これからどうなるかは・・・俺にもわからないけど・・・。今はまだ、隠していて。未知が狩られたりしたら、死んでも詫びきれない。」
将典はそう言って、冷めたピザを齧った。
「それなのに・・・指輪を買うの?」
「持っていてくれるだけでいいんだ。けじめだから。俺と未知をつなぐ絆のあかしだから。」
将典は、ことあるごとに、けじめだからと口にする。それはつまり、口に出すことで、自分と将典自身とのきずなを深めようとしていたのかもしれない。
「将典さん、大丈夫だよ。」
「未知、コトダマって知ってる?」
「言霊?」
将典が頷く。
「口にすることで、本当にできる。
だから、きっと大丈夫。」
将典には、本当にする力があるかもしれない。それには及ばなくとも。ならばその分、数で補えばいい。
「大丈夫。」
そっと口にして、ピザを手にした。グラスの氷が、カランと揺れた。
コインパーキングから、家までを送られる。そのまま返すのは忍びなかったので、将典を家に招いた。
「はー・・・やっぱり遠出は少し疲れるね。」
「お疲れ様です。」
と、冷蔵庫から麦茶を出して、注ぐ。それをお盆にのせて、座卓へと促した。将典は、畳にどっかりと座って、麦茶でのどを潤す。それについて、自分もグラスに口を付けた。
「抱きたいな・・・。」
将典が、口の端を上げて笑いながら、こちらを伺う。
「疲れてるんじゃないんですか?」
「うーん・・・。そろそろいいかなって。」
「昨日の今日なんだけど。」
まだ、お尻の違和感がなんとなくあるような気がしている。
「だからだよ。柔らかいうちに、本番、いっとこう?」
うー・・・。
「まだ少し、怖いよ。」
「大丈夫。指より痛くないから。」
「ほんとに?」
うん、本当。と将典がにじり寄ってくる。
「えっ?ここで?」
「まさか。ね?アレ、してきて?」
アレ、とは三つ目の浣腸か・・・。
「こ、心の準備が・・・。」
「だよね。ちょっと言ってみただけ。」
と、将典が引き下がる。
「もう、びっくりさせないでくださいよ。」
「半分は本気。いつも、あわよくばと思ってるから。
いつでもいいよ。未知がしたくなったら言って?」
待ってるから、と将典が言う。こんなやり取りを、あと何回すればいいのか。ドキドキさせられてばかりだ。
「指・・・。」
「え?」
呟くと、将典が聞き返した。
「一本だけならすごく気持ちいいのに・・・。」
「だよね。未知、とろとろだもんね。」
言いながら、将典がクスクスと笑う。
「舐めながら指でかき混ぜると、すぐイキそうになっちゃうもんね。あれだけ感じてたら、本番も痛くなくて、すんなり入るよ。お腹の中、俺ので突いてあげる。」
耳元で囁くように言われて、ゾクリと腰にしびれが走った。
目をきつく閉じてやり過ごす。が、将典が、股間に手を伸ばした。
「未知、想像しただけで半立ち。」
可愛い。と耳を舐められる。濡れた音が鼓膜に響く。
撫でさすられると、股間はもっと硬くなった。将典にそうされるのは、気持ちがよくて、手を振り払ったりなどできなかった。いいように弄ばれて、先端が潤む。
「立てる?二階行こ?ここじゃなんだから。気持ちよくしてあげるよ。」
誘惑に、手を引かれて、しかし前かがみに歩き出す。そろそろと階段を登って、寝室へと連れてこられる。将典が押し入れから布団を出した。そこにへたり込んでしまう。
「腰抜けちゃった?」
「だって、こすれて・・・。」
「気持ちよくなっちゃったの?」
コク、と頷く。
「未知、敏感なんだね。いつもはどれくらいの頻度でするの?一人えっち。」
将典がとんでもないことを聞いてくる。恥ずかしくて、俯いていると、答えるまで触るの無しね、とニコニコしている。
「やだ・・・。」
「答えるのが?触ってもらえないのが?」
将典は上機嫌だ。嬉しそうに、体を後ろから抱き込んできた。
「どっちも・・・。」
「ふーん?」
ふっと耳に息を吹きかけられる。ぴくん、と体が震えた。
「耳も敏感。スイッチ入ったね。さぁて、どこまでしようかなー?」
「あ、だめ!今日は、アレ、してないから・・・その・・・。」
「指入れちゃ駄目?未知のだったら全然嫌じゃないよ?」
それにその状態じゃ無理でしょ?と耳元で囁く。
「やだ。おねがい・・・。なんでもするから、指入れちゃだめ・・・。」
「なんでもしちゃうの?」
コクコクと頷く。
将典はしばらく考えて、じゃぁシックスナインってわかる?と問うてきた。小さく頷くと、じゃぁ横向きでね、と布団に転がった。
わかるけれど、この身長差でうまくできるのかな。
もじもじしていると、将典がこっち、と足首を掴んで引っ張った。へた、と体が崩れて、目の前に将典の股間。
「ファスナーおろして、出してみて?」
言われた通り、チリチリとファスナーを降ろし、半立ちの将典を下着の中から引っ張り出す。今日は、お風呂にも入っていない。口にするのは少し抵抗があった。
将典の匂い・・・。
無意識に嗅いで、ふーっと吐息した。
「いいね。そそられる・・・。」
将典は、それだけで中心を固くした。
「手で持って、先、舐めてみて?できる?」
頷いて、先端をぺろ、と舐めてみた。何の味だろうか。しょっぱい。ぺろぺろとそれを舐めとっていると、ぷく、と鈴口に蜜がたまった。ちゅ、と吸い上げると。将典がぴくっと揺れた。
「かぁわいい・・・。未知、そんなえっちなことできちゃうんだー?」
将典はまた、いいね、と繰り返した。
精液を飲んだのだ。いまさら先走りなどで動揺するのも変かと思った。ぴちゃぴちゃと音を立てて、将典の先端をしゃぶる。そうしているうちに、触れられていない自分のものがうずいて腰が揺れ始めた。なんだか、体の奥もずくずくする。将典が、そっと袋に触れた。タプタプと弄んでいる。秘部と、袋の間、会陰のあたりを、指先でもみこまれた。
「んんっ?!」
じーんと中に響く快感。将典はそこを、強弱をつけてもみ始めた。
「んっ・・・ぅぅっ!」
「気持ちいい?痛くない?」
問われて、気持ちいい、と頷く。将典の顔の方を見ると、自分のペニスが透明な糸を引いていた。
「前立腺って、外からでもいじれるんだよね。でも、足りないでしょう?」
足りないと言ったら、中を直接弄るつもりだ。
プルプルと頭を振って、それはやだ、と伝える。将典は。ふーんと笑って、秘部をつついた。
「未知の可愛いお尻丸見え。指入れちゃだめなら、舐めちゃおうかな?」
「っ!それはダメ!」
「なんで?」
「・・・お風呂入ってないから・・・。」
ごにょと、答える。すると、今度は将典がそこを指で押し始めた。
「濡らさないと入らないよ?」
「入れちゃだめ。」
「気持ちいいよ?」
「今日はだめ。」
かたくなだなぁ、と将典が舌を伸ばした。ぺろ、とペニスの先を舐められて、腰が砕けそうになる。
「んうっ!」
「気持ちいい?」
思わず、将典が口からはみ出してしまった。
将典が、窮屈そうな体勢で舐めてくれる。そのたびに、喉の奥から嬌声が上がり、将典を舐めるのがおろそかになってしまう。将典は気にも留めない様子で、ぺろぺろと舐めた。合わせるように、会陰が押される。それだけで、もう高まってくる射精感。イキそうになってくる。ふり、と腰を振ると、将典が口を放した。
「指入れてあげたいなー。イキそうなんでしょう?最高に気持ちいいよ?」
「んーんー。」
だめ、と伝えたいのに、将典っは強引だ。つん、と後口をつつく。びくん、と体が逃げた。危うく、将典を噛みそうになって、口を放す。
「もう!噛んじゃうから!」
「未知が噛んだくらいじゃ、ちぎれないよ。」
「ケガさせちゃいそう。」
言ってる間にも、ペニスは最後の刺激を待ちわびて、ぴくぴくと震えている。
「将典さん、イかせて・・・。」
「こっちはだめ?」
唾液で濡れた指で、秘部をぬるりと撫でられた。
「だめ・・・。」
しょうがないなと、将典がクスクス笑う。
「じゃぁまた今度ね?」
言うが早いか、将典が竿を舐めた。ひく、とペニスが腹にくっつく。舐めにくいからこっちおいでと、呼ばれて、正面に座らされる。将典は身をかがめて、ぱくりと咥えた。口の中は温かく、ぬめぬめとしている。将典はそれを、喉の奥まで招き入れた。
「あぁっ!」
深く呑み込まれて、舌で余すとこなく舐められる。少し苦しそうに寄せられた眉。その表情が、快感を加速させる。
「あ、だめ・・・だ、め・・・。も、でる!」
まるで、いいよと言うように、裏側を舌先で擦られる。
「あっ、あっ、あっ、あぁぁ・・・んっ。」
もう我慢できない。
「あ、でるぅ!はなして、だめ、ぁ、あん!も、あ。
やぁぁぁぁっ!」
将典は、口で受け止めると、出してと言う間もなく、飲み込んでしまった。
「さすがに薄いね。」
手の甲で口元を拭うと、将典が笑う。
「良かった?」
コク、と頷くが、将典はまだだ。
「将典さんのも・・・。」
「してくれるの?」
「うん。」
同じようにはできないが。胡坐をかいた将典のそれに、舌を這わせる。先端を口に含み、咥えきれない分を一生懸命手で愛撫した。
「んっ・・・んっ・・・。」
「未知可愛い。」
ちら、と上目遣いに将典をうかがう。
気持ちいいかな・・・?
やがて、ぴく、ぴく、と将典のそれがふるえる。たくましい腿に力がこもる。吐息と共に、体をこわばらせたり、弛緩させたりしながら、将典は楽しんでいるようだった。
あごがだるくなってきたころ、頭に手を添えられる。
「そのまま舌で、尿道擦って。」
鈴口の中にまで舌を入れると、将典は小さく、くっと呻いた。
痛くないのかな・・・。こうされるのが好き?
そっと、敏感そうなその部分に何度か舌先を潜り込ませる。すると、将典が出すよ、と頭を押さえた。
「んっ!?」
こぷぷ、と口の中が将典の放ったもので満たされる。口を放して、受け止めたそれを飲み下した。
二回目・・・。
精液を飲むなんて、たやすいことではないんだけど・・・。
将典のだから。
将典が、どこからともなくティッシュの箱をくれる。数枚抜き取って、口の周りと、手を拭った。精液と唾液の匂い。
まだ、放埓の余韻でふわふわしている。
「未知、覚えるの早いなぁ。」
気持ちよかった、と頭をなでなでされる。いい子いい子と褒められて、恥ずかしくて俯く。
「良かったんなら、良かったです。」
と、ごにょと伝える。
「未知、イクときすごい可愛い声出すの。もう、それだけで俺やばかった。」
今度こそ、耳まで熱くなる。
「感想言うのやめません?恥ずかしい・・・。」
「ふふ。今度は指で中、かき混ぜてあげるね。未知が意外と気にしいで困ったもんだ。俺は全然嫌じゃないのに。」
「駄目です。絶対駄目!」
「あ、未知。しばらく、痛くなくても薬使ってて。お尻が柔らかくなるから。切れたり裂けたり・・・させるつもりはないけど、柔らかいとお互い楽しめるから。」
次は本番、と暗に言われて、怖くなる。そういうものなのかと思いつつ、頷いた。
朝になっても、お尻の違和感が残り、再度薬を塗る。軽い麻酔薬が入っているとかで、薬が効いている間は、マシなのだが・・・。
「将典さん・・・僕、本番無理そう・・・。」
もじ、とお尻を揺らして、気持ち悪いと訴える。
「大丈夫。指三本より、痛くないよ。」
「・・・嘘。」
「本当。指の骨がごつごつ当たる感触も、本番はないし。
案外入っちゃうと思うよ。」
「入ったとして、痛いに決まってるじゃないですか。」
「慣れないうちはね。・・・何度でも抱くよ。気持ちよくなるまでね。」
「ならないと思います。」
「未知、してる時みたいに、甘えた声聞かせて?敬語、やめようよ。」
言われて赤面する。
「や・・・だ。」
「うん。可愛い。」
可愛いと言われ、そういうのが好きなら、とちらりと思う。
「将典さん、まだまだ遠い?」
かれこれ一時間は走っている。目的のショップはどこにあるのか。
今日は、ジュエリーの工房を見に行くことにしたのだが、本当は日曜は休みにしているとかで、将典だから、と特別に出てきてもらっている。
「待ち合わせの時間、大丈夫?」
「大丈夫。あと十分くらいで着くよ。」
ホッと胸を撫でおろす。約束は十時半。デザイナー兼職人さんだそうで、詰めた話ができそうだと思う。イメージがうまく伝わるといいのだが。
そうこうしているうちに、車は小さなショップの駐車場へと入っていった。
「お店の方は開いてるから、ちょっと覗かせてもらう?」
「うん。」
意識して、敬語をやめてみる。気付いているのかいないのか、将典は、嬉しそうに店の中へと入っていった。
店内は明るく、いくつかのショーケースが並んでいる。ジャンルごとに分かれているようだった。将典が迷わず指輪のケースを見に行ったので、慌ててしまう。
「将典さん、こういうのって、普通の男女のカップルが買うものでしょう?」
場違いでは?と目で訴える。
「デザイナーさんは偏見ない人、っていうかこっち寄りの人。
だから心配しなくていいよ。」
何のためにここにしたと思ってるの?と問い返される。
「そろそろ工房の方行ってみようか。」
と、将典が手を取って歩き出す。
他にもお客さんいるのに・・・。
恥ずかしくなって、視線を足元に縋らせた。
工房には、約束の時間にデザイナーと思われる人が到着していた。細身の男性だ。
「どうも、お久しぶりです。樺山さん。」
相手の方が気付いて声をかけてくれた。
「お久しぶりです五十畑さん。その後順調そうで何よりです。」
「ありがとうございます。」
と、挨拶を交わし、デザイナーは自分の方を見た。
「彼が樺山さんの?」
「花田未知です。こんにちは。」
の?なんだろうと思いながら、名乗って挨拶をする。それは顔に出たようで。
「ハニー?子猫ちゃん?」
「強いて言うなら、婚約者ですかね。」
「ちょ、将典さん!?」
初対面の人に、なんて紹介の仕方だと憤る。将典は、いたって真面目な顔で、それで指輪を作りに、と改めた。
「なるほどね。確かにほかの店には連れていけないわ。」
どうぞ、と工房の方へ案内される。二階への階段へと促され、上るとミーティングルームのようなものがあった。椅子を勧められ、そわそわと腰かける。
「既存のデザインの中から選んでもらうか、まったく新しく作るのか・・・どうしたいの?」
「気に入ったのがあれば、既存のデザインの中からでもいいです。」
答えると、五十畑は分厚いデザインブックを持ってきた。
「マリッジリングはこの辺かな。」
タグのついたページをめくられる。普段付けられるような、シンプルなデザインの指輪のページだった。
「翡翠を使いたいんですが。」
「翡翠?どうして?」
「未知の家は、翡翠堂と言う古書店をしてるんです。でも、来年の三月に取り壊しが決まっていて。思い出の場所だから、何か残るものをと。」
将典がかいつまんで説明する。
「石はあるの?」
「将典が、ポケットからハンカチに包んだ翡翠を取り出した。」
楕円形のそれは、さくらんぼ大だ。綺麗だったが・・・。
「二つにしちゃっていいの?」
「一つを割るから意味があるっていうか・・・。」
なんとなくそう思って、大丈夫、と頷いた。
「要望としては、リングの裏に石を入れてほしくて。あと、日付と・・・。」
「お互いの名前ね!」
五十畑はそう言って素敵ねぇ、と呟いた。
デザインブックをめくっていると、理想に近いリングがあった。
「あ、これ。こういう感じの。」
「あぁ。なるほど。」
将典が覗き込む。
「でもこれだと、石が少しもったいないかな?」
確かに。入っているのは、ごく小さい石だ。持ってきた翡翠を加工するとなると、もったいないかもしれない。
「石はこちらで手配するのじゃダメなの?」
出来れば、祖母の石を使いたいが・・・。
悩んでいると、五十畑が別のページをめくった。ペンダントトップだ。楕円に他の石をあしらった華やかなものだが。
「こういう感じの、もっと男らしい感じに加工して、皮ひもでも通したら割とカジュアルに使えると思うの。石を縦半分にすればロスも出ないし。」
「将典さん、どうしても指輪がいいですか?現実問題結婚しないのに指輪はずっとつけていられるわけじゃないし。こっちなら服の下につけていられますよ。」
「片方はこれで、もう片方をネクタイピンとカフスにしてもいいかも。有効活用した方が、石も喜ぶわ。」
ピアスでも開けてたらそれもいいけど、と五十畑が耳に触れた。びく、と逃げてしまう。耳に穴は開けていない。
将典は、あごに手を置いて唸っていた。
「指輪は、じゃぁそれはそれで用意しよう。けじめだからね。
翡翠は、思い出の品として作り替えるのもいいかもね。」
イメージしてきたものとはだいぶ違ったものになりそうで、もう想像力の限界だった。
「将典さん、お任せでお願いする?」
「そうしようか。五十畑さん、それで大丈夫ですか?二人分になるように。」
「任せておいて。男っぽいものでいいのよね?」
「・・・もちろんです。」
工房を後にして、車の中。
「ね?理解ある人だったでしょう?」
と将典がうそぶく。
「理解があるというか・・・完全におねぇの人だったじゃないですか。」
「あー敬語戻ってるー。」
ぶーぶーと将典がため息する。
「そう簡単に、慣れないよ・・・。」
「頑張って!未知とはもっと近づきたい。」
将典は貪欲だ。
「・・・指輪、も買うの?」
「うん。けじめだからね。未知とはまだ付き合い短いし、たった半年で同棲初めて、そのままお嫁さんにしようって言うんだから、買わせて。未知の親御さんにも・・・挨拶しないとなぁ。うちにも来てくれる?」
行ったとして、なんて紹介する気なんだろう?
「行くのは・・・いいけど。来てもいいけど・・・」
「なんて言おうかね?」
将典は楽しそうだ。
「まぁ・・・実際問題、土地に買い手がつくのはいいことだと思うよ。未知のお父さんもきっと喜ぶよ。あとはいくらで売るつもりなんだろうかだねぇ。」
「安くしてって言ったら、おじさんたちに怒られそうだなぁ。」
「そうだね。地価相場調べておかなくちゃね。俺も、馬鹿を見る気はないし。」
鋭い目をした将典は、別人のようだった。仕事中の顔、なんだろうか。慈善事業をしてるんじゃないんだもんな。社長なんだから。社員を抱えて、社員の家族も抱えて・・・自分のことも抱えようとしてる。それができると信じて生きてるんだ。きっと。
かっこいい・・・。
なんでこんな人と付き合うことになったんだろう。
「将典さん、僕のこと・・・。」
好き?と聞こうとしてできないでいた。すると、信号で止まった将典が、こちらに視線を向けて、好きだよ、と返した。
小さく、僕も、と言うのが精いっぱいだった。
こんな情けない自分を、好きになってくれてありがとう。
いつか来るんだろうか。胸を張って、将典の隣にいる未来。
車の窓に向かって、そっとため息すると、窓に小さな曇りができた。
逃げ出したいような、連れ去ってほしいような、複雑な心境だった。
途中、お腹が空いたでしょう、とイタリアンのレストランに寄った。
「ここはピザが美味しいよ。石窯で焼いてる。」
「もしかしてここも、将典さんの仕事先ですか?」
「わかる?若いころに、初めて一人でやらせてもらった店なんだ。今も行列で嬉しいよ。」
お勧めは、マルゲリータとクワトロフォルマッジ、とオーダーする。
「飲物なんにする?」
「ジンジャーエールで。」
「ビール飲みたいけど・・・ノンアルコールでいいや。」
甘くない炭酸が飲みたかったようだった。
「僕、運転できないですから、我慢してください。」
「どうして?免許はあるんでしょ?」
いずれは車買いたいね、と、とんでもないことを言ってくる。
「ムリです。」
「どうして?あ、敬語ー。」
「うー・・・。多分、僕の収入だと買っても維持できないよ。
ローンだって払いきれるかどうか。」
「俺が買って、俺に返すのじゃダメ?」
「税金とか・・・。」
未知は堅実だなぁと、将典がため息する。
「現実を見てるだけです。必要ないし。」
「オレのマンションに来るなら、買い物ちょっと不便だよ?」
「えっ?」
「えっ?じゃないでしょう?翡翠堂を建て替える間、君、どこに住むつもりなの?」
普通に実家に帰るつもりでいましたと、言える雰囲気ではなく・・・。でも・・・。
「実家に帰ろうかなって・・・。」
「俺を一人にするの?」
案の定将典は、捨てられる寸前の犬の顔だ。
そこに、ピザと飲み物が届く。
ジンジャーエールを一口し、一呼吸おいて、諭すように口を開いた。
「その間に、両親説得しようかなって・・・。僕、まだ一人の稼ぎで生きてるわけじゃないんで。両親にとってはまだまだ子供で。それが突然、将典さんと新居で同棲しますなんて言い出したら、どうなるか・・・。僕はまだ、人として未熟なので。」
将典は、ふーっとため息した。
「生活費、気にしてるんだ?」
「気にしますよ。」
「わがままだから、聞き流してね。君がお嫁さん、っていうかハウスキーパー兼お店番してくれたら、その分給料出すって言ったらどうする?」
「どうするってそんなの・・・。」
今の生活と、何ら変わりないじゃないか。将典を待つ間、家に一人でいるのは孤独だ。
「将典さん、まだお店あきらめてないの?」
「本当は、どこにもやらずに、ただ家に閉じ込めておきたい。でも、それじゃぁ退屈でしょう?だから、お店があった方が、まだいいかなって。」
「・・・僕も外で働きたい・・・。」
もっとたくさんの人と、接する機会が欲しいのに。
涙腺が緩む。
将典は、閉じ込めておきたいなんて思ってるんだ・・・。
大丈夫なのかな。このまま一緒にいて。
時々、将典が怖い。
「うん。わかってる。未知の可能性だもんね。潰したら駄目だよね。
だからね、俺のわがままだから、聞かなかったことにしていいよ。
ピザ・・・食べよ?冷めると美味しくない。」
本当にわかってくれているのだろうか。わかったうえで我慢してくれているのだろうか。
我慢しながら一緒にいる関係って、そもそも長続きするのかな・・・。
「うん。」
食事を促す将典に、頷きはすれど手が伸びない。お腹は空いているはずなのに。
「未知、ごめんね?」
「・・・うん。」
ほんとにごめんって思ってる?
将典の瞳に問いかける。その瞳が、少しだけ伏せられて、将典が吐息する。
「未知、言いたいことは言っていいよ。でないとうまくやれない。」
「うん。」
言わないのって、言えないのって、悪いことだよね。
どうしたらいいんだろう?
このまま同棲を始めるとしたって、どうしたって立場の強い将典に、対等に発言できようはずもない。
将典は強い。
そこに惹かれるのは、自分があまりにも弱いから・・・。
将典が自分を守ろうとするのは、弱いから。
強くなりたいのに、将典が羽を摘む。翡翠堂を続けるということは、そういうこと。
「枷になったらだめだって、言ってくれたのに。」
「未知のこと、無理やり俺のパートナーにしてしまったからね。それって、世間的にはどういう目で見られるか、わかる?」
ゆくるかぶりを振る。
「偏見は根強いから・・・そういうものにさらしたくないって、あらためて思っちゃったんだよ。未知、外に出て、隠し通せる?」
「隠した方がいいの?」
「世の中が、これからどうなるかは・・・俺にもわからないけど・・・。今はまだ、隠していて。未知が狩られたりしたら、死んでも詫びきれない。」
将典はそう言って、冷めたピザを齧った。
「それなのに・・・指輪を買うの?」
「持っていてくれるだけでいいんだ。けじめだから。俺と未知をつなぐ絆のあかしだから。」
将典は、ことあるごとに、けじめだからと口にする。それはつまり、口に出すことで、自分と将典自身とのきずなを深めようとしていたのかもしれない。
「将典さん、大丈夫だよ。」
「未知、コトダマって知ってる?」
「言霊?」
将典が頷く。
「口にすることで、本当にできる。
だから、きっと大丈夫。」
将典には、本当にする力があるかもしれない。それには及ばなくとも。ならばその分、数で補えばいい。
「大丈夫。」
そっと口にして、ピザを手にした。グラスの氷が、カランと揺れた。
コインパーキングから、家までを送られる。そのまま返すのは忍びなかったので、将典を家に招いた。
「はー・・・やっぱり遠出は少し疲れるね。」
「お疲れ様です。」
と、冷蔵庫から麦茶を出して、注ぐ。それをお盆にのせて、座卓へと促した。将典は、畳にどっかりと座って、麦茶でのどを潤す。それについて、自分もグラスに口を付けた。
「抱きたいな・・・。」
将典が、口の端を上げて笑いながら、こちらを伺う。
「疲れてるんじゃないんですか?」
「うーん・・・。そろそろいいかなって。」
「昨日の今日なんだけど。」
まだ、お尻の違和感がなんとなくあるような気がしている。
「だからだよ。柔らかいうちに、本番、いっとこう?」
うー・・・。
「まだ少し、怖いよ。」
「大丈夫。指より痛くないから。」
「ほんとに?」
うん、本当。と将典がにじり寄ってくる。
「えっ?ここで?」
「まさか。ね?アレ、してきて?」
アレ、とは三つ目の浣腸か・・・。
「こ、心の準備が・・・。」
「だよね。ちょっと言ってみただけ。」
と、将典が引き下がる。
「もう、びっくりさせないでくださいよ。」
「半分は本気。いつも、あわよくばと思ってるから。
いつでもいいよ。未知がしたくなったら言って?」
待ってるから、と将典が言う。こんなやり取りを、あと何回すればいいのか。ドキドキさせられてばかりだ。
「指・・・。」
「え?」
呟くと、将典が聞き返した。
「一本だけならすごく気持ちいいのに・・・。」
「だよね。未知、とろとろだもんね。」
言いながら、将典がクスクスと笑う。
「舐めながら指でかき混ぜると、すぐイキそうになっちゃうもんね。あれだけ感じてたら、本番も痛くなくて、すんなり入るよ。お腹の中、俺ので突いてあげる。」
耳元で囁くように言われて、ゾクリと腰にしびれが走った。
目をきつく閉じてやり過ごす。が、将典が、股間に手を伸ばした。
「未知、想像しただけで半立ち。」
可愛い。と耳を舐められる。濡れた音が鼓膜に響く。
撫でさすられると、股間はもっと硬くなった。将典にそうされるのは、気持ちがよくて、手を振り払ったりなどできなかった。いいように弄ばれて、先端が潤む。
「立てる?二階行こ?ここじゃなんだから。気持ちよくしてあげるよ。」
誘惑に、手を引かれて、しかし前かがみに歩き出す。そろそろと階段を登って、寝室へと連れてこられる。将典が押し入れから布団を出した。そこにへたり込んでしまう。
「腰抜けちゃった?」
「だって、こすれて・・・。」
「気持ちよくなっちゃったの?」
コク、と頷く。
「未知、敏感なんだね。いつもはどれくらいの頻度でするの?一人えっち。」
将典がとんでもないことを聞いてくる。恥ずかしくて、俯いていると、答えるまで触るの無しね、とニコニコしている。
「やだ・・・。」
「答えるのが?触ってもらえないのが?」
将典は上機嫌だ。嬉しそうに、体を後ろから抱き込んできた。
「どっちも・・・。」
「ふーん?」
ふっと耳に息を吹きかけられる。ぴくん、と体が震えた。
「耳も敏感。スイッチ入ったね。さぁて、どこまでしようかなー?」
「あ、だめ!今日は、アレ、してないから・・・その・・・。」
「指入れちゃ駄目?未知のだったら全然嫌じゃないよ?」
それにその状態じゃ無理でしょ?と耳元で囁く。
「やだ。おねがい・・・。なんでもするから、指入れちゃだめ・・・。」
「なんでもしちゃうの?」
コクコクと頷く。
将典はしばらく考えて、じゃぁシックスナインってわかる?と問うてきた。小さく頷くと、じゃぁ横向きでね、と布団に転がった。
わかるけれど、この身長差でうまくできるのかな。
もじもじしていると、将典がこっち、と足首を掴んで引っ張った。へた、と体が崩れて、目の前に将典の股間。
「ファスナーおろして、出してみて?」
言われた通り、チリチリとファスナーを降ろし、半立ちの将典を下着の中から引っ張り出す。今日は、お風呂にも入っていない。口にするのは少し抵抗があった。
将典の匂い・・・。
無意識に嗅いで、ふーっと吐息した。
「いいね。そそられる・・・。」
将典は、それだけで中心を固くした。
「手で持って、先、舐めてみて?できる?」
頷いて、先端をぺろ、と舐めてみた。何の味だろうか。しょっぱい。ぺろぺろとそれを舐めとっていると、ぷく、と鈴口に蜜がたまった。ちゅ、と吸い上げると。将典がぴくっと揺れた。
「かぁわいい・・・。未知、そんなえっちなことできちゃうんだー?」
将典はまた、いいね、と繰り返した。
精液を飲んだのだ。いまさら先走りなどで動揺するのも変かと思った。ぴちゃぴちゃと音を立てて、将典の先端をしゃぶる。そうしているうちに、触れられていない自分のものがうずいて腰が揺れ始めた。なんだか、体の奥もずくずくする。将典が、そっと袋に触れた。タプタプと弄んでいる。秘部と、袋の間、会陰のあたりを、指先でもみこまれた。
「んんっ?!」
じーんと中に響く快感。将典はそこを、強弱をつけてもみ始めた。
「んっ・・・ぅぅっ!」
「気持ちいい?痛くない?」
問われて、気持ちいい、と頷く。将典の顔の方を見ると、自分のペニスが透明な糸を引いていた。
「前立腺って、外からでもいじれるんだよね。でも、足りないでしょう?」
足りないと言ったら、中を直接弄るつもりだ。
プルプルと頭を振って、それはやだ、と伝える。将典は。ふーんと笑って、秘部をつついた。
「未知の可愛いお尻丸見え。指入れちゃだめなら、舐めちゃおうかな?」
「っ!それはダメ!」
「なんで?」
「・・・お風呂入ってないから・・・。」
ごにょと、答える。すると、今度は将典がそこを指で押し始めた。
「濡らさないと入らないよ?」
「入れちゃだめ。」
「気持ちいいよ?」
「今日はだめ。」
かたくなだなぁ、と将典が舌を伸ばした。ぺろ、とペニスの先を舐められて、腰が砕けそうになる。
「んうっ!」
「気持ちいい?」
思わず、将典が口からはみ出してしまった。
将典が、窮屈そうな体勢で舐めてくれる。そのたびに、喉の奥から嬌声が上がり、将典を舐めるのがおろそかになってしまう。将典は気にも留めない様子で、ぺろぺろと舐めた。合わせるように、会陰が押される。それだけで、もう高まってくる射精感。イキそうになってくる。ふり、と腰を振ると、将典が口を放した。
「指入れてあげたいなー。イキそうなんでしょう?最高に気持ちいいよ?」
「んーんー。」
だめ、と伝えたいのに、将典っは強引だ。つん、と後口をつつく。びくん、と体が逃げた。危うく、将典を噛みそうになって、口を放す。
「もう!噛んじゃうから!」
「未知が噛んだくらいじゃ、ちぎれないよ。」
「ケガさせちゃいそう。」
言ってる間にも、ペニスは最後の刺激を待ちわびて、ぴくぴくと震えている。
「将典さん、イかせて・・・。」
「こっちはだめ?」
唾液で濡れた指で、秘部をぬるりと撫でられた。
「だめ・・・。」
しょうがないなと、将典がクスクス笑う。
「じゃぁまた今度ね?」
言うが早いか、将典が竿を舐めた。ひく、とペニスが腹にくっつく。舐めにくいからこっちおいでと、呼ばれて、正面に座らされる。将典は身をかがめて、ぱくりと咥えた。口の中は温かく、ぬめぬめとしている。将典はそれを、喉の奥まで招き入れた。
「あぁっ!」
深く呑み込まれて、舌で余すとこなく舐められる。少し苦しそうに寄せられた眉。その表情が、快感を加速させる。
「あ、だめ・・・だ、め・・・。も、でる!」
まるで、いいよと言うように、裏側を舌先で擦られる。
「あっ、あっ、あっ、あぁぁ・・・んっ。」
もう我慢できない。
「あ、でるぅ!はなして、だめ、ぁ、あん!も、あ。
やぁぁぁぁっ!」
将典は、口で受け止めると、出してと言う間もなく、飲み込んでしまった。
「さすがに薄いね。」
手の甲で口元を拭うと、将典が笑う。
「良かった?」
コク、と頷くが、将典はまだだ。
「将典さんのも・・・。」
「してくれるの?」
「うん。」
同じようにはできないが。胡坐をかいた将典のそれに、舌を這わせる。先端を口に含み、咥えきれない分を一生懸命手で愛撫した。
「んっ・・・んっ・・・。」
「未知可愛い。」
ちら、と上目遣いに将典をうかがう。
気持ちいいかな・・・?
やがて、ぴく、ぴく、と将典のそれがふるえる。たくましい腿に力がこもる。吐息と共に、体をこわばらせたり、弛緩させたりしながら、将典は楽しんでいるようだった。
あごがだるくなってきたころ、頭に手を添えられる。
「そのまま舌で、尿道擦って。」
鈴口の中にまで舌を入れると、将典は小さく、くっと呻いた。
痛くないのかな・・・。こうされるのが好き?
そっと、敏感そうなその部分に何度か舌先を潜り込ませる。すると、将典が出すよ、と頭を押さえた。
「んっ!?」
こぷぷ、と口の中が将典の放ったもので満たされる。口を放して、受け止めたそれを飲み下した。
二回目・・・。
精液を飲むなんて、たやすいことではないんだけど・・・。
将典のだから。
将典が、どこからともなくティッシュの箱をくれる。数枚抜き取って、口の周りと、手を拭った。精液と唾液の匂い。
まだ、放埓の余韻でふわふわしている。
「未知、覚えるの早いなぁ。」
気持ちよかった、と頭をなでなでされる。いい子いい子と褒められて、恥ずかしくて俯く。
「良かったんなら、良かったです。」
と、ごにょと伝える。
「未知、イクときすごい可愛い声出すの。もう、それだけで俺やばかった。」
今度こそ、耳まで熱くなる。
「感想言うのやめません?恥ずかしい・・・。」
「ふふ。今度は指で中、かき混ぜてあげるね。未知が意外と気にしいで困ったもんだ。俺は全然嫌じゃないのに。」
「駄目です。絶対駄目!」
「あ、未知。しばらく、痛くなくても薬使ってて。お尻が柔らかくなるから。切れたり裂けたり・・・させるつもりはないけど、柔らかいとお互い楽しめるから。」
次は本番、と暗に言われて、怖くなる。そういうものなのかと思いつつ、頷いた。
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