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『あ』と『ん』 其の八
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テンノウ宮に戻り、スメルはみずから二名の者を伴って、『みこともぢ』を探し出す者を追うことにした。
二名のうちの一人はイナア族のアヤ部に属するアタイで、もう一人はスメルと縁が深い東の海を支配しているアマア族のウワリであった。
スメルがこの二名を選んだことが、後のスメルの人生を大きく左右することになるわけだが、今はまだそのような予兆は何もない。
長い旅になることが想定されるので、アタイを先に『うまや』と呼ばれる通行許可と旅の衣食住の保証を発給する場所へ向かわせて、みずからはウワリと二人で道の確認をしてから『うまや』でアタイと合流することにした。
ところが、先に『うまや』へ向かわせたアタイがしばらくして戻って来たので、どうしたものかと話を聞くと、『うまや』で許可が下して貰えなかったということである。
果たして『みこともち』はスメルを追い払うために、スメルが今回の役目を引き受けるように話をしたわけであるが、スメルはそのように思ってはいないので、今度はウワリを『うまや』へ向かわせることにしたが、今度は『うまや』で合流するのではなく、手続きを終えてからウワリには面倒だがこちらへ戻って来るように命じた。
しばらくして、ウワリが戻ってきて無事に発給が出来たことを告げて、諸々の許可が下りた証である『やくそくのすず』をスメルに手渡した。
ウワリから先ほどの経緯を聞いてみたところ、アタイが行った時に許可が下りなかったのはアタイが大陸から渡って来たアヤ部の出身であったことが理由とのことだった。
未だにそのような差別があることにスメルは驚いたが、ウワリのほうは「どこにでもまだ根強く残っているものですよ」と交易で様々な土地を巡っている者として、何の驚きもなくさらりと言ってから、馬に乗り手綱を軽く振って馬に出発をうながし駆け出した。
ところでこのような流れになったので、まだ道の確認が出来ていないことに改めて気づいたスメルとアタイは、道を知るがゆえに一人駆け出していったウワリに向かって声を揃えて「おい、待て」と一声かけてから、慌てて馬に飛び乗り後を追いかけた。
さて、どうなることかはまったく分からないが、スメルは何となくこれから自分の運命が大きく変わるような気配が迫っていることを感じていた。
それが現実となることは、まだはっきりとしていないわけだが、『みこともち』のほうでは着々と話を進めているようであり、『うまや』からの報告でスメルの出発を確認した『みこともち』は、急ぎある者を宮に来るように使いの者をそこへ向かわせた。
ある者が誰であるのかはまだ分からないが、そのある者によってこれからの旅先においてスメル達は散々苦しめられることになる。
ある者は来るべき新しい時代を阻止するための切り札であり、どのような手を使ってでも目的を達成することを第一とする者なので、その行動には正しいと思われる道理や、はっきりとした知性に裏付けられた根拠もないので、予測不可能な行動を繰り出してくることだけが予想できる。
ある者については今のところこれ以上のことはまったく分からないが、『みこともち』はある者を昔からよく知っているようである。
二名のうちの一人はイナア族のアヤ部に属するアタイで、もう一人はスメルと縁が深い東の海を支配しているアマア族のウワリであった。
スメルがこの二名を選んだことが、後のスメルの人生を大きく左右することになるわけだが、今はまだそのような予兆は何もない。
長い旅になることが想定されるので、アタイを先に『うまや』と呼ばれる通行許可と旅の衣食住の保証を発給する場所へ向かわせて、みずからはウワリと二人で道の確認をしてから『うまや』でアタイと合流することにした。
ところが、先に『うまや』へ向かわせたアタイがしばらくして戻って来たので、どうしたものかと話を聞くと、『うまや』で許可が下して貰えなかったということである。
果たして『みこともち』はスメルを追い払うために、スメルが今回の役目を引き受けるように話をしたわけであるが、スメルはそのように思ってはいないので、今度はウワリを『うまや』へ向かわせることにしたが、今度は『うまや』で合流するのではなく、手続きを終えてからウワリには面倒だがこちらへ戻って来るように命じた。
しばらくして、ウワリが戻ってきて無事に発給が出来たことを告げて、諸々の許可が下りた証である『やくそくのすず』をスメルに手渡した。
ウワリから先ほどの経緯を聞いてみたところ、アタイが行った時に許可が下りなかったのはアタイが大陸から渡って来たアヤ部の出身であったことが理由とのことだった。
未だにそのような差別があることにスメルは驚いたが、ウワリのほうは「どこにでもまだ根強く残っているものですよ」と交易で様々な土地を巡っている者として、何の驚きもなくさらりと言ってから、馬に乗り手綱を軽く振って馬に出発をうながし駆け出した。
ところでこのような流れになったので、まだ道の確認が出来ていないことに改めて気づいたスメルとアタイは、道を知るがゆえに一人駆け出していったウワリに向かって声を揃えて「おい、待て」と一声かけてから、慌てて馬に飛び乗り後を追いかけた。
さて、どうなることかはまったく分からないが、スメルは何となくこれから自分の運命が大きく変わるような気配が迫っていることを感じていた。
それが現実となることは、まだはっきりとしていないわけだが、『みこともち』のほうでは着々と話を進めているようであり、『うまや』からの報告でスメルの出発を確認した『みこともち』は、急ぎある者を宮に来るように使いの者をそこへ向かわせた。
ある者が誰であるのかはまだ分からないが、そのある者によってこれからの旅先においてスメル達は散々苦しめられることになる。
ある者は来るべき新しい時代を阻止するための切り札であり、どのような手を使ってでも目的を達成することを第一とする者なので、その行動には正しいと思われる道理や、はっきりとした知性に裏付けられた根拠もないので、予測不可能な行動を繰り出してくることだけが予想できる。
ある者については今のところこれ以上のことはまったく分からないが、『みこともち』はある者を昔からよく知っているようである。
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