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かなわない
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しおりを挟む『ユキ君!!!』
午前4:00、ドタドタと足音をさせながら、ルナは飛び起きてきた。
『これ…!』
「…ルナのマネージャーさんに頼んで、本当は今日、オフにしてもらってたんだ。」
昨晩のうちに枕元に置いておいたのは、4:00にセットしたアラームと、ディズニーシーのチケット2枚。
「ルナ、お誕生日おめでとう。…早起きさせてごめん。」
どうしてもサプライズにしたくて、柄にもなく色々な人に根回しした。
昨日だって帰りが早かったわけじゃないルナを、勝手に4:00に起こして…怒るかな。
なんて、そんなのは杞憂だった。
『ありがとう~!!!!』
ほとんど泣きそうになりながら、思いっきり俺に飛び付く。
『ユキ君と2人でディズニーシー行くの?!』
「嫌だったら、別に良いけど。」
『嫌なわけないでしょう!行く行く行く!』
「じゃあ準備しておいで。」
『はーい!』
6月1日、今日21歳になったルナは、逆に子どもに戻ったみたいにはしゃいでいる。
『本当はもっとかわいいのが着たいけど、あんまり目立たないようにしなくちゃ。』
「まあルナは何着てても目立つだろうけどね。」
ルナはスタイルも良ければ、はしゃぎ始めると声も身振り手振りも大きくなる。
立っても歩いても何かが決定的に普通の人と違うから、今日はもう、俺は身バレするの覚悟でいる。
というのも、情けないことにウィキペディアにルナの誕生日が今日だと教えられ、プレゼントはどうしようか、あわよくばデートに行く口実にできるだろうか、と家の近くのレストランで夕食を食べながらルナに探りを入れていた時のこと。
「ルナって絶対に遠足の前に熱出すタイプだよね。遊びに行く前日とか。」
『あー、私この間のBLUEのライブの日、熱出した!』
「マジか。来てたのはなんかネットで騒がれてたから知ってたけど。」
『だって楽しみになっちゃったんだ~。あんまり遊びに行ったりしたことなかったからさー』
「え、そうなの?遊園地とか好きそうなのに。」
『うん、遊園地行ったことないの。』
「え、うそだー」
『本当だよー!だからね、いつかディズニーランドに行くのが夢なの。ユキ君は行ったことある?』
「…そりゃああるよ。あー、でも大人になってからはシーばっかりだな。」
『へー、良いなぁ。そうか、シーにも行きたいな!やっぱり私、今度のオフにでも行ってみよう。』
「え、1人で?」
『だってお友達いないからね。』
「いや、1人で行って楽しい場所じゃないよ…」
『えー、じゃあユキ君一緒に行ってよ!』
「…奇跡的にオフが合えばね。」
『うわ、これ遠回しに断られてるよね?』
俺は、バレた?なんて笑いながら、もうこれは誕生日に連れて行くしかないと決めたのだ。
なんとなく悠二には言えなくて、俺のことを応援してくれているらしいコンちゃんに相談したら、せめて暗くなってから行った方が良いんじゃないか、と言われた。
でも、初めてのディズニーシーだろう?
無理にでも早起きさせて、開園ダッシュしなくちゃ。多分それも、醍醐味じゃないか。
家の前に呼び付けたタクシーに乗りこめば、隣でルナは、ウキウキしながら何か調べている。
「何か乗りたいのとか、やりたいこととかある?」
うーん、と悩んで出したのは、
『いっぱい写真撮りたい!』
なんていう小学生みたいな答え。
「いやそうじゃないでしょ。」
『それも大切でしょ。だって私、ユキ君と写真撮ったの、ドラマの広告の時だけだもん。』
怒ったようにほっぺを膨らましながらこっちを見たルナに、そんな小さなことに気付かされる。
「…そういえば、そうか。」
『うん。』
「…言ってくれればいつでも撮ったのに。」
『だって別に、一緒にいるの、家と現場だけだし…撮る機会、なかったから。』
俺たちは、同棲しているだけで付き合っているわけではないから、やっぱりそういうところ、なんか変だ。
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