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竜太と神楽のむかしのはなし。
10ー1*.なぁ。想像ん中でお前は俺にどんな事されたん?
しおりを挟む「それでこの前のキスやけど…悪かった。魔が差したんや…」
神楽は恐る恐る顔を上げるとテーブルに両手をついて土下座のように頭を下げる竜太の意外にも誠実な謝罪に目を丸くした。
「…あんたってキスとか簡単にしそうだよな」
「せぇへんよ…。あんないきなりキスとか男どころか女ともないわ」
肩を落とす竜太に「へぇ~…」なんて気のない返事をした神楽はむにむにと唇を動かした。
「見た目外国人っぽいから海外慣れしてそうだし、誰とでもしてそうだなって思ってた。…だから、反応しちゃいけないって思ってたんだけど…さっき、あんたの顔が目の前にあって失敗した…」
もう空になったカップを両手で包み込むとわずかに残る温かさが少しだけ神楽を落ち着かせてくれる。
忘れたいのに…頭ん中であの光景が無限ループしてて…その度に感触も……って、こんなの考えんのはまずい…。
「挨拶とかじゃない、ちゃんとしたキスって……俺、初めてで………変に意識して悪かった。明日からまたちゃんとするから…」
「それはおおきに…。せやけど…その、あのキスは……遊びとかやなくて、なんちゅうたらええんかな………その」
「本気って事?」
「いやっ!本気ってゆうたらそれはまた別の話になってくるやんか!……いや…でもお前の事が気にはなっとる。それが恋愛感情なのか、ただの好意なのかはよぉ分からんけど…お前の才能には抗えんくらい惹かれとる…。俺のプログラムでお前を世界一美しく魅せたい。本気でそう思うとる」
神楽の視線を避けるように赤面した顔を逸らして視線を泳がせた竜太はぐるりと部屋を巡ったあとまっすぐに神楽に向き合い、今度は神楽が赤面し縫い止められた視線は逸らすことが出来なかった。
なんなんだこの甘い空気は…。
「………恥ずかしい事言うな、あんた…」
「しゃあないやんか。本気で思ってんねん」
うるさいほどに脈打つ鼓動に心臓の痛さを感じながらなんとか悪態を絞り出すと竜太は力なく笑いながら行儀悪くテーブルに突っ伏した。
「まぁそれで?あまりにお前が綺麗やから触れたくなって…それで自分でも驚くほど無意識にお前にキスしとった…」
「やっぱあんた軽いな」
「アホゆうな、こんなんしたのお前が初めてや。こんなガキでしかも男に誰が好きこのんでキスすんねん…」
「あんたって……同姓愛者なのか?」
「俺は女しか抱いた事あらへん」
「…それを聞いて、ちょっと安心した…」
「なん?」
「あ、いや……キス以上の事…されたらどうしようかと思ってた…っ!!」
こんな事言う必要なかった!!二人っきりの密室でこんな話したら気まずくなるだけじゃねぇか!!
大袈裟に体を跳ねさせると竜太は目を開いて神楽を見つめている。竜太にとっても思いもしない言葉だったのだろう。
「…キス、以上…」
「いや!だってコーチと俺じゃ体格差が大分あるし…無理矢理押さえられたりしたら逃げらんねぇよなとか!!」
「…想像したん?俺とキス以上のことする事…」
「っ!!…ゃ、違う……俺はもしそんな事になったらどうしようって…っ…!!」
待て待て待て待てっ!!マズイ…これは本当にあり得ない!!いや、生理現象だから仕方ねぇんだけどぉ…。
もじもじと身体を捩った神楽は前屈みにテーブルに肘をつくと頭の中でひたすら円周率を唱え始めた。突然、起こった体の変化を治めようとするが自分の発言が円周率に集中させてくれない。
「…」
不自然な体勢で固まった神楽を不思議に思った竜太だったが、会話の内容と自分より若い神楽の体に何があったのか気付くと悪戯心が疼いてしまった。
神楽に気付かれないようにニヤリと笑うと唐突に立ち上がり神楽の横に移動すると嫌な予感がよぎったのだろう神楽は顔面蒼白になりながら体を隠そうと竜太に背中を向けるように座り直した。
この反応は想像どおりやんなぁ?
「急にどないしたん?」
「…別になんでもない…」
愉快そうに顔を近付けてくる竜太を睨みつける神楽だが調子に乗った竜太が怯むはずがない。
体を捩るたびにギシッと音を立てる椅子にすら鼓動が跳ねてしまう神楽は体を丸めて猫のように「シャーッ!」と威嚇を続けるが後ろから抱き締められるように中心に手を伸ばされると「ぎゃっ!」と悲鳴を上げてしまった。
「なにしてんだよ!変態っ!!」
「変態はどっちや。こんな場所で勃たせるて…」
「ちがっ!!不可抗力だろ…!やめろ、触んなぁっ!!」
服の上から神楽自身を触られると敏感なソコは大袈裟に反応して体中に甘い痺れを走らせる。仰け反る体が竜太との密着度を上げて服越しに伝わる温もりに神楽の口から熱い吐息が漏れる。
「…なぁ。想像ん中でお前は俺にどんな事されたん?」
「んっ!ちょ、ゃ…!」
逃げられないよう肩を抱かれ劣情を煽る熱のこもった声で耳元で囁かれると神楽の腰や腕からは力が抜け竜太の手の下着への侵入を許してしまう。
「や、めろってぇ…!!ぁ…んぅ…」
頭を擡げていた神楽自身は竜太の愛撫を喜ぶように硬度を増しピクピクと小刻みに震える。
両手で竜太の手と体を押し返すがびくともせず神楽の体は中心に熱を集め竜太の興奮した熱い吐息が耳に触れるたび短い嬌声とともに体は何度も小さく跳ねる。
オーナー室とはいえ高級レストランで自身を露にして他人に扱かれ身悶えている。そんなあまりに非常識な状況ですら貪欲に快楽に変えていく体に神楽の口からは嬌声が絶えず漏れ続けるようになっていた。
「ぁ、んっ…や、あっぁ、ん…」
もはや形だけの抵抗は意味を失い昂り続ける恐怖から逃れるように神楽は竜太の服に縋りつくと頭だけを弱々しく横に振った。
先端の孔から漏れる透明な液は潤滑剤となり竜太のサポートをし激しい水音は神楽の興奮材料となりさらに甘い痺れを生んでいた。
ふざけんな…っ!こんなとこで……駄目なのに、っ……マジで限界…。
限界を訴える自身に許しを請おうと神楽が手を伸ばした瞬間──。
「竜太様。失礼してもよろしいでしょうか?」
ノック音とともにこのあまりに非常識な状況に似つかわしくないマネージャーの落ち着いた声が部屋に響き二人は見開いた双眸を見合せた。
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