翡翠堂の店主

結城 鈴

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 翌土曜は、将典が止まりに来る。布団や毛布を干して、早々に風呂掃除を終わらせた。あとは、洗濯が終わったらシーツを干して・・・。洗ってしまってはあるが、泊りに来ると言われると、洗うのが習慣になりそうだ。そしてそんな時にふと、お嫁さんかぁ、と思うのだった。
午後になり、『三時くらいに行きます。』とメールが来た。
それならばと、夕食の買い出しに向かう。最近将典は、食費とビール代を事前に渡してくるようになった。逼迫した家計の事情をわかってくれているのである。情けない話、翡翠堂の売り上げで、将典を食べさせるのは困難だった。仕送り分は、できるだけ手を付けずに残したいし。とはいえ古い家だ。光熱費は最近の設備が整った家よりもかかっているに違いなかった。
「新築にしたら減るのかなぁ。」
その頃には、自分も働いている予定、だ。将典は相変わらず、翡翠堂を残したいみたいだったが。
「建て替えちゃたら、翡翠堂は翡翠堂じゃなくなっちゃう気がするんだけどな・・・。」
独り言をしながら、自転車でスーパーに向かう道すがら、魚屋を覗く。マグロのいいのが入っていたら、刺身を考えていた。ご飯は炊けばいいとして、刺身ならあとは豆腐の味噌汁とサラダとビールでもあれば・・・。
「いらっしゃい!」
店の親父さんが声をかけてくれる。いい加減常連で、顔を覚えられていた。
「おじさん、マグロの美味しいのある?」
「トロ?赤身?」
「赤身で。」
将典も自分も、脂っこいものはあまり好まなかった。
「あるよ。どれくらい?」
「千円分くらい。刺身にしててもらえると助かります。スーパーの帰りに寄らせてもらうので。」
おじさんは、あいよ、と答えるとメモをした。
「前払いの方がいいですか?」
「帰りでいいよ。おにーちゃん常連だからサービスしとくね。」
「すみませんいつも。」
礼を言って、また自転車に乗る。将典の食事代は、大体一食千円くらいだった。自分の分で、スーパーの買い物を済ませるつもり。将典といると、夕食が豪華だった。
スーパーで買い物を済ませ、帰りに魚屋によると、サービスで、とホタテの稚貝を分けてくれた。酒蒸しにしようかと考える。おじさんに礼を言って、帰路についた。
 丁度三時くらい。将典が早いか、自分が早いか。そろそろ勝手口の合鍵を作ろうかと考えていた。
早いかな?
まだ、話すようになって一ヶ月くらいしかたってない。でもなんだか、将典といるのが、自然になってきている自分がいる。あまりにも近い距離感が、逆に心地いいのだ。将典のいうように、誰かに甘えたかったのだと、認めざるを得なかった。きっと、淋しかったのだ。毎日、一人で店を開けるのが。
 自転車で家に戻ると、丁度コインパーキングの方から歩いてくる将典が見えた。店の前を素通りして、将典の元に向かう。
「やぁ。未知、買い物?」
「はい。夕ご飯、お刺身です。」
「あーいいね。日本酒飲みたくなるね。」
将典は嬉しそうだ。良かった、と思い、自転車を押して歩き出す。
「将典さん、合鍵欲しいですか?」
「予備があるの?」
「多分、家のどこかにはあると思うんですけど。僕のは祖父が使っていたものなので。新しく作ろうかと。」
将典は、うーんと唸った。
「予備は必要だと思うけど、俺がもらっていいの?」
「あった方がいいかと思ったんですが・・・。」
もっと喜ぶかと思ったのに。将典の反応はいまいちだ。
「防犯の観点から言うと、鍵は複数作らない方がいいんだよね。」
「将典さんのこと、信用してるってことなんですけど?」
「・・・ありがとう。」
将典は嬉しそうに、空を見上げた。もうすっかり秋空だ。
店について、自転車を停め、荷物を勝手口から運び入れる。
刺身と、買ったものを冷蔵庫にしまい、将典に麦茶を出す。
「七時まで、お店あけてていいですか?二日も休みってわけにいかないから、三時まで休憩にしてあるんです。」
「あぁいいよ。ごめんね。・・・俺は何しようかなぁ。」
言いながら、バッグの中からタブレットを取り出す。
「何するんですか?」
カウンター越しに問いかけると、将典はタブレットの画面を見せてきた。
「参考になりそうな間取りとか見てて。やっぱり三階建てかなぁ。庭をどうしようか?草取り難しかったら、庭がなくてもいいかなーとか。そしたら、建物をもう少し奥に入れられるから、駐車場も作れそう。」
「も?」
「翡翠堂も。」
「あの・・・。翡翠堂って、基本年中無休でやってきたんです。だから、連休とかあっても、どこにも行けなくて。ゴールデンウイークとかも・・・。将典さん、そんな生活できますか?」
将典は少し考えた様だった。
「たまにはどこか、旅行とかも行きたいね。」
「翡翠堂、やるんだったら、それ、いけないです。」
将典はーうーんと唸った。
「その生活、おじいさんとおばあさんもしてたの?」
「お休みにするのは、晩年は病院に行く時くらいでした。祖母が、入院長かったので。お見舞いに行く日も、半日はお店開けたり。」
働き者だったんだねぇと将典が微笑む。
「もちろん、客足は今とそう変わらなくて・・・。でも、いつか来るだろうお客さんを、がっかりさせたら駄目だって。」
自分は、そんな祖父の姿勢を見習って、今まで来た。たった半年だけれど。それでも、それがどんなに大変かは、わかったつもりになっている。その生活を、将典にまで強いたくない。自分も、もう翡翠堂から逃げ出したい気持ちがあった。
将典と出会って、二人でどこかに行く楽しさを知ってしまったから・・・。もっと自由になりたいと思ってしまった。
口を閉ざしていると、将典が困ったような顔をした。
「土日は、俺とどこか行ったり、いちゃいちゃのんびり過ごしたいって・・・思ってる?」
かぁっと顔が熱くなる。
「いちゃいちゃはともかく・・・。そう思ってます。
それに、今は社会保険料、父の扶養にしてもらってますけど、今の収入じゃ、ここの税金も国保も払いきれません。一応、父名義になってるから、固定資産税とかも父のところに行ってますけど・・・。それでいいのかなって、思ってて。」
将典は黙ってうなずいた。
「半年後、解体して俺が買い取ったら、俺が払うんだもの。
何も心配することないよ。」
「一緒に住むのに?折半できるくらいの収入が得られる職に就きたいんです。」
「金銭的には助かるけど・・・未知にはお嫁さんでいてほしいな。養ってあげるって言ったら、嫌なんだもんね。」
それは・・・。楽がしたくて、将典と生活したいわけじゃない。
「最低限、生活費くらいは入れたいです。両親にも、今まで助けてもらった分、少しでも返したいし。正直、新卒逃してるから、必死で就活しないといけないかと思ってて。」
「未知は、まじめだね。あ、いい意味でだよ?そうか・・・。
翡翠堂が、未知の枷になるなら、考えないといけないね。」
枷・・・。
そうは思いたくないけれど、現実問題、将典に近づくためには、そうなのだ。会社の社長をしている将典とは、社会的身分が違いすぎて・・・。コンプレックスは否めなかった。今から就職しても、将典と同じ年に同じだけの収入がある保証なんてない。むしろ、ないだろうと思う。けれど、お荷物でいるのは嫌だった。
「将典さんごめんね。僕も、これでも男だから、本当は独り立ちしたい願望はあります。」
「でも、一緒に住んでくれるんでしょう?」
こくり、と頷いた。
「正社員じゃなくてもいいんです。将典さんのお世話もしたいから。ご飯作ったり、いろいろ・・・。それは楽しいから。」
「未知のご飯美味しいもんね。」
現状大したものは作れていないけれど。
「どんな仕事したいとか、ある?」
「バイトなら、土日休みのところがいいかなって。もしくは、土日に休みがとりやすいところ。将典さんと合わせられないのは困るから。」
将典は、また少し唸っていた。
「未知、包丁は使えるよね?」
「普通にですけど。」
「なら、うちの会社のビルに来る?確か、社員食堂が募集掛けてたと思う。パートだけど。」
将典の話はこうだ。将典の会社が入っているビルには、複数の会社と、社員食堂のテナントがいくつか入っていて、ランチタイムの十一時から午後四時まで食事を提供しているのだとか。仕込みがあるから、朝九時から、夕方六時までの仕事になるらしい。客足が薄くなる時間帯に、休憩はとれるようだった。
時給は千五十円。社会保険にも入れるらしい。手取りは、今の生活費とそう変わらないが、生活はできる。
でも・・・。
「それって、今でしょう?三月までは翡翠堂続けるつもりなんですけど・・・。」
「結構人の出入りが激しいから、来春も募集あると思う。
店長さんに話し通しておこうか?」
将典と同じビルで働けるのは魅力的だったし、給料も悪くない。出入りが激しいと言うのが少し気になるが。
「将典さんのコネだと、合わなかったときにやめにくくなりますから。」
「それもそうだね。」
そんなことを話しているうちに、鳩が四時を知らせた。
そろそろ、学生が帰りだす時間帯だ。お客さん、来ると良いな。そう思いながら、カウンターに向き直った。
将典は、またタブレットを見始める。そして、時間は過ぎていった。

 五時過ぎに、お米を研いで、夕ご飯の支度を始める。ご飯は七時に炊き上がるように、タイマーをセットした。そしてまた店番に戻る。今日は、いつも来てくれる女の子が立ち寄っただけで、お金にはならなそうだった。
将典は、ずっとタブレットを見ている。今度は求人広告を見ているようだった。
「ねぇ未知、面白いのがあったよ。」
「なんですか?」
カウンターに背を向けて、将典に向き直る。
「資格は特にいらないんだけど、児童館併設の図書室のパート。時給は安いけど、子供と本が好きな人募集だって。」
「そういうのって、女の人の仕事じゃ?」
面接行ってみたら?と、将典が提案する。
「本の仕事かぁ。」
「ここよりは出入りありそうだよ?」
子供図書館みたいな感じだろうか。確かに面白そうだ。扱う本は、絵本ばかりだろうが。
「僕今、年金も免除されてて・・・。それも払わないといけないから、できるだけ時給は高い方がいいです・・・。」
自分で言っていて、情けなくて泣きそうになる。去年までは、学生だったから免除になっていたけれど、今年は違う。
「じゃぁ、目指すはやっぱり正社員か。うちの会社で雇ってあげられればいいんだけど、来春の新卒は押さえちゃったしなぁ。」
「将典さん、公私混同良くないです。」
「ですよね。」
将典は首をすくませると、またタブレットとにらめっこを始めた。

 美味しいお刺身で、御飯を済ませ、洗い物をしていると、将典がそばまでやってきた。ふわ、とアルコールの香り。将典は、今日はビールを二本空けていた。自分は、軽くレモンサワーを一本。二人とも、酔ってはいなかったが、なんとなく気分がよかった。泡だらけの手で、追い払えないのをいいことに、将典がキスを求めてくる。軽く交わして、離れた。
「こういうの良いよね。新婚さんみたいで。」
将典は楽しそうだ。
「・・・今日も・・・その・・・しますか?」
浣腸はあと九個残っている。そのうちの一つを使いますか、とごにょごにょ聞いてみる。将典が、うんお願い、と言うので、どうやら今夜もえっちなことをするようだ。
「あの・・・今日はどこまで?」
「指が三本入ったらいいな。前回は二本で泣いてたからね。」
「ってことは、今日も指まで、ですか?」
少し拍子抜けして、ホッと吐息する。
「本番いきたい?まだちょっときついかと思うよ。なるべく気持ちよくしたいから、もう少し慣らそう?」
恥ずかしくて、小さくコクリと頷いた。
「今日もしてあげようか?」
と、お尻を撫でられて、ひゃんと変な声が出た。
「アレですか?・・・自分でしてみたいです。」
「してあげる楽しみがねー?」
「駄目です。」
未知のケチ、と将典が笑いながら去っていく。
「お風呂洗ってある?もう沸かす?」
「あ、じゃぁお願いしていいですか?」
将典は、はいよ、と応えると風呂場の方へと去っていった。今のうちにと洗い物を大急ぎで片づける。それが済んだら、和室の座卓を拭いて、明日のお米の準備をして・・・。
それからアレを・・・。
ちょっと憂鬱だが、体の中がきれいになるのは、気持ちよかった。案外嫌いじゃないのかも、と思う。もちろん、将典とえっちなことをしないのなら、自主的にしたりはしないと思うが。
将典の指が三本か・・・。
明らかに自分の指よりも太いそれは、二本でも痛みがあった。それを三本。三本目が入るなら、将典と本番もいけるんじゃないかと思う。
あれ?してみたいのかな、セックス。
もう、流れに任せてしまいたい自分もいて、戸惑う。男同士で、自分が入れられる方。苦痛はあるだろう。それでも・・・。
将典は初めから、体も欲しいと、欲求を隠さなかった。
それを承知の上で、お付き合いを了承したのだ。いまさら、待っては通用しないだろう。
風呂を沸かし始めた将典が戻ってくる。
「あ。ありがとうございます。じゃぁ僕ちょっとトイレに。」
「難しかったら言ってね。」
小さく頷いて、トイレに籠った。

 「んぅ・・・。」
差し込まれた指に、小さく呻いてしまう。女の子みたいな可愛い声では・・・きっとない。それでも将典は、機嫌よさそうに、濡れたペニスを舐めていた。
「は・・・あぁ・・・。」
気持ちいい。指は、体の奥の快楽を教えてくれる。中をいじられる行為にも、少しずつ慣れてくる。気持ちのいいところを擦られるうちに、嫌な感覚はなくなって、とろけるような快感が腰骨の中にたまってゆく。
将典は、イキそうになると手を緩め、快感を取り上げた。もう何度寸止めされているか。
「そろそろいいかなー。大分柔らかくなった。」
言いながら、ローションのボトルを開ける。パチ、と音がして、将典が指を濡らすのをぼんやりと見た。
痛くされるのかな・・・。
無意識に息を詰める。
「息、吐いてごらん。」
止めていた息を吐き出すと、合わせるように二本に増えた指が挿入された。
「ううっ・・・ぁぃ・・・いた・・・ぃ。」
「ごめんねーいたいねー・・・。」
宥めるように、将典がペニスを含む。吸われて、遠のきかけた快感の渦にまた落とされる。
「ぁ・・・おしり、やだぁ。」
イきたいのに、感覚がそこに集中して、痛みをやり過ごせない。
「馴染んできたら動かしてあげるね。」
「やだぁ・・・。」
可愛い声出すなぁ、と将典が笑う。
「入れたくなっちゃうから、あんまり煽らないでね。結構我慢してるから。」
言われて、将典の股間を見る。濡らしてこそないが、きつそうに布を押し上げていた。
「まさのりさん・・・する?」
口で、と言うと、先にイかせてあげるよ、とまた笑われた。
「まずは、指三本ね。」
「痛いからやだ・・・。」
ゆっくり慣らすから、とまたペニスを咥えられ、今度は中の指がばらばらに動き出した。
「ひっ・・・ぁ・・・うぁ・・・んんっ!」
ずっぷりと、根元まで咥えさせられた指が、前立腺を押す。それがたまらない。押されるたびに、高い声が鼻に抜ける。
「も、イきたいぃ・・・。」
「気持ちいい?きついけど、三本目いってみようか。」
人差し指と中指が入っているそこに、将典が薬指をねじ込んだ。
「いった!・・・いたいっやだぁ・・・抜いて!痛い!」
「もうちょっとだけ我慢。」
咥えたままイこうねーと、ペニスを口に含み、鈴口に舌を差し入れた。ぐりぐりと刺激され、たまらず腰が浮く。どうしたって、お尻の感覚が強烈で、前への愛撫がぼやける。快感が遠のいてしまった。
「ムリ・・・イケない!むりー・・・。」
泣き声を上げると、三本の指はそのままに、将典はあろうことか秘部に舌を這わせた。
「痛いね・・・いい子だったね・・・。」
ギリギリまで広がったそこを舐められ、奇妙な感覚に鳥肌が立つ。
「やぁ・・・なめるのやだ・・・きたないよぉ。」
「大丈夫。イケなくなっちゃった?ごめんね。もう少しこのまま、ね?」
「二本なら我慢するからぁ。」
「ふふ。そのうち指じゃ足らない体にしてあげるよ。」
将典は笑うと、薬指を引き抜いた。体の力が抜ける。
「前立腺弄ってあげるから、いけたらイきな。」
パク、と将典が萎えたペニスを口にする。指は敏感な中を擦り上げた。
「んう・・・。」
痛みから解放されて、快感を追うことを許される。将典は丹念に舌を這わせると、やがて先端の薄い粘膜を擦り始めた。
「あっあぅ・・・。」
どうしよう。中も前も気持ちよくて腰が抜けそう。そうされているうちに、何度目かの波がやってきた。
「あ、でる。でそう・・・イク・・・イク・・・っあぁぁ!」
ドク、と溜まっていた熱が放たれる。将典は、精液を残らず啜り上げると、ごくりと飲み下した。
「・・・出していいのに。」
「ごめんね。やっとイケたね。痛くしてごめんね?」
ごめんねと言ってはいるが、あまり申し訳なさそうな感じではない。
「・・・将典さんの、してあげる?」
「口で?」
一瞬、ためらったのを、将典は見逃さない。
「なんて、手でいいよ。ローション使って、手でして?」
将典が下着を脱ぎ捨てる。かなり立派な屹立がふるりと触れられるのを待っている。転がっていたローションのボトルを手に取り、たっぷりと手に取った。それを将典に塗り付ける。滑りの良くなった手で、将典を上下にしごいた。
「ん・・・気持ちいい。掌で先っぽ擦って。・・・うん。そう。上手・・・。」
はぁ、と将典が時々詰めていた息を吐き出したり、また止めたりするのを頭の上で感じながら、熱心に愛撫する。太い腿の筋肉が、収縮して、感じているのだと伝えてくる。
「きもちい?」
「は・・・も、イキそう。イっていい?出すよ?」
将典が苦し気に吐息する。手は止めずに、先端を舐めてみた。
ローションがほんのり甘いのと、多分先走りがしょっぱいのとで、複雑な味。かまわず口に含んだ。
「未知?・・・出ちゃうよ?」
こく、と頷いて見せる。追い上げるように、手で下から上へとしごき上げた。
「未知・・・っく・・・。」
将典が息をつめて、口の中に吐精する。将典がしたように、鈴口の精液を吸った。口の中にためて、離れる。
どうしよう・・・。
青臭い粘液が、唾液と共にどんどん増えてゆく。飲み込まないと・・・。
将典をうかがうと、ニヤニヤと笑っていた。ほら、とティッシュを箱ごと渡される。それがなんだか悔しくて、無理やり飲み込んだ。
「えっ?未知?」
はーとため息する。
「飲んじゃいました・・・。」
声に出すと、青臭さが鼻をついた。
「うわ・・・可愛い。未知・・・大好き。」
なでなでと頭を撫でられる。
「ベタベタだ。シャワー浴びて、歯磨きして、キスして寝よう?」
将典は手を引いて立たせると、風呂場へと導いた。

 飲んじゃった。というか・・・初めて口に入れてしまった。
しかしそれも、二度目の歯磨きを済ませ、将典とキスを交わすころには、生々しかった感覚も薄れて、なんだか夢心地だ。将典は嬉しそうに、ニコニコしている。
「いやぁ・・・視覚的にやられたなぁ。あんなに早くイクと思わなかった。」
と、感想を言って、すでに毛布にくるまって寝息を立てている。自分はと言えば、お尻を無理に開かれた違和感が取れず、薬を塗ってみたのだが落ち着かず、うとうとしていた。
将典のペニスは大きくて、先を口に含むので精いっぱいだった。それが後口に入るなど、考えられなかった。将典は、次は本番かなぁと言っていたが。
痛そう・・・。
次回を思うと、怖くて眠れなかった。
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