翡翠堂の店主

結城 鈴

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 日曜の朝、店を開けるつもりでいた。さすがに土日両方とも臨時休業というわけにいかないと思ったからだ。将典も、それでいいよと、納得してくれた。朝食は、ハムエッグ。トーストに、インスタントのコーヒー。将典に、足りるかどうかわからなかったが。炊いたご飯で、お昼のおにぎりも作っておく。わかめの混ぜご飯と、鮭とゴマの混ぜご飯を作った。
開店作業は、書架のはたきがけと、店の掃き出しと、固く絞ったモップで床の掃除。湿気は本に悪い。硝子戸をあけ放って作業する。花に水をやり、釣銭を確認して、エアコンを入れた。冷えるのを待つ間に、ガラス戸の窓ふきをする。
丁度そこに、将典が降りてくる。ちょいちょいと手招きするので行ってみると、捕まえられて、触れるだけのキスをされた。
「おはよう。統計学上、仕事前のキスは、作業効率と売り上げを上げる。」
「・・・それ、聞いたことありますけど、夫婦の話でしょう?」
「未知はもう、俺のお嫁さん。」
「・・・だとしても、普通は奥さんが、旦那さんに行ってらっしゃいのキスをするんじゃ・・・。」
「どっちでも同じでしょ?」
ここがお店なんだから、とニコニコしている。
「朝ごはん、一緒に食べたかったなぁ。」
「ならもっと、早起きしてください。」
はーいと、ダイニングテーブルに置いた、冷めた目玉焼きのラップを剥がす。
「あ、パン焼きますね。」
トースターは台所だ。
「ありがとう。未知、塩と胡椒くれる?」
「え?もしかして、醤油派じゃないんですか?」
持っていきながら問いかけると、将典はうん、そう、と答えた。
「ブラックペッパーで良かったですか?」
「うん。ありがと。」
そこに、チンと軽快な音がして、パンが焼きあがる。
「トースト、二枚で足りますか?」
「まだあるんだったら、もう一枚焼いといて。」
言いながら、トーストにバター風味のマーガリンを塗る。
「ママレードならありますけど。」
「甘いのはいいや。未知、ほんとお嫁さんみたい。」
言われ慣れてきて、赤面するほどではないが、気恥ずかしい。
トースターに、もう一枚パンを入れて、テーブルでカフェオレを飲む。午前中はお客さんが来ることは稀なのだ。ましてや今日は日曜日。
「あ、そうだ。テーブル届いたら、麦茶のポット置こうかと思ってるんですけど、法律的には大丈夫ですか?」
「うーん。サービスならいいんじゃないかなぁ。」
調べておくね、と将典はパンを齧る。
「で、冬になったら、お湯だけポットに入れて、好きなティーバッグを選んでもらえたらいいかなって。」
「あぁ。いいね。インスタントでいいから、コーヒーも置いて。」
「スティックタイプのやつなら、衛生面大丈夫ですよね。」
うんうんと頷きながら目玉焼きを食べる将典を、ほほえましく眺めながら、カフェオレを飲む。
「未知、パソコン持ってたっけ。」
「あります。古いですけど。一応家計簿つけてるんで。あと、売り上げ。・・・何するんですか?」
「リニューアルのチラシ作ろうかと思って。」
食べたら手が空くからさ、と将典は言った。
「すみません。大したソフト入ってないです。あ、プリンターはありますけど。」
「未知、絵は得意?」
「まぁ・・・人並みには。」
「じゃぁ、内容はオレが作るから、未知が絵をかいて、それをコピーしたらいいよ。」
「それか、外観写真にとってプリントアウトすればいいんじゃじゃないですか?」
「あ、それでもいいね。」
なんだか、文化祭前を思い出す。やり取りに、懐かしさを覚えて、微笑んだ。
「いいね。なんだか楽しい。」
将典は、三枚目のパンを食べ終わると、食器を下げに立った。水の音がしだして慌てる。
「将典さん、やりますから。」
「洗い物くらいできるよ。未知は座っておいで。」
そう言うと、鼻歌交じりに食器を片付けていく。普段は自炊もするのだろうから、できないことはないのだろうが・・・。
「泊まりに来た時くらい、ゆっくりしてください。」
ただでさえ、最近は一週間の半分ほどをご馳走になってしまうのに。何もお返しができないではないか。
「使った布団も干しておくよ。ベランダに出せばいいんでしょう?」
「将典さんがカウンターにいてください。その方が、女性客に喜ばれそう。」
「未知は馬鹿だなぁ。俺と未知がセットでいた方が、女の子は喜ぶと思うよ。」
よくわからないことを言って、笑いながら二階へと昇っていく背中を、止められなかった。しぶしぶカウンターに戻る。
将典は、お腹いっぱい食べたのだろうに、身軽だった。
 午後になって、将典がチラシを作り終え、コンビニまでコピーを取りに行くと言い出した。古いプリンターより、綺麗にできるからと。お金を渡そうとしたが、手をひらひら振ってかわされてしまった。あとで、請求してくださいと言ってみるも、いいから、と去ってゆく。甘やかす方向が間違っている、と思わずにはいられなかった。
食事は、二人でするものだから、家で食べるときの半額負担は、甘んじて受けるとする。けれど、外食やデリバリーは、完全に奢りだ。成人男子として、許容できないところがある。
とはいえ、財布はいつも軽かったが。そのお金も、両親からの仕送りに頼っている。早く、そんな生活から逃れたかった。
しかし、この店では生活できるほどの収入は見込めない。父は、それが未知なりの弔い方なら、と一周忌まで就職を待ってくれている。十月になったら・・・就職活動も始めなくてはと思っていた。現状、月十二万でわずかながら貯金ができる暮らしをしている。正社員でなくとも、割のいいバイトでもあれば、生活できそうだと思っていた。休みの日は、翡翠堂を開けられるような生活・・・。目標は、完全閉店から少し変わってきていた。
将典が頑張ってくれるから。少しでも長く、店を続けられるように。でも、もう新卒採用を逃してしまっている。そんなつもりはないが、就職浪人みたいなものかもしれない。働いていると思っているのは自分だけで、親はそうは思っていないかも。
「ちゃんと・・・話した方がいいよな。」
将典にも。両親にも。
客の少ない店に、立ち続けるわけにはいかない。
そんな思いを知ってか知らずか、帰ってきた将典は、帰ってくるとパソコンに入った家計簿を見だした。
「未知の収入源、どうなってるのかと思ってたけど、ご両親が出してくれてるんだね。」
ドキッとした。
「あ・・・。はい。だから毎月きちんと報告しなきゃって、家計簿つけてて。」
将典は、あごに手を当てて唸っていた。
「あの・・・。こんな生活、長くできるとは思ってないんです。」
将典に、話す決心をした。
店を閉めることを考えていることを。
「実は、このお店の前の店主、祖父が亡くなったのが三月で・・・。僕は、四十九日が済んだ、四月からこの店を継いだんです。でも、祖父の代から、もう客足は途絶えてて・・・。
だから、このまま店が軌道に乗らなかったら、一周忌をめどに閉めようかと考えているんです。」
「・・・・・・。」
将典は、しばらく無言で、何か考えているようだった。ややあってから、そう、と返す将典は、とても淋しそうだった。
「それで未知は、何かもの言いたげだったんだね。」
気付かれていた?
将典に、ごめんなさい、と謝る。
「どうして?三月までに、軌道に乗せればいいんでしょう?」
「それは・・・たぶん無理です。古書店は、売りにくるお客さんもいないと成り立ちません。大手のお店には敵わないと思います。このお店の本が、ひと月に全部入れ替わるくらいじゃないと、生活は成り立ちません。祖父と祖母には、年金と貯えがあったから、生活できていたけど。僕はこれ以上、親に頼るわけにはいきません。親だって、老後の生活資金、ためなきゃいけないのに。」
「・・・偉いね。ちゃんと考えてるんだね。それで、その後、未知はどうするつもり?」
「父は、店を閉めたら、更地にしてここを売ろうと考えています。だから、親元に戻って、バイトするか、正社員になれたら、どこかで一人暮らしするか・・・。どちらにしろ、ここは来年にはなくなると思います。だから、僕もここにはいられない。」
「・・・辛いね。」
将典の言葉に、こらえていた涙がこぼれてしまった。
「っ・・・。ごめんなさい。泣くつもりなんてなかったのに。
将典さんと、一緒にいられなくなるって思ったら・・・。」
「未知・・・。」
おいで、と畳の方へと招かれる。掌で涙を拭ってくれるが、全然足りなかった。ポケットからハンカチを取り出し、顔を覆う。
「未知。何かいい方法がきっとある。考えるから、泣かないで。」
「でも、もう覚悟決めてるんです。本当にごめんなさい。
頑張ってくれたのに・・。」
将典に申し訳なくて、涙が止まらない。将典は、背中に手を回して、さすってくれた。
「一緒にいられるように、考えるから。・・・俺は本気だよ。
未知のこと、手放したりしないから。」
二人で頑張ろう?将典はそう言うと、空いた左手を、きゅっと握りしめた。それにかぶりを振る。
「もうこれ以上、巻き込めません。・・・ごめんなさい。」
明日から、将典がこの店に立ち寄ることもなくなるかもしれない。翡翠堂のことを黙っていた自分はなんと罪なことをしたのだろう。怒っても仕方ないことなのに、将典は優しくて。
「・・・もう、甘えられません・・・。」
告げると、将典は深いため息をついた。

 七時になり、店を閉めると、雨が降り出した。将典は、夕食前に帰るという。今日は、あの傘を持ってきていないというので、自分の傘を貸した。ミントグリーンの傘で、体の大きい将典には少し小さかった。それでも、将典はありがとう、と言うと、泊りセットの入った大き目の鞄を担いで帰っていった。
これで、良かったのだろう。
近日中に届くはずのテーブルのことを思うと気がめいった。
きっと見るたび将典を思い出す。お祝いだと言って、くれた花も・・・。

キスもしたのに・・・きっとこれで自然消滅だよね。

 月曜日。七時の鳩が鳴いても、やはり将典は現れなかった。電話もメールもない。待っているのが辛くて、買い物に出ることにした。シャッターを閉め、花に水をやり、自転車に乗る。将典と行くときは歩きだったから、自転車も久しぶりだった。慣れた道を急ぐことなく、走っていく。
今日は、お惣菜と、豆腐と卵を買って・・・。ぼんやり、買うものを考えながら、駅前を過ぎた。何度か来た洋食屋の前を通り、この角を曲がったらバーがあってと、女々しいことこの上ない。将典は、自身なしではいられないようにすると言っていたが、体の付き合いをしなくても、気持ちはもうすでに、一人ではいられなくなっていた。
ふと、思い出す。駅前の噴水はナンパスポットだと。自分から声をかけることはできなくても、だれか誘ってくれるかもしれない。そんな馬鹿なことまで考え始めていた。
もしも、自分が、男無しではいられなくなっていたとしたら?
怖い考えに、身震いした。夜風が冷たいせいだけではないだろう。
そうこうしているうちに、スーパーについた。目当てのものを買って、早々にリュックに品物を詰め込む。背中にしょって、家路につき、何とはなしに噴水を見た。
ここで、待っていたら・・・。
いけない。そんなこと。ナンパ待ちなんて、どんなに危険なことか。相手が体目当てだったら、犯されてしまう。
フルフルと頭を振って、愚かな考えを振り落とす。
「帰ろ・・・。」
家についても、食欲はなく、買ってきたものを冷蔵庫に入れて、麦茶を一口した。八時半。スマホを何度も見てしまう。
けれど、メールも着信もない。力なく、風呂を沸かしに、風呂場に向かった。湯船に水を張る。その音を聞いていると、目頭がツンと痛んだ。
「お店続ける気力までなくなりそう・・・。」
将典と会うまでは、それはただのルーチンだったはずなのに。
優しくするから・・・。
遠くで、九時を知らせる鳩が鳴いた。
その時、勝手口の方で物音がした。鍵、掛け忘れたろうか。
まさかこんな店に泥棒もないだろうが・・・。
恐る恐る、勝手口に向かう。すると、現れたのは将典だった。
「やぁ。こんばんは。・・・ごめん。会議が長引いて、メール打てなかった。」
しばし呆然としてしまう。
「未知?待っててくれたんじゃないの?勝手口、開いてた。
不用心だよ。」
「将典さん・・・。」
来ると、思わなかった。また、翡翠堂に来てくれるなんて。
「未知?泣いてたの?」
「・・・泣いてません。」
「でも、目が赤い・・・。」
慌てて、目元を拭う。
「ほら。やっぱり泣いてたんじゃない。どうしたの?」
「将典さんの意地悪。・・・来ると思わなかったから、夕ご飯、用意してませんよ!」
「悪かったよ。・・・お腹空いてるんだ。コーヒーしか飲んでない。どこか食べに行こう?」
くうーとお腹が鳴った。
現金なものだ。将典の顔を見て、安心したとたんお腹が減るなんて。
「未知もまだだったの?」
「食欲・・・なかったんですけど・・・。」
「でも、お腹減ってるみたい。」
おいで、いこう?と誘われる。財布と、カーディガンを持って、外に出た。

 将典と、ハンバーグがメインのファミレスに来ていた。
自分は、ミートドリアを頼む。将典は、こんな時間だというのに、大ぶりのハンバーグと、グラスビールをオーダーした。
「もしかして、俺が連絡しなかったから泣いてたの?」
顔が赤くなり、言葉に詰まる。
「もしかして・・・終わりになるって思ってた?」
頷くと、そうしたかったの?と問われた。それに、首を横に振って、否定する。
「・・・僕今日・・・噴水のところで、将典さんの代わりを探しました。・・・でも、怖くなって・・・すぐ家に帰りました。」
「あぶないなぁ。なんてことしてるの。何もなかったからよかったようなものの・・・。」
叱られて、しゅんと俯く。
「そんなに淋しかったの?」
コク、と頷いて、また泣きそうになる。
「もう、来てくれないんじゃないかと思って。」
未知は、馬鹿だな。と将典が、テーブルの下で脛をつつく。
「お店を残す方向で、考え中なの。仕事もあるから、そればっかりってわけにいかないけど、絶対悪いようにはしないから。」
コクリ、とまた頷く。
「大体、発注したテーブルだって届くのに、お店はどうするつもりだったの。」
「将典さんが来ないのに、開けてたって仕方ないです。」
本音だった。七時に現れる将典が来なくなったら・・・。
「未知・・・。甘やかしすぎちゃったのかな。きっと、ずっと気を張ってお店を開けてたんだよね。一日も休まずに。なのに、俺が休みにしたり、お店弄ったりしたから。」
「それは、楽しかったし、嬉しかったから、もういいんです。」
お客さんのためだし、と俯く。
「未知は、どうして俺が君から離れると思うの?」
「だってそれは・・・お店閉めること言えなかったから。」
「怒ってないよ?俺だって、君の立場だったら言えなかったと思うよ。」
将典はそう言って、届いたビールに、お疲れ様、と口を付けた。
「とにかく。今日遅くなったのは、全面的に俺が悪いけど、毎日ちゃんと寄るから、お店は開けておいてよ。傘だって返さなきゃ。」
うっかり、会社に忘れてきちゃった、と将典が言う。傘のことなんて忘れていた。
「本当に?」
「本当に。今日みたいになりそうなときは、ちゃんと連絡できるようにするから。」
「でも、それはお仕事だし。」
「それを言うなら、泣かないで待ってて。未知が泣いてるかと思うと、仕事どころじゃなくなっちゃう。」
将典は、深々とため息した。そして、ビールをあおる。
「それに俺は、未知の体も好き放題したいの。手放す気はないよ。」
今度こそ、耳まで赤くなったのを自覚する。
「将典さん、こんなところで・・・。」
「誰も聞いてないよ。」
丁度そのタイミングで、料理が届く。将典は、ライスを三回お代わりして、食事を終えた。
 結局、この日も、泣かせたお詫びに、とご馳走になってしまった。
駅とは反対方向の、翡翠堂までを送られる。
「将典さん、電車・・・。」
「大丈夫。三つ先の駅だから、終電間に合うよ。」
最悪泊めてもらう。と、将典がニヤリと笑う。
「次に泊まるときは、その・・・えっちなこともするんですか?」
「興味あるの?」
それは、頑張らないといけないなぁ、とまた笑う。
ないわけじゃない、とは口に出せなかった。代わりに鼓動が早くなる。体一つで、将典をつないでおけるなら、安いとまで思っていた。ただ、心配事がある。
「あの・・・最後まで・・・セックスまでしたら、僕のこと、飽きたりしませんか?」
将典は、まさか!と声を荒らげた。
「初めての子を抱くんだよ?しかも君はゲイじゃない。責任感じて一生添い遂げちゃうかも。」
将典は、ゲイじゃない、と否定した。
「僕、ゲイじゃないんですか?」
「違うと思うよ。・・・ちょっと俺に絆されちゃっただけ。
もし別れたら、ちゃんと女の人を好きになって、結婚して子供とか作ったりするんじゃないかな?」
その未来、捨てられる?とまじめな顔で問われた。
「家のことで言うなら、妹がいるし・・・。何とかなるんじゃないですか?」
すると、将典は、未知と家の話するの初めてだね、と空を見上げた。
「俺は、兄がいて、もう結婚して子供もいるから、家の心配はしてない。親は知らないけど、兄には伝えてある。」
「うん。」
相槌を打って、同じように空を見上げた。星がいくつか見えた。
「明日も晴れそうだね。晴れると傘、忘れちゃうんだよなぁ。」
あの色、未知にはよく似合ってた、と将典が手を差し出す。その手を取り、繋ぐ。
あたたかい。
夜風で冷えた手には心地よかった。
「すっかり秋だね。来月にはこたつ出さなきゃ。」
「将典さん、どんな家に住んでるんですか?」
将典は、それにふふと笑うと、今度遊びに来る?と問うた。
「・・・何かされそうです。」
「もちろん。布団も情緒があっていいけど、俺の家ならいろいろ用意しておけるしね。」
「用意・・・ですか?」
男同士は、いろいろ必要なんだよ。と将典が笑う。
「覚悟ができたら、遊びにおいで。」
大人の遊びだけどね、と将典がクスクスと笑う。本当に楽しそうで、いつか行けるといいなと思った。
そうこうしているうちに、家についてしまう。
「じゃぁ、遅くなっちゃってごめんね。鍵、ちゃんとかけて寝るんだよ。おやすみ未知。」
ちゅ、とおでこにキスされる。
物足りなくて、唇をじっと見ていると、今度は唇に、深々と口づけられた。将典の舌が、口の中を優しくかき混ぜる。二人の唾液を飲み込むと、唇をぺろ、と舐められた。
「してほしそうだった。」
「うん。」
してほしかった。そんな自分の変化に戸惑う。
「ごめんね。もっとしたいけど、さすがに電車が・・・。」
「うん。・・・おやすみなさい。」
「おやすみ、未知。」
じゃあ、と帰っていく将典を見送る。見えなくなるまで見送って、勝手口に鍵をかけた。
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